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蛙は意外と速く走る  ◆TPKO6O3QOM



 町の一角で鈍い衝突音と共に、がらがらと何かが崩れる音が響いた。
 平屋のブロック塀を突き崩し、シロモクバ一号は漸く止まった。粉塵が通りをしばし覆う。
 常であれば眠りを妨げられた住民たちによって夜明けの町は騒がしくなるところだろう。だが、現実はそうはならず、町は眠りに堕ちたままであった。

 激突の直前にシロモクバ1号からの脱出に成功したグレッグルはヴェーと小さく鳴いた。
 瓦礫の中に頭を突っ込んだシロモクバ一号を掘り出すと、少し傷ついたものの目に見える大きなダメージはないようだ。
 気に入った玩具の無事に安堵の息を吐く。

「……死ぬかと思ったぞ」

 後ろから近付いてきた声にグレッグルは視線だけを向けた。
 人間の言葉を話す珍妙な連れは機嫌が悪いのか、声に険が籠っている。彼もまた激突前に脱出していたようだ。なぜか衣服が所々破れているが。

「死ななかったンだから別にいいじゃねえか。貴重な体験だったろ?」

 頬袋を膨らませて毒づく。相手に伝わらないのは分かっているが。
 ただ、グレッグルが全く反省をしていないことには気づいたらしい。カエルはむっとしたように瞳を揺らめかせたが、嘆息一つでそれを納めたようだ。無意味と悟ったらしい。
 相棒ほどではないが中々察しがいいと、グレッグルは小さく笑みを刻む。その顔に光が射し、グレッグルは目を細めた。

 いつの間にか辺りを包んでいた薄闇は払われ、暁光が地面に黒い影を作っている。
 日の出の方角を見やれば、霞みの向こう、朝日を背負ってこちらに駆け寄ってくる獣影が見えた。斜陽に邪魔され、正体は分からない。グレッグルはとりあえず指先に毒を滲ませ、迎撃の準備を済ませた。カエルも接近に気づき、剣の柄に手を掛けている。

 近づくにつれ、獣影はひとつの形に定まった。虎毛の、見たことのないポケモンだ。敢えて言うならガーディに近いだろうか。
 ガーディは一心不乱に掛けてくる。眼はこちらを捕捉してはおらず、時折北の方に目をやっている。それを辿ると町の上空を走る高架橋が見えた。ガーディはあれに沿って走っているらしい。
 ガーディはグレッグルたちに気付く様子もなく、目の前を突っ切った。グレッグルはガーディに向かって頬を膨らませた。

「ヘイ、犬っころ。そんなにはしゃいで何処行くンだ?」
「おい、おま――」

 焦った声を上げるカエルに黙れと素振りで告げる。
 鳴き声に気付いて、ガーディは弾かれたように地面を蹴ってグレッグルたちの方に向き直った。こちらの存在に初めて気づいたかのように――実際にそうなのだろうが――、ガーディの目は見開かれている。息遣いが荒い。
「こりゃ危険な状態だぞ」
 カエルが囁きに、分かっているとグレッグルは頷く。
「化け物でも見てきたような顔だな、おめえ。死んだ婆さんでも出てきたか?」
 軽口に、ガーディは虚を突かれたようにきょとんと首を傾げると小さく首を振った。

「いや。……ん? そうでもないか。見たのは魔王だけど」
「……へえ?」



 魔王という単語にグレッグルの声に喜色が混じる。表情は特に変わりはしなかったが。
 カエルが何か言いたそうにしていたが、グレッグルと目が合うと首を横に振った。諦めたらしい。言葉が通じるもの同士に任せるということだろう。
 どこか焦点の合わない瞳でガーディは宙をしばし見つめると、思い出したように口を開いた。
「……ああ。そうだ。俺は銀……銀だ」
「ギン、ね。オレはグレッグルだ。あっちはカエル」
「そのままだな」
 笑みを溢した銀に、悪かったなと胸中で呟く。
 銀が落ち着いたのを確認して、グレッグルは彼のデイバッグを外すよう要求し、それをカエルに渡した。カエルはグレッグルの意図を汲んで、シロモクバ一号の隣で中身の確認を始める。
「そうだ。おめえ、ピカチュウにニャース、アマテラスって奴のこと知らねえか?」
「いや? 俺が会ったのは大将だけだ。そっちはぼのぼの、アライグマ親子、クズリって名前に心当たりは?」
「ねェな」
「そう、か」
 お互いに有益な情報はなし。グレッグルは頬を膨らます。

