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素人がガンについて考えてみました」(2006/06/23 (金) 20:19:16) の最新版変更点

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**これは質問書です 娘がガンに冒され、その闘病生活の少しでも助けになればと思い、少しずつガンについての勉強をしました。 といっても私は素人ですので、過去に専門的な勉強をしたこともないし、今後も専門的な高度の勉強をする機会はないと思います。専門家の方が素人向けに書いてくださった解説書みたいなものを読み、断片的な知識を身につけることしかできません。 でも、その断片的な知識をもとにある一つの仮説をたててみると、いろいろなことが説明できてくるような気がしてきたのです。 もちろん専門家の方から見れば笑止千万の話で、すでに学問的に完全に否定された事柄や、逆に学問の世界ではすでに常識になっていることを、ことさら大げさに考えているだけのことだとは思います。 けれども私は、娘の病気が快方に向かった今、自分のこの思いつきを世に問うてみたいと思ったのです。 私はあいにく専門家の方との交際はまるでありませんし、学術的な専門書を読むだけの学識もありません。 そこでこのような文章を書いてみたいと思いつきました。これは普通の考察とは逆に、素人が専門家の方に教えていただきたいことを書いた「質問書」です。 もし、どなたかお一人でもこの文章をご覧になって、ご高所からご教授願えましたらと思い、筆をとっています。 そして考えれば考えるほど、生命というものの不思議さ、奥深さに魅せられていきました。 それでは、この本では私の思考の順番に沿って筆を進めていきたいと思います。 **きっかけはサメ きっかけはある新聞広告の宣伝文句でした。 それは、抗ガンサプリメントのなかの「サメ軟骨」の宣伝文句で、こんなふうに書いてあったと記憶しています。 「ガンにならない唯一の生物、サメの驚異の抗ガンパワー」 これを読んだとき、「へー、サメってガンにならないのかぁ」 普通だったらこれで終わりだったと思います。 でも、なぜかこの時は想像が発展していったのです。 「サメって偉そうな顔をしているけれど、脊椎動物のなかでは意外と下等な生物だよなぁ。 ということは、他の脊椎動物はみんなガンにかかるのかなぁ? じゃあ、それ以外の生物はどうなんだろう? タコとか、エビとか、カニとかぁ……。」 「③は爬虫類だし、⑦は哺乳類だからガンになるんだろうな……」(これがわかる人は、私と同じ趣味をもっていると思って間違いない。) 「ガンにかかっている魚群がでても、そらすべるわなぁ……」 残念ながら想像はあらぬ方向へ走っていってしましました。それでもなぜか心の片隅には残っていたのです。 次のきっかけは9回目の抗ガン剤治療のあとのCT検査で、「娘のガンが少し大きくなっている」と言われたときです。 「先生、娘は元気そうになったように見えるのに、なぜガンは大きくなってしまったのでしょう。」 その時の先生の答えは、 「身体が元気になるとガン細胞も元気になることがあるのです。」 それを聞いて私は、 「ガンとは、なんてやっかいなやつなんだ。治そうといくらがんばっても、ちっとも治ろうとしない。何でこんな病気があるんだろう!」 なぜかこの時、不意にサメのことを思い出し「アッ!」と声を出し黙り込んでしまったのです。 **ガンって本当に病気? そう、先生にいわれるまでもなく、ガンは本当に治りにくいものです。 手術で取り除いてもまた再発する恐れはあるし、抗ガン剤や放射線で殺そうとしたら、先に自分の身体の方がまいってしまう。そして、身体を元気にしたら、ガン細胞まで元気になってしまう。 まさに、どんな方法を用いてもガンを完全に治すのは不可能なのではないか? まるで治ることを拒んでいるような、憎っくきガンの態度です。 このことを逆に考えてみると、「ガンは治ってもらっては困る、治したくない。」という神の声が聞こえてくるようです。 それはどういうことか? 「ガンは生物にとって必要なものなのだから簡単に治ってもらっては困るのだ。」ということです。 それでは何に必要なのか。そこでサメの登場です。 サメはガンにならない。そして、サメは太古の昔からあまり姿を変えずに生き続けている。 ということは、サメ以後に出現した生物は、みなガンになる。そして非常に高度な進化を遂げている。 つまりガンは生物が進化するために必要な機構なのではないか?!  これがこの時思いついたことです。 そして、この仮説をもとに、いろいろなことを考えてみることにしました。 もちろん最大の目的は娘のガンを治すのに少しでも役に立つならという思いからです。 **他の動物にとってガンとは? 確かに人間にとってガンとは、現代の最先端の医療をもってしても克服できないほどに恐ろしい病気です。 では、人間以外の他の生物にとって、ガンとはいったいどうなのでしょう。恐ろしい病気と認識しているでしょうか? すべての生物に死は必ず訪れるものと思われます。その死に対して特別な感情を持つのは人間だけでしょう。ですからここではガンがその生物の種全体の存続に影響があるかを考えてみましょう。 「人間以外の生物にも人間と同じような傾向でガンが発生するとしたら」——という仮説をたててみました。 