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第5章 進化のビックバン」(2006/06/27 (火) 18:35:33) の最新版変更点

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**(2006年2月27日) 地球の生物史上、とんでもないことが3回おきています。 一つ目はなんといっても生命が発生したことでしょう。 本によると今から35~40億年も前に、生物は発生したと書いてあります。 それまで単なる物質にすぎなかったものが生命をもち、それが現代まで綿々と続いているのです。 前にも書きましたが、物質の集合の確率からすると、それはとんでもない奇跡なのです。 しかもそれが何十億年間もとぎれることなく続いているのです。 なんという生物の偉大さ、不思議さ、そして尊さ、私達は皆等しくこの奇跡の子供なのです。 なによりも命が尊い、こう考えて生きていかなければ、この軌跡の最初の一匹に対して、申し訳がたたないように思えます。 そして二つ目は現代でしょう。 その奇跡の最初の一匹からはるかな時を経て、人間という生物が誕生し、地球の歴史からみるとほんのわずかな間に、素晴らしい文明を築き上げました。 宇宙のはてから素粒子まで、幅広い知識をもち、物質を利用することで他のどんな生物ともまったく異質の生活様式をもつにいたっています。 単なる物質の集合体がここまで進化した奇跡に対し敬意をはらい、人間としての自覚をもち、精一杯生きることが、人間を支えてきている他の生物達への恩返しであり、当然の責務ではないかと考えています。 そして三つ目、つまり発生から現代までの途中でおきた最大の出来事、私は古生代の初めにおきたであろう、進化のビックバンという現象をあげたいと思っています。 **(2006年2月28日) 古生代の初め、今から5~6億年前に生物は驚異的な発展をとげたようです。 それまでの時代にも生物はいたようなのですが、ほとんどめだった化石も発見されていないようです。 それがこの時代を境に一気に豊富な化石が出土するようになり、文字通り生物の時代をむかえることになるのです。 DNA進化という面からも、この時代に一気にいろいろな生物の種が誕生したと考えられているようです。 いったいこの時代になにがおきたのでしょうか? 私はまた素人の勝手な想像で、この時代について書いてみようと思います。 そしてこの時代におきたことは、当然現在の生物の基本にもなっていると思われるので、うまくすればガンの治療法などにも、大きなヒントになるかもしれないという期待をもっています。 生物の基本単位は細胞です。 細胞には代謝し成長をする性質と、分裂し増殖する性質があります。 私は生物の進化のビックバンは、このうちの分裂・増殖に関するシステムが変化したことが原因であると考えています。 システムが変化したことにより、分裂・増殖の能力が大幅にあがり、その結果単細胞生物だけの系では、地球全体の栄養が不足する事態になったのです。 そして分裂・増殖の能力が単細胞生物より劣る多細胞生物が地球の主役になる、その時代が古生代の初めであると思っています。 それを考えるにはやはり遺伝子のことが中心となります。 今までにも何回も書いてきて、その繰り返しになる部分や、今までと変化したり、またこれを書きながらでも変わる部分もあるかもしれません。 今までよりもさらに退屈でわかりにくい文章になるでしょうが、今うっすらと頭の中に浮かんでいることが、これを書くことによって少しでもハッキリしたイメージになればと思い始めることにします。 **(2006年3月6日) まず現在の生物がどのようなシステムで分裂増殖あるいは成長しているかを考えてみましょう。 現在地球には多種多様な生物が住んでいますが、これを分類すると大きく五つにわけることができます。 これを五界説といい、最も一般的な分類方法とされています。 原核単細胞生物界、原生動物界、菌界、植物界、動物界です。 このうちで最も単純なつくりで、それ故最も早くから地球に存在していると考えられるのが、原核単細胞生物です。 