「そンで、ギン。おめえは西へ何しに行くンだ?」
 不思議なものを見るようにカエルを見つめていた銀の頭を叩いて注意を戻す。
「あそこに――」
 銀は顎で高架橋を示した。
「橋が架かってるだろ? あれの先へ――」
「ンなことは分かってンだよ。その先よ。向こうまで行って、どうするってンだ?」
 中腰で下から覗きこむように問う。
 しばらく黙ってから、銀は話し出した。赤カブトというツキノワグマ――リングマの亜種だろう――との戦いのこと、その殺したはずの赤カブトがこの地で蘇っていたこと、東の崖で邂逅を果たしたこと――そして、高架橋を伝って赤カブトとの決着を付けるということ。
長い語りを銀は終え、ふうと深呼吸をした。

「面白えじゃねェか」

 銀の話を聴き終えたグレッグルの感想はその一言に濃縮されていた。銀たちの死闘も、死者が生き返ったことも、赤カブト退治も――面白い。
「なあ、ギン。そのアカカブト退治、オレらにも一枚噛ませろよ」
 好奇心に顔を輝かせたグレッグルの言葉に、銀は一瞬首を傾げたが、すぐに千切れんばかりに尻尾を振りだした。
「有難い。実は俺の方から頼もうと思ってたんだ」
「へェ。中々見る目があるじゃねえか、坊や。じゃ、決まりだな」
 銀の支給品の確認をすでに終えていたカエルを手招きする。
 傍に座ったカエルに、グレッグルは自分と銀、カエルを指差し、名簿を開くと「赤カブト」の名を爪で貫いた。そして、高架橋をなぞりって崖の上で指を止める。
「……そいつと、ここを通って崖の上で戦うのか?」
 グレッグルは頷いてやる。銀が支給品を興味深そうに観察する傍らで、カエルは口元を手で覆って何か考えているようだ。

「おまえたちが何を相談したかは分からん。その犬と赤カブトって奴の因縁も、おまえは知ってるんだろう。おまえがやるってなら付き合うのに吝かじゃあない」

 カエルは一息つく。銀が耳だけを動かして続きを待っている。

「だけどな、争いになると分かっている場所にわざわざ出向くのは賢いとは思えない。俺たちの最終目的はキュウビの打倒と殺し合いの阻止だ。余計な危険を負うのは好ましくないぞ。それにな、言うなればその赤カブトだって、この殺し合いに巻き込まれた被害者さ。手を組むことだって……不可能じゃないぜ?」
「それは断じてない! すでに犠牲者も出てる。あいつは絶対に地獄に送り返さなきゃならない!」

 銀がけたたましく吼えた。無論、彼の言葉はカエルには届かない。グレッグルは尻を掻きながら――痒かったのだ――、人間の言葉を話すニャースがこの場にいないことに歯痒さを覚えた。こんなときぐらいしか存在価値がないというのに。
 それでも銀の剣幕から何かを感じ取ったのだろう。カエルが悲しそうな笑みを浮かべた。

「無理、か。まあ、そう思うだろうなあ。いや、おまえの闘いの邪魔をするつもりはないんだ。言いたいのは、早すぎるってことさ。情報も何もかも、俺たちには足りないんだ。赤カブトとの対決はもう少し他の参加者に会って情報を集めてからでも遅くない」
「……かったりーな、畜生」
 グレッグルの舌打ちに、カエルが肩をひょいと竦めた。あの鳥も手が組めると、この男は考えているのだろうかと、少し不安になる。
 興を殺がれ、グレッグルは大きく頬を膨らませた。と、銀がグレッグルに向かって尻尾を振った。
「他の参加者に会うというのは俺も賛成だ」
「ケッ、てめえもかよ。裏切りもの。臆病風にでも吹かれたか?」
 ぷいと顔を背ける。銀は生真面目な口調で否定した。
「違う。仲間を集めるんだ。あんたたちを含めて3匹じゃ、多分赤カブトに勝てない」
「……オレじゃ役者不足と言われてるみてェで好い気分じゃねえな」
「グレッグル。あんたを軽んじてはいない。ただな、赤カブトを斃すのに何百匹も犠牲になったと言っただろう。何百という敵を一度に捌く自信、あるか?」
「…………。わーったよ。この件に関しちゃボスはてめえだ。従うさ、ミスター。ンで、当てはあるのか?」
 腹を掻きながら訊く。銀は尻尾を垂らして首を振った。