昨今ガンが増えているといわれる原因に、環境問題や喫煙者の増加があげられています。そして過剰なストレスもガンの原因といわれています。 これらは、いわゆる人間の文明の進歩がもたらしたもので、他の生物、少なくとも文明発生以前の生物にとってはまるで関係のないことでしょう。 そして医学の進歩により人間の寿命は著しく延びています。 現在の平均寿命は70〜80歳くらいですが、織田信長の頃は50歳くらいだったのでしょう。 また、人間のガンにかかる人の年齢は、高齢者の方が圧倒的に多いそうです。 高齢者ということは要するに、生殖能力の衰えた人ということです。 他の生物(脊椎動物)で生殖能力が衰えても、なお存在している個体はどのくらいあるでしょうか? 人間とともに暮らしている犬や猫などでは、足腰が立たなくなってもまだ生きているものもいます。 ですがこれも人間と暮らしているため、他の生物から襲われる心配がないのと、自分で苦労をせずにエサが確保できるおかげで、とても自然で生きていくことはできないでしょう。 そもそも生物は、より良い子孫を次世代に伝えることだけに熱心で、その個体の死に対してはほとんど無関心のように思われます。 まして、生殖能力の衰えた個体にいつまでも生きていられては、エサの確保という面からしても、その生物の種全体にとっては迷惑なことでしょう。 それに、生殖活動の終わりが生命の終わりという種の方が圧倒的に多いように思います。 要するに、ガンが発病しやすい、生殖能力の衰えた生物というのはごくまれな存在で、よしんば、そういう個体にガンが発病しても、その生物の種全体からみればなんら痛痒を感じないと思われます。 **ガンと生殖能力と免疫力 高齢者にガンが多いということを生殖能力と免疫力の関係からもう少し考えてみましょう。 人間の成長は大体16歳から18歳ころに止まります。この時期に身体の中で重大な変化が起こります。それは生殖能力が成熟することです。つまりこの時点で人間は成体になるといえます。 この時期を頂点に人間の免疫力はだんだん衰えていくのだそうです。それと共に身体能力もこのころをピークにあとは下り坂になるのです。 それでも生殖能力の活発なうちは免疫力も目立った衰えはなく、いわゆる「働き盛り」壮年期を迎えます。 さらに20年から30年後に人間はもう一つ大きな節目を迎えます。いわゆる「更年期」でこれを境に人間は生殖能力が衰え、それと共に免疫力もガクッと衰えるようです。当然身体能力も弱まります。 この20年から30年という時間はある値と一致します。 それはガン細胞が発生してから発病するまでの時間です。ガンに関する本を読むと、ガン細胞は毎日かなりの数発生し(数千から10万個という本もあります)20年から30年かけてゆっくり成長し、いわゆる更年期のころ発病することが多いのだそうです。 そして、このガン細胞の成長をくい止めるのが免疫力なのだそうです。 整理すると、人間は生殖能力が成熟したころガンが発生しますが、その成長は免疫力がくい止めます。ところが20年から30年経つと生殖能力と共に免疫力が劣えるためガン細胞は成長し、ガンが発病することが多くなると考えられます。 他の生物も大体これと同じような傾向だと思います。ただ他の生物は、それと共に身体能力が衰えるためエサの確保ができなくなったり、外敵に襲われたり、また別の病気で命を落とすことがほとんどで、ガンが発病するまで生きているものは非常にまれなことだと思います。 また、人間も進んだ文明を持つまでは平均的な寿命は50年くらいだったと思われますので、ガンで死ぬ人間は現代人より格段に少なかったことでしょう。 **幼年期のガン それでは、生殖能力が未熟な幼年期のガンについてはどうでしょう。 私の娘は13歳で発病して大学病院に入院しました。その小児科病棟には0歳から15歳までの子供たちが病気と闘っていましたが、そのうちの約半数の子供たちには髪の毛がありませんでした。 全体的にはかなり低確率だとは思いますが、幼年期にもガンは発病するのです。 この時期のガンの特徴として大人と違い骨や筋肉などに発生するガンが多いことがあげられます。これは成長期にあるため骨や筋肉の細胞が活発に分裂、増殖するからでしょう。ガンは活発に分裂する細胞に発生しやすいのです。 また総じて子供のガンは進行が早いといわれています。これも細胞が活発に分裂、増殖することと密接に関係があるのでしょう。また、免疫力も未熟なためその成長を阻止するのも難しいのだと考えられます。 私はこの幼年期のガンが、生物の進化と密接な関係があると考えたのです。 **突然変異 ガンは遺伝子の異状により起こります。 細胞は分裂するとき遺伝子をコピーしますが、その時コピーにミスが生じることがあります。これを遺伝子の書き換えといい、最少の「突然変異」であります。もちろん生殖細胞も例外ではありません。 一般にガン細胞は毎日かなりの数発生し、その成長に20年から30年かかることは先ほども書きました。幼年期のガンはもちろんこれに当てはまりません。 一般のガンは身体の成長が一段落して生殖能力が完成したころ発生すると考えられます。 これに対して幼年期は成長の真っ盛りですし、生殖能力もまだ未成熟です。どうも発生プロセス自体が異なるような気がします。 私は、幼年期のガンは受精卵の段階ですでにその発生の芽があるのではないかと思います。どうでしょうか? 一般のガンは、身体の成長が一段落したあとも活発に分裂する細胞に発生します。 