彼等はどのようなシステムで分裂増殖、そして代謝成長しているのでしょうか? 私の知識の範囲内で書きますので、間違っていることやたりないことがあったら、ご指摘いただけたら幸いに存じます。 原核単細胞生物には核がありません。 DNAは細胞質中に存在しています。 細胞内小器官もほとんど無く(リボソームだけはあるはずです)大きさも真核細胞の十分の一から百分の一の大きさしかありません。 ちょうどその大きさは真核細胞の細胞内小器官の、ミトコンドリアや葉緑体と同じくらいなので、真核細胞は細胞同士の共生関係によって生まれたと考えられています。 また細胞膜につつまれていて、その膜を通して物質交換をおこなっています。 ちなみに陸上にいる細菌類は、植物細胞のような細胞壁をもっていて、一般に抗生物質とは、この細胞壁を破壊する能力をもっている物質です。 動物細胞には細胞壁がないので、人間が抗生物質を飲んでも直接的な影響がでないため、薬として使うことができるのです。 しかし実際には、腸内細菌など人間にとって必要な細菌も身体の中にいっぱいいるので、これらにも影響を与えることになり、それが副作用としてでてくることになります。 DNAに含まれている情報の量も真核細胞に比べるとかなり少なく、最も小さい生物と考えられている肺炎球菌のマイコプラズマでは、その数は480個といわれています。 つまり最低480個のたんぱく質があれば、生物は成長し・分裂増殖できることになります。 そのマイコプラズマのDNAは環形になっていて、二本鎖になっているのは、真核細胞と同じです。 また同じ情報をもつDNAを2000~3000対も持っているそうです。 真核細胞は2対ですよね。 何故そのように多くのDNAを持っているかというと、純系を回避する意味があるのだそうです。 原核単細胞生物は、分裂でのみ増殖します。 ですから全てがクローン生物であるといえます。 仮に真核細胞のようにDNAが2対くらいしかないとすると、ほとんどの個体のDNAの塩基配列が同じになる確率が非常に高くなります。 少し補足します。 DNAの塩基配列はほとんど正確に写されますが、ごくわずかの確率で必ずミスも生じます。 そのミスをたくさんあるDNAが増幅する効果をもっています。 つまり2対ではミスの数もほんのわずかでしょうが、2000対にもなると、かなりのミスが生じる可能性があるのです。 それをランダムに二つに配分することにより、新しくできる二匹の細胞に差をつける、そういう意味合いを持っています。 **(2006年3月7日) 生物の基本的な性質の一つに進化をするものというのがありますが、原核単細胞生物はこのような方法をとっているのです。 我々の眼からみれば全く同じにしかみえない原核単細胞生物も、彼等の視線にあわせると、一匹一匹個性があるのです。 まさに生物とは、似て非なるものを作り続ける装置なのです。 しかしだからといって、最初に地球上に誕生した原核単細胞生物にも、このようにたくさんのDNAがあったという保障はありません。 真核細胞の遺伝子の情報量は原核細胞に比べると、格段に多くなっています。 これは細胞の大きさや構造からも、当然のことと思われます。 **(2006年3月9日) 多細胞生物ともなるとさらに情報量は増えます。 DNAの長さもそれにつれて長くしていかなければなりません。 そのため真核細胞のDNAは、ヒストンというたんぱく質を軸にまきつくことで、長さをかせぐ工夫をしています。 原核細胞のDNAにはヒストンはありません。 そして真核細胞のDNAには両端があります。 原核細胞と真核細胞のもう一つの大きな違いは、情報部分の遺伝子に、イントロンがあるかないかということです。 原核細胞にはこれがありません。 そして真核細胞のDNAの端っこにはテロメアという部分があります。 以上DNAからみたおおまかな原核細胞と真核細胞の相違点ですが、質的にかなりの違いがあるように思われます。 ですから単純に原核細胞が進化して、真核細胞になったとは考えにくいようです。 原核単細胞生物の中に、古細菌というグループがありますが(化学合成細菌などです) 通説では、はるか昔に古細菌と単細胞生物系に枝分かれし、その古細菌から、真核細胞の祖先がうまれたと考えられているようです。 