卒論

    

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「Measurement activity of Diplura Campodeidae gen.sp. in a limestone cave , Akiyoshi-dai plateau , prefecture Yamaguchi , Japan」


 タイトルはそれっぽいですが、内容は駄論文ですので、興味がある人ない人関係なく気軽に読んでやってください。対象の昆虫自体、超レアで、普通の人は一生出会うこともなく終わります。

 まず、対象昆虫であるホラアナナガコムシ(Campdediae sp.)について説明しましょう。ホラアナナガコムシとはナガコムシ科の一種です。ナガコムシとはコムシ目に属しています。つまり、

 動物界→節足動物門→昆虫綱→コムシ目(倍尾目)→ナガコムシ科→○○属→○○○(種)

 上のように分類されるわけなんですが、属と種が○○になってます。ホラアナナガコムシとは俗称です。この虫は新属新種に分類されるらしいのですが、まだ発表されていないようなので、学名はナガコムシの一種となっています。
 コムシ目の昆虫は一般的な土壌生物で、世界で約800種いるそうです。日本では3科13種が確認されています。
 そんなナガコムシにホラアナがついていますねぇ。つまりホラアナ(=洞穴)に棲んでいるナガコムシこそホラアナナガコムシなのです。

 そんなホラアナナガコムシがどんな虫なのか、イメージが湧かないでしょう?(笑)ここで写真で紹介します。


(頭部から腹部末端まで約8mm。撮影:むしごろう)

 どうですか?見たことありますか?(笑)
 このホラアナナガコムシは洞窟で一生を過ごすので、真洞窟性動物と呼ばれています。体色は白~透明で、眼が消失しています。翅は無く、細長い触角と尾角、肢が特徴的です。これらの形態は、暗黒で高湿度、一年中温度変化が少ないという洞窟環境に適応した結果です。

 最近、生物時計とか体内時計とかいうのが流行ってます。一度は耳にしたことがあると思います。ほとんどすべての生物は体内に時計を持っていて、その時計に従って生活をしています。人間なら24.5時間とか言われてます。人間社会の1日は24時間ですから、0.5時間ずれているので、規則正しく1日を生活し続けると週末に少しきつくなるのはそのせいです。しかしながら生命とは優れたもので、そのずれをリセットしてくれるものが存在します。それが太陽の光です。
 太陽の光を浴びることで時計のずれはリセットされるので、人間は24時間の生活に順応することができます。リセットに必要な太陽の光の強さと時間は、昼間の木陰で2時間程度だったと思います(うろ覚え)。だから、夜型の人は、太陽の光を浴びることが少ないので、すぐに体調が悪くなったりしてしまいます。夜更かしのしすぎには気をつけましょう(笑)
 地上の生物のほとんどは約1日(20時間~28時間)の時計を持っています。これを概日時計とか概日リズムとか言います。これのおかげで、時計がない場所でもしばらくの間は約1日のリズムで生活することができます。生物は太陽の光の強弱や日長時間の短長を感じ取って、季節などを予知し、それに合わせた生活環を持っています。