ですから、内臓系や生殖系の器官にできるガンが多いのでしょう。 幼年期はほとんどすべての細胞が活発に分裂していると言っても過言ではありません。しかも、免疫力はまだ未熟なのです。本来なら大人より子供にガンが多発しても不思議ではないのです。 しかし、実際は子供のガンは大人のガンよりかなり低確立なのは言うまでもありません。 これは免疫力より強力なガン細胞の成長をくい止める機構があるか、ガン細胞の発生そのものがほとんど無いかの2通りが考えられます。 前者だとすると、成長ホルモンがその鍵を握っていると思われますが、これだと20代や30代の方に骨や筋肉のガンがほとんど発生しないことの説明が少し難しいような気がします。 後者の場合も、やはり成長ホルモンが正常な細胞分裂をうながしていると考えられます。 すると幼年期のガンの発生を受精卵の段階、つまり一世代間の生殖細胞に原因を求めるのが一番自然なことと思います。 そこは性ホルモンが支配している世界です。一般のガンも生殖能力が完成してから発生すると考えられるのですから。 **ガン細胞の性質 ガン細胞は「遺伝子の異状により無限に増殖する能力を持った細胞」です。 身体全体の秩序などお構いなしに、どんどん分裂して増殖していきます。 ガンのことを「悪性新生物」と呼ぶこともありますが、これは身体の中にまるで新しい生物が生まれたかのようなガン細胞の無秩序な振る舞いを言い表したことばです。 そして、ほとんどの場合死に至るために、大変悪いイメージにとらえられています。 しかし、見方を変えてみたらどうでしょう! 新しい遺伝情報を持った細胞が勢いよく増えていくとも考えられるでしょう。 ガンには“分化型のガン”と“未分化型のガン”があります。 分化型のガンとは、たとえば胃ガンですとそのガン細胞はほとんど正常な胃の細胞と変わらないものをいいます。 これに対して、未分化型のガンは正常な細胞とは姿形が異なり、もともとどこの細胞がガン化したのか分からないようなガン細胞のことをいいます。 人間などの生物は、たった1個の受精卵から出発して次々と分裂増殖すると共に、いろいろな組織や器官に分化していきます。 未分化の細胞とは、まだそれがどの組織になるか分からないような細胞、つまり若い細胞ということができます。 もしこの新しい遺伝情報を持った未分化型のガン細胞が勢いよく増えて大きくなって、ちょうど良いところで分化をしたらどうでしょう。 新しい組織が形成される可能性もあるのではないでしょうか? しかも、ガン細胞にはある程度大きくなると自分のための血管を作る性質もあるのです。新しい組織には、もちろん新しい血管が必要です。 **トカゲのシッポ 私はこれと良く似た現象を一つ知っています。それはトカゲのシッポです。 トカゲは自分の身に危険が迫るとシッポを自ら切り離し、そのすきに本体だけ無事に逃げのびるということは良く知られたことです。 そして、切れたシッポはまた元どおりに生えてきます。これを再生といいます。 この方法は、切り口にシッポの付け根から順序よく生えてくるのではありません。 まず、未分化の細胞がシッポの切り口のあたりで勢いよく増殖します。モコ、モコっという感じで細胞がシッポの切り口あたりに大量発生するのです。そしてそれが整然と分化をして元どおりのシッポを形作るのです。 このシッポの切り口のあたりで増殖する細胞とガン細胞ととても性格が似ているような気がします。問題はその後都合良く分化するかどうかです。 もちろん、人間にもトカゲのシッポほどではないですが、再生能力はあります。転んで擦りむいてもいつの間にか皮膚は元どおりになっています。多かれ少なかれ生物はガン細胞の性質を利用しているのではないでしょうか? **ガンと進化 かなりの低確立ではありますが、幼年期にもガンは発病します。 しかし、何10万年という単位の時間で考えると、膨大な数の幼年期にガンが発病した個体があることでしょう。自然界では、そのことごとくが生殖活動をする前に死んでいってしまうことになるでしょう。 もっとも、そのような弱い個体はガンで死ぬより先に他の動物の胃袋のなかに入ってしまうことになるでしょうが、でも仮に1億匹がそのように死んでいっても1億1匹目がそのガンを克服し、逆にそのガンを利用することになれば、そしてその生物が生殖活動を行えば…? そもそもガン細胞とは、「遺伝子の異状により無限に増殖してしまう細胞のことである。」とたいていの本に書いてあります。 これをいいかえたら新しい情報をもった細胞が勢いよく増えていくともいえるのではないでしょうか。 たとえば、私の娘は左の「二の腕」に骨のガンが発生しました。もし仮にそのガンが右腕にも発生しその新しい情報が「関節」になるような情報であったら、腕の関節が三つある人間が誕生するかもしれません。また、そこまで変化しなくても腕の細胞が増殖することにより「二の腕」が非常に長い人間が生まれる可能性もあります。 そして、その子が生殖活動を行えば、その新しい形質をもった子供が次世代にも誕生する可能性もあるわけです。 私は昔、中学か高校の時に、「進化とは突然変異と自然淘汰の積み重ねである」と習った覚えがあります。 確かに、いろいろなものの品種改良にはこの遺伝の法則が当てはまるでしょう。 でも、自然淘汰ということについてはどうでしょう? ゾウの鼻は、昔は短かったそうです。