その真核細胞の祖先と(現在では絶滅していると考えられています)原核単細胞生物の好気性細菌(ミトコンドリア)や藍藻類(葉緑体)などが、共同生活をするようになったものが、現在の真核細胞系の生物の祖先と考えられているようです。 ここで一番大事なことは、生物とは似て非なるものを作り続ける装置だということです。 見た目まったく同じようにみえる原核単細胞生物でも、現在のものと数億年前のものとでは、性質が違っていることも、充分ありえることなのです。 このように質的に違う原核細胞と真核細胞ですが、共通している部分もあります。 それはたんぱく質合成のシステムです。 現在では人間に必要な酵素(インスリンなど)は大腸菌を使って作る技術が、確立されています。 インスリンの遺伝子を大腸菌のDNAの中に組み込んでやると、大腸菌は人間が作るインスリンと全く同じものをね大量生産してくれます。 大腸菌は原核単細胞生物です。 このことから原核細胞と真核細胞のたんぱく質合成のシステムは基本的に同じであると考えることができます。 **(2006年3月10日) ここまでのことから、生物の進化のあらすじを想像することができます。 はるか昔に現在の生物と同じようなたんぱく質合成のシステムをもつ生物ができ、そこから現在の原核細胞の祖先と、真核細胞の祖先に枝分かれしたという考え方です。 たんぱく質合成をする生物――原核細胞の祖先 (始原生物) ――――――――――――真核細胞の祖先(通説では古細菌もふくまれます) ちなみにこの始原生物に分裂増殖の能力があったとはいいきれません。 それはたんぱく質合成をするにはDNA(もしくはRNA)が1本あればできますが、分裂増殖には、それが2本必要だからです。 **(2006年3月11日) 成長するけど繁殖しない生物の系(準生物)を考え、その中で分裂増殖の能力をもったものが始原生物となり、それから現在の生物系が誕生したと考える方が、生物は繁殖するものだと決め付けるよりも考えやすいと思います。 さらにいえば、たんぱく質合成のシステムをもたなくとも、膜に包まれその中で成長(代謝’)をする系も考えることができます。(古準生物)その源となるのが自然現象でできた有機化合物で、それがその当時の海水に多量にふくまれていたミネラルの力を借り(触媒の作用をします)太陽や地球内部からのエネルギーを使い、だんだんと複雑な化学反応をおこなうようになっていったのでしょう。 このような系は当然地球のあちらこちらで、できていたと思います。 その中でより優れたシステムをもったものが、勝ち残っていくのです。 それは現在の生物系と同じシステムであるとは限りません。 現在の生物系と全く違うシステムで、ある程度繁栄しているグループがあっても不思議ではありません。 それらがあるときは戦い、あるときは混ざり合いながら、だんだんと優れたシステムに進化していったのでしょう。 ですからパージェス動物や、エディアカラ動物が現在の生物と同じシステムであったと、完全に決め付けてかかる必要もないと思います。 しかし現在の生物は、細菌からヒトにいたるまで(たぶんウイルスも含めて)みな同じようなたんぱく質合成のシステムをもっています。 そして細胞単位で考えると、みな分裂して増殖する性質をもっています。 **(2006年3月13日) これから現在の生物系の進化の流れを、次のように推測することができます。 化学進化―膜を持つ―たんぱく質合成能力―分裂増殖能力―原核細胞 ………………(古準生物)(準生物)………………(始原生物)………………真核細胞 それではたんぱく質合成能力をもったものが、どのようにして分裂増殖能力をえたかを考えていきましょう。 たんぱく質はアミノ酸が多数結合してできる分子です。 そのアミノ酸の並び順を指定するのが遺伝子です。 たんぱく質は生物体の成分の中で、水に次いで多い分子です。 生物体の構造物質になるとともに、酵素として特定の化学反応をおこさせる機能も持っています。 ですからたんぱく質が決まれば、生物のだいたいの特徴が決まるといっても過言ではないのです。 