 では、ホラアナナガコムシの生物時計はどうなっているのでしょう?洞窟環境は前述した通り、暗黒です。洞窟の規模や形、場所によっても違いますが、基本的に洞口(洞窟の入口かつ出口)から数m入ってしまえば、そこには真の闇が広がっています。そのせいで洞窟内に植物は存在しません。観光洞はライトアップされているので明るいですが、そうでない洞窟は本当に暗いです。っていうか何も見えませんし、眼が慣れるということもありません。体験したい人は、とある団体が毎年秋に一般人を洞窟に入れてあげるという企画を行っているので、行ってみてください(宣伝)。また、研究目的・取材依頼なども受け付けています(たぶん)
 時計をリセットさせる太陽の光が存在しない洞窟環境では、そこにずっといると時計のずれがどんどん大きくなってしまいます。ホラアナナガコムシは洞窟環境に数万世代棲んでいると考えられます。一般的に、概日リズムは消失し、季節性も失われ、1年中交尾や産卵を繰り返していると考えられていますが、詳しい生態はわかっていません。
 確かに洞窟環境には季節性はほとんどないので、時計など不要かもしれません。洞窟棲の盲目甲殻類の一種では、リズムが全くないことが証明されています。しかしながら、季節性が皆無というわけではありません。そこに私は目をつけました。
 洞窟環境の微季節性の1つは餌環境の変化です。ホラアナナガコムシは主に動物(コウモリ)の糞や死骸を食べています。これらが洞窟に流入する経路は地下水流または竪穴への落下などです。雪解けや梅雨、洪水などが地上で起これば、それらが洞窟環境に反映します。また、地上の動物の活性に応じて、糞や死骸なども増減するはずです。生殖には非常にたくさんのエネルギーを消費しますから、これら餌環境の変化に合わせた方が合理的ではないでしょうか。
 微季節性を表すもう1つのものは、他の動物との相関関係です。洞窟内には真洞窟性動物のほかに好洞窟性動物と呼ばれる動物が存在します。かれらは一生を洞窟で過ごすわけではないのですが、季節に応じて洞窟に入ってきたりします。コウモリやゲジゲジなどがこれにあたるわけですが、かれらはホラアナナガコムシにとって天敵であり、生物時計をもっています。これら天敵の動物と生活リズムをずらしたほうが生存価は高いように思われます。
 生物時計を律する要因は太陽の光であることは前述しましたが、以上のような二次的要因も生物時計に関与するのではないかと、私は考えます。
 それでは、ホラアナナガコムシに一定の生活リズムが存在すれば、太陽光以外の要因によっても生物時計は律されるということが言えそうです。(概日リズムは温度不依存性を持つということはすでに知られています)

 長々と書いてきましたが、今回の実験で何がしたいかというと、
 ホラアナナガコムシに(概日)リズムが存在する→太陽光以外でも生物時計は律される
 ホラアナナガコムシに(概日)リズムが存在しない→やっぱり太陽光がすべてだ
 という証明になるのではと思います。

 これがわかったからといって、別に何の役にも立ちません(笑)興味本位なのです。知的探究心なのです。



 では、どうやってホラアナナガコムシのリズムを計測するのか?その実験方法が問題になってきます。
 冒頭からこんなこと書くのはどうかと思いますが、実験の精度を高めるのに必要なのは知識とアイディアと努力と金です。うーん、世の中金がものを言いますね。
 まぁ、無い袖は振れない。というわけで、私がこの実験で大学に買ってもらったものは、吸虫管2本とエタノール少々、標本用のラベルとアリ飼育セット1個です。まぁ、1万円も使ってないかと思います。あとはすべて自腹です(泣)。
 本題に入る前にちょっと愚痴ってもいいですか?だいたいねぇ、大学ってのは基礎研究をやるところだと思うんですよ。直接利益には結びつかないかもしれないけど、学生の知的好奇心や探究心をもっと養えるような教育をだねぇ、・・・。ま、独立行政法人化が施行された今年度から、国立大学もいわゆる企業化され、利益を追う研究で覆われてしまうんでしょうねぇ。悲しいことです。もちろんすべてがそうなるとは限りませんが、生き残りをかけて壮絶な戦いが繰り広げられるんでしょうねぇ。
 っと、愚痴終わり。本題に入ります。
 で、国民の税金を無駄遣いできない国王は、自分の財産も余裕が無かったので、いろんな人に善意で協力してもらって、しょぼしょぼな論文を1本書き上げました。実験内容は以下の通りです。

 まず、当たり前ですが、ホラアナナガコムシを捕まえます。捕まえるんですが、その生態も詳しくわかってないので、ある日いた場所に、次の日もいるとは限りません。で、最初は見つけるたびに吸虫管(ガラス瓶にゴム栓とガラス管、チューブがついたもので、口を使って虫を吸い込む道具。作ると安いが、買うと高い。)で吸っては集めて飼っていたんですが、それだと生息場所が異なったりして面倒なことになるので、やめました。そもそもホラアナナガコムシは、主にこうもりの糞を食すので、それならと思い、糞ごとごっそり持って帰りました。言うほど取れなかったんですが、ここで9匹のナガコムシをゲットしました。
 で、飼育観察です。いろいろ考えたんですが、なかなか考えが浮かばず、とりあえず1匹ずつ隔離飼育することにしました。ガラスシャーレを関係各所からお借りして、洞窟の中で飼育するという方法です。もちろん、その洞窟は国有地にありまして、許可をもらって使用しています。その世界では有名な穴です。
 でー、普通ー、動物のリズム測定ってのはー、機械を使うわけなんですがー、予算がー、ないしー、・・・。アクトグラフという機械を使用するのが一般的らしいです。例えば赤外線を使用したものだと、対象動物が赤外線を遮るとそのときの電圧?の変化かなんかが増幅器で増幅され、パソコンに記録されるという仕組みです。簡単なソフトとセットで安価で売っていると噂で聞きましたが、安価言うても1000円とかじゃないしねぇ・・・。他にも実は理由があります。電源がない!とか、湿度が高すぎ!とかです。延長コード引っ張ればできなくもないと思いますが、何十mかは必要になりますし、機械が高湿度(ほぼ100%)に耐えられるか?とか問題です。というわけで諸事情により、人間が直接目視で観察するという超古典的方法でトライしてみました。