それが、突然変異と自然淘汰の積み重ねで、だんだん今のように長くなってきたと、これも昔習った覚えがあります。確かに今のゾウより短い鼻の生物の化石もあるようです。 でも、鼻が伸び始めた頃のゾウは、他のゾウより優性といえるでしょうか。 中途半端な長さでは物をつかむことなどとてもできないし、肉食動物にとっての格好の的になりそうな気もします。 それとも将来長くなったら便利だということを見越し、その途中の不利には少々目をつぶっても、だんだんに伸ばしていったのでしょうか。でもそれが何万年も時間がかかるようなら、その途中の生物こそ自然淘汰されてしまうのではないでしょうか。 私は、こんなふうに考えてみたのですが、どうでしょうか? 「昔むかし、ゾウの祖先の動物の鼻にガンができました。でもガンはできても症状としては現れないのでその個体は生殖活動を行いました。こうして鼻にガンができる個体の数は増えていきましたが、みな症状がでる前に生殖活動を行い、遺伝子だけが着々と変化していきました。ごくまれに子供の時、そのガンが発病する個体もいましたが、そのことごとくは死んでいったことでしょう。何万年かたったある日、母親の胎内で、ある子供にガンが発病しました。子供の鼻のあたりにどんどんガン細胞が発達し大きな“おでき”のようなものができました。その“おでき”が鼻の細胞に変化していったのです。細胞が分化していったと考えられます。こうして母親の胎内から生まれたその子供は、他のものよりずいぶん鼻の長い子供でした。しかも、その子供はガン細胞が鼻の細胞に分化したため、生まれたときにはもうガンではなくなっていたのです。そしてその子供は成長して生殖活動を行い、次世代にも鼻の長い子供が生まれてきました。こうしてわずか数世代の間にどんどん鼻の長いゾウが増えていったのです。」 つまり、ガンの性質は「若いうちに発生しても発病はしない」ので、普通に生殖活動を行い、遺伝子レベルで次世代に新しい情報を伝えることができます。 「発病するときは生殖能力が衰えている」ので、その生物全体にとってはその個体が仮にガンで死んでも何の問題もありませんし、むしろ歓迎すべきことでしょう。 「幼年期に発生するガンは低確率」なので、これもその生物全体にとっては気にすることもないでしょう。そもそも、生まれた子供のほとんどが大人に成長する生物は、現代の人間くらいのものでしょう。 そして、いくら低確率でも何万年という長い歳月のうちには、膨大な数の幼年期のガンになった個体が現れることでしょう。 そのなかの1匹にその生物にとって有利な形質が現れたら、その個体が生殖活動をすることによりその形質が次世代に伝えられ、短い時間の間にその形質をもった個体が増えていくことになると思われます。 こう考えていくとガンとは生物が進化していくうえで、本当に便利な性質のような気がします。 **大進化 もう少しガンと進化の関係を考えてみましょう。 前述のゾウの鼻がだんだん伸びていった進化は、途中の鼻の長さが中途半端な時さえ辛抱すれば、突然変異と自然淘汰だけで説明できるかもしれません。 ではたとえば、魚類から両生類になるような進化、こういうのを「大進化」と呼ぶそうですが、こういう進化についてはどうでしょう。 オタマジャクシがカエルになるときのことを考えてみましょう。手が出て、足が出て、尾が消えて、エラ呼吸から肺呼吸に変わる。このような大変化は突然変異と自然淘汰だけでは絶対に説明できないと思います。 条件を考えてみましょう。 まず、手だけがはえた魚とか、尾ビレがなくなった魚が、他の魚より優秀だとはとても考えられません。手と足が同時に発生しなければほとんど意味はないでしょう。肺は、浮き袋が変化した「肺魚」のような魚がいるので、そういう生物がワンクッションになっているかもしれませんが、とにかく同時多発的にいろいろな器官が変化しなくてはならないと思います。 次に、そのような変化を何万年もかかってやっていたのでは意味がありません。おそらくほんの数世代のうちに変化を完了させなければ、とても生き長らえていることはできないでしょう。 そしてもう一つ大事な条件があります。ゾウの場合は鼻の長くなったものが元のものと生殖活動はできたと思います。しかし、カエルになってしまったら、もう魚とはSEXできないでしょう。つまりこのような大変化をした個体が、同時期にある程度の数、発生しなければないのです。 もうここまできたら、突然変異と自然淘汰ではお手上げでしょう。ガンの性質を利用しても説明できるレベルのものではありません。おそらく遺伝子の書きかえなどではなく、遺伝子そのものを新しく作っていったのだと思います。 それでも生物はこの大事業をやり遂げました。しかしこれは長い生物史のなかでも記念すべき大事業だったのでしょう。われわれ人間も初期の胎児の段階では、いまだにエラを作っているのですから。 **次の疑問 こうして私は、サメがガンにならない生物ということと、ガンは病気ではないのではないかということから、サメ以後の生物にガンが現れその性質を利用して、生物はその数と種類を飛躍的に増やしたのではないかという結論に達しました。そしてその時期は、おそらく古生代の終わり頃だろうと考えていました。 しかし、その後読んだある本のなかに「ガンはショウジョウバエや植物にも発生する」と書いてありました。 そうすると、サメは単にガンになりにくい体質で、進化の速度が遅いだけかもしれません。