たんぱく質を合成するには、一本の遺伝子と、その遺伝子とアミノ酸の橋渡しをする物質(tRNA)が最低限必要です。 一本の遺伝子に一つのたんぱく質の情報があるとすると(mRNA)その遺伝子から一種類のたんぱく質を多数作ることが可能です。 たくさんの種類のたんぱく質を作ろうと思ったら、たくさんの種類の遺伝子が必要です。 そのたくさんの種類の遺伝子を一続きにして、しかも構造を丈夫にしたものがDNAです。 つまりたくさんの情報を持つ丈夫なDNAから、一つのたんぱく質の情報を持つmRNAを作り、その情報の順番にアミノ酸との対応を持つtRNAを指定します。 そしてその情報の順番にアミノ酸が結合して、DNAの情報どおりのたんぱく質が作られるわけです。 ところで生物が分裂増殖するためには、成長しなければなりません。 そのために栄養を吸収し、エネルギーを使い、今あるものと同じものを作り出す必要があります。 その要となるのがたんぱく質です。 構造体となるとともに、酵素としての働きで他の物質をあやつるための、化学反応をおこす能力もあるのです。 そして当然のことながら、遺伝子も複製しなければなりません。 元になるDNAを二つにして、新しくできる各々の細胞にわければ、今までと同じたんぱく質が作られるので、だいたい今までと同じ細胞になるという原理です。 **(2006年3月14日) DNAはリン酸と糖と4種類の塩基で構成されています。 4種類の塩基とは、アデニン(A)グアニン(G)シトシン(C)チミン(T)で、この並び順によりどのアミノ酸と対応するかということが決まります。 4種類の塩基にはAはTと、CはGとだけ結合できるという性質があり、それを利用してDNAの複製や、RNAへの合成がおこなわれることになります。 すなわち元になるDNAの塩基の並び順がTGCであれば、それから作られるmRNAはACGになります。 そしてそれはUGC(Uはウラシル、RNAではチミンがウラシルにかわります)の並び順をもつtRNAと結合し、それと対応するアミノ酸がメチオニンという原理です。 ですから元になるTGCの並び順をもつDNAを複製するには、もう一本ACGの並び順をもつDNAが必要になることになります。 この二本のDNAをそれぞれ複製すれば、元と全く同じDNAができることになります。 すなわちこういうことです。(図1) これで元と同じDNAが二組できることになります。 この二組のDNAをそれぞれ新しくできる細胞にわければ、それらはまた同じような反応をするので、だいたい同じようなものになるはずです。 これが生物の分裂増殖の基本原理です。 **(2006年3月17日) 普段はこの二本のDNAは、塩基同士が水素結合により、くっついています。 DNAの複製の時や、mRNAを作る時はこの結合をとかなければなりません。 この水素結合の力はあまり強くなく、だいたい70℃~80℃の温度でその結合はほどけるそうです。 ここから地球上最初の生命は、そのくらいの温度の場所、例えば海底の熱水噴出孔のようなところで、誕生したとも考えられているようです。 現在でもそのくらいの温度のところに生息する、耐熱細菌というものが実際にいます。 もちろん他の生物はその結合をとくのに、酵素を使っていることはいうまでもありません。 これで問題なく、分裂増殖する生物が誕生することになります。 ところがまだ大きな問題が残っているのです。 それはDNAの情報を読む方向です。 例えばT.G.Cと読めばトレオニンになるわけですが、これを逆にC.G.Tと呼んでしまったら、全く別のアミノ酸になってしまいます。(アラニン) 似たようなことで、二本あるどちらのDNAの情報を読むかということも、大切なことです。 T.G.Cからできるアミノ酸とA.C.Gからできるアミノ酸(システィン)も違うことは明らかです。 しかしこの問題はリン酸と糖の結合方法によって、解決されるようになっています。 DNAには方向性があるのです。 DNAは図2のようなかたちでねリン酸と糖と塩基が、多数結合してできる分子です。 DNAの糖はデオキシリボースといい、炭素(C)を5個含んでいます。 