「具体的には何もない。ただ、大将という熊が西で出会った参加者に俺のことを伝えてくれている。賛同してくれれば、この町まで来てくれるはずだ」
「……さっきも出てきた名だな。そいつは信用できるのか?」
「ああ。素晴らしい漢だ」
 熱く即答した銀に内心少し引きながら、グレッグルはそうかよと返した。
「ま、何にしろ高架橋の根元までは行くンだろ? 夜も明けちまったし、町の入り口に行ってた方がいいンじゃねえのか?」
「そうだな」
 駆け出そうとする銀を、尻尾を掴んでグレッグルは引き留めた。銀が悲鳴を上げるが無視する。

「待てよ、旦那。てめえの足で行くよりも楽で便利で面白ェものが世の中にはあるンだぜ?」

 グレッグルの含み笑いに、鼻面に皺を寄せていた銀は不審そうな顔をし、カエルは冷や汗を浮かべた。
「おい待て。また、あれ使う気か!?」
 当たり前のことを言うカエルに、グレッグルは鼻を鳴らした。カエルは待て待てと何故か抗議の声を上げる。しばらく目を閉じて熟考した後、彼は結論を告げた。
「百歩……いや、万歩譲って使用は認めよう。だが、運転は俺がする。いいな!? 返事は!?」
 カエルの必死な様相に渋々、グレッグルは了承の合図を出した。




 夜明けの町に一際大きい風の音が木霊する。
 操縦桿を握ったカエルの後ろにグレッグルが乗り、カエルの頭に銀がしがみ付いた。
「ちゃんと捕まっていろよ。出るぞ!」
 爆音が明朝の路地を駆け抜ける――。




 結局、一行は徒歩で西へ向かうこととなった。多数決という名の数の暴力に、グレッグルはケッと小さく毒づいた。。




【B-5/町/一日目/早朝】
【カエル@クロノトリガー】
【状態】:健康、多少の擦り傷、精神的疲労(小)、B-4駅へ移動中
【装備】:なんでも切れる剣@サイボーグクロちゃん
【所持品】:支給品一式、ひのきのぼう@ドラゴンクエスト5、マッスルドリンコ@真・女神転生
【思考】
基本:キュウビに対抗し、殺し合いと呪法を阻止する
0:シロモクバ一号には絶対に乗らない
1:B-4駅に移動し、情報を集める。
2:アマテラス、ピカチュウ、ニャースの捜索。
3:赤カブト退治に付き合う。
4:撃退手段を思いついた後に深夜に見かけた鳥を倒しに行く。
※グレッグルの様子から、ペット・ショップを危険生物と判断しました。
※銀の様子から赤カブトを危険な生物と判断しました。

【グレッグル@ポケットモンスター】
【状態】:健康、不満、B-4駅に向かって移動中
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、モンスターボール@ポケットモンスター、しらたま@ポケットモンスター 、シロモクバ一号@ワンピース(多少破損。使用に支障なし)
【思考】
基本:当面はカエルに付き合う。でもできれば面白そうな奴と戦いたい(命は取らない)
1:B-4駅に移動。
2:赤カブト退治を早くやりたい。
3:カエルにちょっと親近感+連帯感
4:ピカチュウとニャースは一応ピンチに陥っていたら助ける
5:あの玉、どこかで見た気が…
※特性「きけんよち」によりペット・ショップを大きな脅威と認識しました。
※しらたまについて何か覚えているかもしれません
※銀と情報交換しました

【銀@銀牙 -流れ星 銀-】
【状態】:健康、使命感、精神的疲労(小)、B-4駅へ移動中
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、不明支給品1~3個(確認済)
【思考】
基本:赤カブトとキュウビを斃す。
0:シロモクバ一号には絶対乗りたくない
1:B-4駅へ向かう。
2:仲間を集め、軍団を作る。
3:高架橋を渡って赤カブトの元へと赴く
【備考】
※参戦時期は赤カブト編終了直後です。
※ヒグマの大将と情報交換しました。ぼのぼの・アライグマ親子・クズリの父の性格と特徴を把握しました。
※会場を日本のどこかだと思っています。
※他種の獣の言葉が分かるのは首輪のせいだと考えています。
※小熊(アライグマ)、雌の狼(アルフ)は既に死亡したと考えています。
※グレッグルと情報交換しました


【備考】
※B-5の通りの一部のブロック塀が崩れています。

時系列順で読む


投下順で読む


040:熊王の城 069:罪穢れの澱みを着せて
036:暴走ポケモン特急 カエル 069:罪穢れの澱みを着せて
036:暴走ポケモン特急 グレッグル 069:罪穢れの澱みを着せて




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