シーラカンスやカブトガニなど生きた化石といわれる生物もガンにかかりにくい体質なのかもしれません。 う〜ん、では古生代より以前はどうだったのだろう? 私のなかに新しい疑問が芽生えてきました。 そんなある日、元気になった娘と妻の三人で買い物に出かけたとき、女性同士の動向についていけない私は、例によって本屋で立ち読みをしていました。その本のなかにとんでもないことが書いてあったのです。 それは今から、5〜6億年前に「バージェス動物群」という今の生物からは想像もできないような生物が多数生息していたと書いてありました。 私は、「これだ!」と感じ、この古生代以前の謎の時代について真剣に考えてみようと思いました。 それには今をさかのぼること、45億年前から話を進めなくてはなりません。 [[つぎへ 「生物の発生について考えてみました」>>生物の発生について考えてみました]]
**きっかけはサメ きっかけはある新聞広告の宣伝文句でした。 それは、抗ガンサプリメントのなかの「サメ軟骨」の宣伝文句で、こんなふうに書いてあったと記憶しています。 「ガンにならない唯一の生物、サメの驚異の抗ガンパワー」 これを読んだとき、「へー、サメってガンにならないのかぁ」 普通だったらこれで終わりだったと思います。 でも、なぜかこの時は想像が発展していったのです。 「サメって偉そうな顔をしているけれど、脊椎動物のなかでは意外と下等な生物だよなぁ。 ということは、他の脊椎動物はみんなガンにかかるのかなぁ? じゃあ、それ以外の生物はどうなんだろう? タコとか、エビとか、カニとかぁ……。」 「③は爬虫類だし、⑦は哺乳類だからガンになるんだろうな……」(これがわかる人は、私と同じ趣味をもっていると思って間違いない。) 「ガンにかかっている魚群がでても、そらすべるわなぁ……」 残念ながら想像はあらぬ方向へ走っていってしましました。それでもなぜか心の片隅には残っていたのです。 次のきっかけは9回目の抗ガン剤治療のあとのCT検査で、「娘のガンが少し大きくなっている」と言われたときです。 「先生、娘は元気そうになったように見えるのに、なぜガンは大きくなってしまったのでしょう。」 その時の先生の答えは、 「身体が元気になるとガン細胞も元気になることがあるのです。」 それを聞いて私は、 「ガンとは、なんてやっかいなやつなんだ。治そうといくらがんばっても、ちっとも治ろうとしない。何でこんな病気があるんだろう!」 なぜかこの時、不意にサメのことを思い出し「アッ!」と声を出し黙り込んでしまったのです。 **ガンって本当に病気? そう、先生にいわれるまでもなく、ガンは本当に治りにくいものです。 手術で取り除いてもまた再発する恐れはあるし、抗ガン剤や放射線で殺そうとしたら、先に自分の身体の方がまいってしまう。そして、身体を元気にしたら、ガン細胞まで元気になってしまう。 まさに、どんな方法を用いてもガンを完全に治すのは不可能なのではないか? まるで治ることを拒んでいるような、憎っくきガンの態度です。 このことを逆に考えてみると、「ガンは治ってもらっては困る、治したくない。」という神の声が聞こえてくるようです。 それはどういうことか? 「ガンは生物にとって必要なものなのだから簡単に治ってもらっては困るのだ。」ということです。 それでは何に必要なのか。そこでサメの登場です。 サメはガンにならない。そして、サメは太古の昔からあまり姿を変えずに生き続けている。 ということは、サメ以後に出現した生物は、みなガンになる。そして非常に高度な進化を遂げている。 つまりガンは生物が進化するために必要な機構なのではないか?!  これがこの時思いついたことです。 そして、この仮説をもとに、いろいろなことを考えてみることにしました。 もちろん最大の目的は娘のガンを治すのに少しでも役に立つならという思いからです。 **他の動物にとってガンとは? 確かに人間にとってガンとは、現代の最先端の医療をもってしても克服できないほどに恐ろしい病気です。 では、人間以外の他の生物にとって、ガンとはいったいどうなのでしょう。恐ろしい病気と認識しているでしょうか? すべての生物に死は必ず訪れるものと思われます。その死に対して特別な感情を持つのは人間だけでしょう。ですからここではガンがその生物の種全体の存続に影響があるかを考えてみましょう。 「人間以外の生物にも人間と同じような傾向でガンが発生するとしたら」——という仮説をたててみました。 昨今ガンが増えているといわれる原因に、環境問題や喫煙者の増加があげられています。そして過剰なストレスもガンの原因といわれています。 これらは、いわゆる人間の文明の進歩がもたらしたもので、他の生物、少なくとも文明発生以前の生物にとってはまるで関係のないことでしょう。 そして医学の進歩により人間の寿命は著しく延びています。 現在の平均寿命は70〜80歳くらいですが、織田信長の頃は50歳くらいだったのでしょう。 また、人間のガンにかかる人の年齢は、高齢者の方が圧倒的に多いそうです。 高齢者ということは要するに、生殖能力の衰えた人ということです。 他の生物(脊椎動物)で生殖能力が衰えても、なお存在している個体はどのくらいあるでしょうか? 人間とともに暮らしている犬や猫などでは、足腰が立たなくなってもまだ生きているものもいます。 ですがこれも人間と暮らしているため、他の生物から襲われる心配がないのと、自分で苦労をせずにエサが確保できるおかげで、とても自然で生きていくことはできないでしょう。 