そのうち塩基と結合する炭素を①として、時計回りに順番をつけると、リン酸と結合しているのは③と⑤の部分の炭素になります。 DNAの方向は③~⑤で、この方向でのみ情報が読まれるようになっています。 DNAが一本の時はこれで解決です。 ところがDNAが二本になると、もう一方のDNAの向きは反対になることになります。 つまり本当に必要な情報がT.G.Cだとすると、T.G.Cと読む他に、G.C.Aと読むおそれがあることになります。(図3) C.G.TとA.C.GはDNAの向きから、読まれる心配はありません。 なんらかの工夫が必要なようです。 DNAの情報を読むのは、ポリメラーゼをはじめとする酵素群です。 このポリメラーゼがある一定の方向にしか流れない性質があるとすれば、問題は解決するのですが。 逆にいえばDNAに頭と尾の区別があり、尾の方にポリメラーゼをこばむようなものがあるとしても、よいと思います。 それがテロメアであれば尚面白そうなのですが、とりあえずそういうことにして、話を進めていきます。 なんせ大昔の話なのですから、証明することは不可能です。 いろいろなものがいたが、そのような方法をとったものが、現在の生物系になったと考えればいいでしょう。 それでは次に分裂増殖のことを考えていきましょう。 分裂増殖するには、DNAを複製しなければなりません。 歴史的にみて、たんぱく質合成のシステムの方が先にできたと思えるので、今まで考えてきた条件をみたす複製の方法を、考えてみます。 まずT.G.Cの並び順のDNAを複製してみましょう。 T.G.Cと相補的に結合するもう一方のDNAはA.C.Gなので図4のようになります。 この水素結合がほどけ、T.G.C側の複製がおこります。(図5) 新しくできたA,C,Gは回転しながらよそにいき、T.G.CとA.C.Gは再び結合します。 回転したA.C.GはG.C.Aとなり、それが複製されます。 新しくできるC.G.Tの方向は右向きです。(図6) G.C.Aが一周してC.G.Tと結合しようとしますが失敗です。(図7) DNAがこんなに器用に動くものかと思われるかもしれませんが、現在の生物はこれよりさらに複雑な方法で、DNAを複製しています。 それは後述します。 **(2006年3月18日) これは失敗に終わりましたが、この方法で複製できる場合があります。 それはDNAの並び順がC.G.Cなどのように、上から読んでも下から読んでも同じ時(回文)です。 もう一度同じ手順でC.G.Cの場合を試してみましょう。 図8 みごとに成功しました。 DNAの塩基配列が、回文の構造をとっていれば、なんとかこの方法で複製できそうです。 21個の塩基配列でもう一度試してみましょう。 図9 うまくいきました。 私はこれから大胆にも、最初にDNAの複製に成功し、分裂増殖をした生物の塩基配列は、回文の構造をとっていたと推測しました。 もちろん証明することはできません。 しかし状況証拠をいくつかあげることができます。 一つ目は現在の生物のDNAの中にも、回文構造が残っているということです。 もう一つの理由は、現在の生物のやり方よりは、少し簡単そうな気がするのです。 現在の生物のDNAの複製の仕方はとても複雑です。 図10 なんとも複雑怪奇なやり方で、とても私の説明では理解できないでしょうが、とにかくこのような方法で現在の生物はDNAの複製をおこなっています。 ちなみにこのことを発見したのは日本人の科学者だそうです。 私はこれを本で読んだとき、地球上に最初に誕生した生物は、とてもこのような複雑な方法はとれなかったであろうと感じました。 そして何か簡単な方法はないかと思って、回文のことを思いついたのです。 **(2006年3月19日) そしてこれは状況証拠といえるかどうかわかりませんが、少しおもしろいことをみつけました。 現在の生物が3連の塩基で1つのアミノ酸を指定しているのは、もうすでに何度も書いています。 4種類の塩基の3連ですから64通りになります。 それで20種類のアミノ酸に対応させているわけです。 その中で回文の構造をとるのは16通りです。 それを書き出してみましょう。