 いやぁ、観察自体は非常に簡単で誰でもできますよ。てか、観察者の違いによる誤差を少なくするためにわざわざ簡単にしたんですから。1時間に1回、動いてたか止まってたかを観察するだけ・・・。こんなんでいいんか!!とか思ったりしましたが、他に思いつかんのですわ(いいわけ
 今考えればもっと違った考えもあるんですが、もう直接目視による観察はしたくないのでここでは書きません。
 で、正月明けて4日ほど合宿を組みまして(遅)、有志6人による観察が行われました。6人といっても全員で6人でして、最初は2人でした(悲)。12時間交替みたいなー、カンジー。睡魔に襲われたり、寒くて死にそうだったり大変でした。もちろん、観察時間以外は宿所をお借りしてそこで待機してたわけですが、楽しみは食事と睡眠くらいのものでした。
 観察は(たぶん)滞りなく終了。協力してくれた人に感謝です。帰ってデータの分析に移りました。でもねぇ、こんな実験方法は他に例がないんすよ。真似というか参考にする分析方法がないの。これには困りました。
 結局、自分で勝手に考えました。一応理系なんで、理論的に証明できないとだめですから、それっぽい統計学的手法を用いて分析してみました。



 さて、卒論提出してからもう5ヶ月も経ちました。そして、内容を忘れました(笑)。ああっと、詳しくなくていいですか?いいですよね?はい、いいです。というわけで適当にちゃらっといきたいと思います。
 まず、計測結果を単純に棒グラフで表すと下のようになります。



 縦軸は動いたナガコムシの数、横軸は時間です。なんか波があるように見えますが、これだけではよくわかりません。
 上のグラフはトレンド(時間経過に従い現れる傾向)を含んでいます。リズム計測にトレンドがあるとおかしなことになるのでそれを除去するために一次の階差をとると下のようになります。



 これでさっきよりも周期性があるように見えます。でも何時間周期とかはどうとでもとれる気がしますし、その周期性はたまたま偶然今回の計測でとれたのかもしれません。ではどの時間の周期性が偶然ではなく有意な周期性でしょうか?それを調べるためにコレログラム分析法というのを使います。



 上のグラフでピンクや黄色の線よりも上か下にきている周期は95%の確率で有意であることを示しています。つまり10時間周期と20時間周期が見て取れます。
 これをさらに詳しく解析するのにピリオドグラム分析法というものを使います。



 これもさっきのコレログラムと似ていて、ピンクの波線よりも上側に来ている周期が95%の確率で偶然ではなく有意であることを示しています。つまりどちらかというと10時間周期のようですね。黄色の波線は99%の確率を示します。99%の確率ではどれも偶然に起こりうるということを示し、周期性は無さそうなことがわかります。

 ここで用いた分析法は、統計学の本に載ってますし、いくつかのサイトでも紹介されています。興味がある人は自分で探してください(笑)
 また、グラフが汚いとかタイトルがバラバラだとか詳しい説明が無いとか言わないで下さい(笑)
 専門家が見たら、根拠の無い分析だと言われそうですが、言いたい人はメールとかでひっそりとお願いします。

 まぁまぁ、そんなわけで、この適当な分析から以下の結論が導き出されるのですが、それは次回にとっておきましょう。



 はいきた!ついに最終回(?)です。最終回は力を入れて、今まで微妙に見にくく汚かったグラフをキレイにしてみました。大奮発です(謎)
 さて、卒論提出からもうすぐ10ヶ月・・・、10ヶ月!?もうそんなに経ったんですね。そりゃ内容忘れるはずですよ。久しぶりに卒論関連のファイルを見てみましたが、チンプンカンプンでした(笑)
 前回は確か・・・、そうそう結論を先延ばししてたんでしたね。無意味に引っ張ったわけですね。そうでした、思い出しました。

 で、いきなり結論。

 10時間周期があったらいいんじゃない?根拠は無いけど。

 (≧∇≦)ブハハハ!