そもそも生物は、より良い子孫を次世代に伝えることだけに熱心で、その個体の死に対してはほとんど無関心のように思われます。 まして、生殖能力の衰えた個体にいつまでも生きていられては、エサの確保という面からしても、その生物の種全体にとっては迷惑なことでしょう。 それに、生殖活動の終わりが生命の終わりという種の方が圧倒的に多いように思います。 要するに、ガンが発病しやすい、生殖能力の衰えた生物というのはごくまれな存在で、よしんば、そういう個体にガンが発病しても、その生物の種全体からみればなんら痛痒を感じないと思われます。 **ガンと生殖能力と免疫力 高齢者にガンが多いということを生殖能力と免疫力の関係からもう少し考えてみましょう。 人間の成長は大体16歳から18歳ころに止まります。この時期に身体の中で重大な変化が起こります。それは生殖能力が成熟することです。つまりこの時点で人間は成体になるといえます。 この時期を頂点に人間の免疫力はだんだん衰えていくのだそうです。それと共に身体能力もこのころをピークにあとは下り坂になるのです。 それでも生殖能力の活発なうちは免疫力も目立った衰えはなく、いわゆる「働き盛り」壮年期を迎えます。 さらに20年から30年後に人間はもう一つ大きな節目を迎えます。いわゆる「更年期」でこれを境に人間は生殖能力が衰え、それと共に免疫力もガクッと衰えるようです。当然身体能力も弱まります。 この20年から30年という時間はある値と一致します。 それはガン細胞が発生してから発病するまでの時間です。ガンに関する本を読むと、ガン細胞は毎日かなりの数発生し(数千から10万個という本もあります)20年から30年かけてゆっくり成長し、いわゆる更年期のころ発病することが多いのだそうです。 そして、このガン細胞の成長をくい止めるのが免疫力なのだそうです。 整理すると、人間は生殖能力が成熟したころガンが発生しますが、その成長は免疫力がくい止めます。ところが20年から30年経つと生殖能力と共に免疫力が劣えるためガン細胞は成長し、ガンが発病することが多くなると考えられます。 他の生物も大体これと同じような傾向だと思います。ただ他の生物は、それと共に身体能力が衰えるためエサの確保ができなくなったり、外敵に襲われたり、また別の病気で命を落とすことがほとんどで、ガンが発病するまで生きているものは非常にまれなことだと思います。 また、人間も進んだ文明を持つまでは平均的な寿命は50年くらいだったと思われますので、ガンで死ぬ人間は現代人より格段に少なかったことでしょう。 **幼年期のガン それでは、生殖能力が未熟な幼年期のガンについてはどうでしょう。 私の娘は13歳で発病して大学病院に入院しました。その小児科病棟には0歳から15歳までの子供たちが病気と闘っていましたが、そのうちの約半数の子供たちには髪の毛がありませんでした。 全体的にはかなり低確率だとは思いますが、幼年期にもガンは発病するのです。 この時期のガンの特徴として大人と違い骨や筋肉などに発生するガンが多いことがあげられます。これは成長期にあるため骨や筋肉の細胞が活発に分裂、増殖するからでしょう。ガンは活発に分裂する細胞に発生しやすいのです。 また総じて子供のガンは進行が早いといわれています。これも細胞が活発に分裂、増殖することと密接に関係があるのでしょう。また、免疫力も未熟なためその成長を阻止するのも難しいのだと考えられます。 私はこの幼年期のガンが、生物の進化と密接な関係があると考えたのです。 **突然変異 ガンは遺伝子の異状により起こります。 細胞は分裂するとき遺伝子をコピーしますが、その時コピーにミスが生じることがあります。これを遺伝子の書き換えといい、最少の「突然変異」であります。もちろん生殖細胞も例外ではありません。 一般にガン細胞は毎日かなりの数発生し、その成長に20年から30年かかることは先ほども書きました。幼年期のガンはもちろんこれに当てはまりません。 一般のガンは身体の成長が一段落して生殖能力が完成したころ発生すると考えられます。 これに対して幼年期は成長の真っ盛りですし、生殖能力もまだ未成熟です。どうも発生プロセス自体が異なるような気がします。 私は、幼年期のガンは受精卵の段階ですでにその発生の芽があるのではないかと思います。どうでしょうか? 一般のガンは、身体の成長が一段落したあとも活発に分裂する細胞に発生します。 ですから、内臓系や生殖系の器官にできるガンが多いのでしょう。 幼年期はほとんどすべての細胞が活発に分裂していると言っても過言ではありません。しかも、免疫力はまだ未熟なのです。本来なら大人より子供にガンが多発しても不思議ではないのです。 しかし、実際は子供のガンは大人のガンよりかなり低確立なのは言うまでもありません。 これは免疫力より強力なガン細胞の成長をくい止める機構があるか、ガン細胞の発生そのものがほとんど無いかの2通りが考えられます。 前者だとすると、成長ホルモンがその鍵を握っていると思われますが、これだと20代や30代の方に骨や筋肉のガンがほとんど発生しないことの説明が少し難しいような気がします。 後者の場合も、やはり成長ホルモンが正常な細胞分裂をうながしていると考えられます。 すると幼年期のガンの発生を受精卵の段階、つまり一世代間の生殖細胞に原因を求めるのが一番自然なことと思います。 