 これで単位出たんです。オドロキです。
 まぁ、一応の本当の結論を述べておきますか。
 当時の文章にはこう書かれています。

 「・・・以上の結果から、ホラアナナガコムシは約10時間の活動周期を持つように思われる。しかしながら、その周期性は顕著なものではなく、再度の実験等の必要性を感じる。また、母集団が5匹であるという少なさや、サイクル数の少なさもこの実験の精度を落としている。しかしながら、目視による実験では長時間の観測は実質難しく、アクトグラフなどの機器の導入が望まれる。ただ、湿気対策や電源の確保などの課題も多い。ホラアナナガコムシがもっと楽に飼育できるのならば(例えば室内の実験室で恒温湿機などを使用)格段に容易に実験が行えるだろうが、費用の点から見ても難しい。今後はこのような周辺環境を整備し、もっと単純にもっと科学的に分析が行えるように精進したいと思う。また、この生物リズムの解析を足がかりに、未解明であるホラアナナガコムシの生態なども突き詰めていきたい。」

 だってさ。

 意訳すると、「この先も頑張りますから、今回はこれで勘弁してください」と書いてあります。
 つーわけで、卒論編お・わ・り。

 ちなみに私の卒論はワードで31ページ、16000文字程度でした(図表、写真含)。やる気が感じられませんね。

 次回、卒論発展型は期待しないで下さい。

2004年11月22日 今卒論頑張ってる若者に捧ぐ、駄論文を1ヶ月で書いた男 むしごろう

《参考文献》

「日本産土壌動物 分類のための図解解説」 東海出版会 1999
「平尾台の石灰洞」 1982
「秋吉台の鍾乳洞‐石灰洞の科学‐」 1980 帰水会
「秋吉台の自然観察」 改訂1996 秋吉台科学博物館
「秋吉台3億年」 改訂2000 秋吉台科学博物館
「西秋吉台の石灰洞」 1985
「秋吉台の洞窟」 1989 日本洞窟学会・秋吉台科学博物館他
「秋吉台の洞窟目録と測図集」 1999 山口ケイビングクラブ
「秋吉台の洞窟位置図」 5版、2002年8月、山口ケイビングクラブ
「低周波生物時系列の処理解析システムの開発」 千葉喜彦 1989 山口大学
「生物時計 サーカデアン・リズムの機構」 千葉喜彦 1975 岩波書店
「洞くつの科学 スペレオロジイへの道」 モーア、ニコラス共著 大久保雅弘監訳 1973 築地書館
「からだの中の夜と昼 時間生物学による新しい昼夜観」 千葉喜彦 1996 中公新書
「行動の時間生物学」 井深信男 1990 朝倉書店
「時系列解析」 E.J.ハナン著 細谷雄三訳 1978 培風館
「すぐわかるEXCELによる実験データの解析」 内田治 1999 東京図書
「EXCELでやさしく学ぶ時系列」 石村貞夫、ステファニー・リヒャルト著 2002 東京図書

《参考HP》

URLのみ、リンクは許可とるのめんどいのでしません。現在存在するかどうかもわかりません。英語のページもあります。






  • 上の文章は一般向け(?)にわかりやすく、たまに愚痴や遊び心を入れて書いていますので、実際の論文の内容とは異なる点があります。

  • こういうのって公開していいものなのでしょうか?(笑)。卒論の著作権って大学に帰属するのかな?その辺はわからないので、どこかから文句が出たら、一部または全部が削除されることがあるかもしれません。

  • 質問・疑問などはメールか掲示板へお願いします。できうる限りの質問にはお答えします。ただし、実験に用いた洞窟や協力してくださった関係各所の情報についてはお教えできない可能性があります。ご了承ください。

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