そこは性ホルモンが支配している世界です。一般のガンも生殖能力が完成してから発生すると考えられるのですから。 **ガン細胞の性質 ガン細胞は「遺伝子の異状により無限に増殖する能力を持った細胞」です。 身体全体の秩序などお構いなしに、どんどん分裂して増殖していきます。 ガンのことを「悪性新生物」と呼ぶこともありますが、これは身体の中にまるで新しい生物が生まれたかのようなガン細胞の無秩序な振る舞いを言い表したことばです。 そして、ほとんどの場合死に至るために、大変悪いイメージにとらえられています。 しかし、見方を変えてみたらどうでしょう! 新しい遺伝情報を持った細胞が勢いよく増えていくとも考えられるでしょう。 ガンには“分化型のガン”と“未分化型のガン”があります。 分化型のガンとは、たとえば胃ガンですとそのガン細胞はほとんど正常な胃の細胞と変わらないものをいいます。 これに対して、未分化型のガンは正常な細胞とは姿形が異なり、もともとどこの細胞がガン化したのか分からないようなガン細胞のことをいいます。 人間などの生物は、たった1個の受精卵から出発して次々と分裂増殖すると共に、いろいろな組織や器官に分化していきます。 未分化の細胞とは、まだそれがどの組織になるか分からないような細胞、つまり若い細胞ということができます。 もしこの新しい遺伝情報を持った未分化型のガン細胞が勢いよく増えて大きくなって、ちょうど良いところで分化をしたらどうでしょう。 新しい組織が形成される可能性もあるのではないでしょうか? しかも、ガン細胞にはある程度大きくなると自分のための血管を作る性質もあるのです。新しい組織には、もちろん新しい血管が必要です。 **トカゲのシッポ 私はこれと良く似た現象を一つ知っています。それはトカゲのシッポです。 トカゲは自分の身に危険が迫るとシッポを自ら切り離し、そのすきに本体だけ無事に逃げのびるということは良く知られたことです。 そして、切れたシッポはまた元どおりに生えてきます。これを再生といいます。 この方法は、切り口にシッポの付け根から順序よく生えてくるのではありません。 まず、未分化の細胞がシッポの切り口のあたりで勢いよく増殖します。モコ、モコっという感じで細胞がシッポの切り口あたりに大量発生するのです。そしてそれが整然と分化をして元どおりのシッポを形作るのです。 このシッポの切り口のあたりで増殖する細胞とガン細胞ととても性格が似ているような気がします。問題はその後都合良く分化するかどうかです。 もちろん、人間にもトカゲのシッポほどではないですが、再生能力はあります。転んで擦りむいてもいつの間にか皮膚は元どおりになっています。多かれ少なかれ生物はガン細胞の性質を利用しているのではないでしょうか? **ガンと進化 かなりの低確立ではありますが、幼年期にもガンは発病します。 しかし、何10万年という単位の時間で考えると、膨大な数の幼年期にガンが発病した個体があることでしょう。自然界では、そのことごとくが生殖活動をする前に死んでいってしまうことになるでしょう。 もっとも、そのような弱い個体はガンで死ぬより先に他の動物の胃袋のなかに入ってしまうことになるでしょうが、でも仮に1億匹がそのように死んでいっても1億1匹目がそのガンを克服し、逆にそのガンを利用することになれば、そしてその生物が生殖活動を行えば…? そもそもガン細胞とは、「遺伝子の異状により無限に増殖してしまう細胞のことである。」とたいていの本に書いてあります。 これをいいかえたら新しい情報をもった細胞が勢いよく増えていくともいえるのではないでしょうか。 たとえば、私の娘は左の「二の腕」に骨のガンが発生しました。もし仮にそのガンが右腕にも発生しその新しい情報が「関節」になるような情報であったら、腕の関節が三つある人間が誕生するかもしれません。また、そこまで変化しなくても腕の細胞が増殖することにより「二の腕」が非常に長い人間が生まれる可能性もあります。 そして、その子が生殖活動を行えば、その新しい形質をもった子供が次世代にも誕生する可能性もあるわけです。 私は昔、中学か高校の時に、「進化とは突然変異と自然淘汰の積み重ねである」と習った覚えがあります。 確かに、いろいろなものの品種改良にはこの遺伝の法則が当てはまるでしょう。 でも、自然淘汰ということについてはどうでしょう? ゾウの鼻は、昔は短かったそうです。それが、突然変異と自然淘汰の積み重ねで、だんだん今のように長くなってきたと、これも昔習った覚えがあります。確かに今のゾウより短い鼻の生物の化石もあるようです。 でも、鼻が伸び始めた頃のゾウは、他のゾウより優性といえるでしょうか。 中途半端な長さでは物をつかむことなどとてもできないし、肉食動物にとっての格好の的になりそうな気もします。 それとも将来長くなったら便利だということを見越し、その途中の不利には少々目をつぶっても、だんだんに伸ばしていったのでしょうか。でもそれが何万年も時間がかかるようなら、その途中の生物こそ自然淘汰されてしまうのではないでしょうか。 私は、こんなふうに考えてみたのですが、どうでしょうか? 「昔むかし、ゾウの祖先の動物の鼻にガンができました。でもガンはできても症状としては現れないのでその個体は生殖活動を行いました。こうして鼻にガンができる個体の数は増えていきましたが、みな症状がでる前に生殖活動を行い、遺伝子だけが着々と変化していきました。ごくまれに子供の時、そのガンが発病する個体もいましたが、そのことごとくは死んでいったことでしょう。何万年かたったある日、母親の胎内で、ある子供にガンが発病しました。子供の鼻のあたりにどんどんガン細胞が発達し大きな“おでき”のようなものができました。その“おでき”が鼻の細胞に変化していったのです。細胞が分化していったと考えられます。こうして母親の胎内から生まれたその子供は、他のものよりずいぶん鼻の長い子供でした。しかも、その子供はガン細胞が鼻の細胞に分化したため、生まれたときにはもうガンではなくなっていたのです。そしてその子供は成長して生殖活動を行い、次世代にも鼻の長い子供が生まれてきました。こうしてわずか数世代の間にどんどん鼻の長いゾウが増えていったのです。」 つまり、ガンの性質は「若いうちに発生しても発病はしない」ので、普通に生殖活動を行い、遺伝子レベルで次世代に新しい情報を伝えることができます。 「発病するときは生殖能力が衰えている」ので、その生物全体にとってはその個体が仮にガンで死んでも何の問題もありませんし、むしろ歓迎すべきことでしょう。 「幼年期に発生するガンは低確率」なので、これもその生物全体にとっては気にすることもないでしょう。そもそも、生まれた子供のほとんどが大人に成長する生物は、現代の人間くらいのものでしょう。 そして、いくら低確率でも何万年という長い歳月のうちには、膨大な数の幼年期のガンになった個体が現れることでしょう。 そのなかの1匹にその生物にとって有利な形質が現れたら、その個体が生殖活動をすることによりその形質が次世代に伝えられ、短い時間の間にその形質をもった個体が増えていくことになると思われます。 こう考えていくとガンとは生物が進化していくうえで、本当に便利な性質のような気がします。 **大進化 もう少しガンと進化の関係を考えてみましょう。 前述のゾウの鼻がだんだん伸びていった進化は、途中の鼻の長さが中途半端な時さえ辛抱すれば、突然変異と自然淘汰だけで説明できるかもしれません。 ではたとえば、魚類から両生類になるような進化、こういうのを「大進化」と呼ぶそうですが、こういう進化についてはどうでしょう。 オタマジャクシがカエルになるときのことを考えてみましょう。手が出て、足が出て、尾が消えて、エラ呼吸から肺呼吸に変わる。このような大変化は突然変異と自然淘汰だけでは絶対に説明できないと思います。 条件を考えてみましょう。 まず、手だけがはえた魚とか、尾ビレがなくなった魚が、他の魚より優秀だとはとても考えられません。手と足が同時に発生しなければほとんど意味はないでしょう。肺は、浮き袋が変化した「肺魚」のような魚がいるので、そういう生物がワンクッションになっているかもしれませんが、とにかく同時多発的にいろいろな器官が変化しなくてはならないと思います。 次に、そのような変化を何万年もかかってやっていたのでは意味がありません。おそらくほんの数世代のうちに変化を完了させなければ、とても生き長らえていることはできないでしょう。 そしてもう一つ大事な条件があります。ゾウの場合は鼻の長くなったものが元のものと生殖活動はできたと思います。しかし、カエルになってしまったら、もう魚とはSEXできないでしょう。つまりこのような大変化をした個体が、同時期にある程度の数、発生しなければないのです。 もうここまできたら、突然変異と自然淘汰ではお手上げでしょう。ガンの性質を利用しても説明できるレベルのものではありません。おそらく遺伝子の書きかえなどではなく、遺伝子そのものを新しく作っていったのだと思います。 それでも生物はこの大事業をやり遂げました。しかしこれは長い生物史のなかでも記念すべき大事業だったのでしょう。われわれ人間も初期の胎児の段階では、いまだにエラを作っているのですから。 **次の疑問 こうして私は、サメがガンにならない生物ということと、ガンは病気ではないのではないかということから、サメ以後の生物にガンが現れその性質を利用して、生物はその数と種類を飛躍的に増やしたのではないかという結論に達しました。そしてその時期は、おそらく古生代の終わり頃だろうと考えていました。 しかし、その後読んだある本のなかに「ガンはショウジョウバエや植物にも発生する」と書いてありました。 そうすると、サメは単にガンになりにくい体質で、進化の速度が遅いだけかもしれません。シーラカンスやカブトガニなど生きた化石といわれる生物もガンにかかりにくい体質なのかもしれません。 う〜ん、では古生代より以前はどうだったのだろう? 私のなかに新しい疑問が芽生えてきました。 そんなある日、元気になった娘と妻の三人で買い物に出かけたとき、女性同士の動向についていけない私は、例によって本屋で立ち読みをしていました。その本のなかにとんでもないことが書いてあったのです。 それは今から、5〜6億年前に「バージェス動物群」という今の生物からは想像もできないような生物が多数生息していたと書いてありました。 私は、「これだ!」と感じ、この古生代以前の謎の時代について真剣に考えてみようと思いました。 それには今をさかのぼること、45億年前から話を進めなくてはなりません。 [[つぎへ 「生物の発生について考えてみました」>>生物の発生について考えてみました]]

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