(図11) ちなみに塩基の配列はmRNAの配列です。 ですからTがUになっています。 なんと20種類のアミノ酸のうち、15種類までを特定できるのです。 ダブっているのはC.G.CとA.G.Aのアルギニンだけです。 これは単なる偶然でしょうか? 残っているのはトリプトファン、グルタミン、アスパラギン、アスパラギン酸と、開始記号でもあるメチオニンです。 メチオニンは実際のたんぱく質として使われることはないそうなので除外すると、残り4種類の第一字目はそれぞれU.C.A.Gになります。 仮にトリプトファン、グルタミン、アスパラギン、アスパラギン酸だけで厚生されているたんぱく質があるとすると、それが地球に誕生した、最初のたんぱく質かもしれません。 最初は1文字の塩基とアミノ酸が対応した可能性があるわけです。 そうだとすると1文字の塩基も上から読んでも下から読んでも同じなので、開始記号メチオニンを除く19種類のアミノ酸が、回文の塩基と対応していることになります。 ちなみに終止記号は回文ではありません。メチオニンと組んで、回文構造にはなりませんが・・・ 全てのアミノ酸が回文の塩基で指定できるとなると、DNA全体が回文構造をとるのがだいぶ楽になると思います。 以上のような状況証拠から、私は最初に分裂増殖した生物、つまり始原生物は、回文構造のDNAを持っていたと推測します。 システムが違っていても、できるたんぱく質が同じであれば、現在の生物系と見た目はそれほど変わらないはずです。 しかし分裂速度が遅いことと(DNAを二度読みするので)あまり多くの情報量を持てず(回文構造を維持するのがたいへんだから)身体の構造は単純であったと思われます。 この生物から現在の原核細胞系と真核細胞系にわかれていくのですが、その分岐点になるのは、分裂増殖をメインにするか、成長代謝をメインにするか、ということであったと思います。 分裂増殖をメインに考えれば、自分の身体は小さければ小さいほど、分裂に使うエネルギーも少なくてすみ有利です。 こちらの系の生物は、早くからかなり繁栄することができたと思います。 それに対し代謝成長をメインにした系は、成長するためには、それだけ多くのたんぱく質が必要となり、DNAの情報量も増やす必要があります。 そして分裂に要するエネルギーも大きくなるので、そのための代謝のシステムも複雑化していき、自然身体も大型化していく傾向にあると思います。 こちらの系の生物の発展には、非常に長い時間がかかったと思います。 **(2006年3月21日) ところでDNAの複製は、ある程度の確率でミスが生じるようです。 回文方式の方が、現在の生物のやりかたより簡単なので、ミスする確率は低いと思いますが、それでも全くミスがないとは考えられません。 DNAの複製にミスが生じると、回文構造は崩れてしまいます。例えば ACA.GTG.CCC.GTG.ACAが ACA.GTG.CCC.GTG.TCAになったような場合、どのように直せばよいでしょうか? 単純に考えるとミスしたTをAにもどすか、左から3番目のAをTにかえればよいのですが、生物にとってこれは意外と難しいことなのかもしれません。 もう1つ直す方法があります。それは ACA.GTG.CCC.GTG.TCACT.GTG.CCC.GTG.ACAのように 新たな塩基を加える方法です。 私は成長代謝をメインにした生物は、このような方法をとったのではないかと考えています。 この場合チョット気をつけてほしいのですが、塩基の3連にこだわるとすると、TCAから後は、塩基の回文構造が崩れています。 現在では3連の塩基全てに意味がありますが、この当時はTCAに対するアミノ酸がなかった可能性もあります。 すると全く意味のない塩基配列が出来上がり、しかも意味のない部分の方が多くなっていく傾向があります。 これがイントロンができた理由ではないでしょうか? 分裂をするため回文にこだわるので、無駄な塩基配列が長々とできていってしまったのです。 自然DNAの長さは長くなります。 その中には全くの偶然で、新しい意味を持つ部分が生じる可能性もあります。 このような感じで真核細胞系の生物は、少しずつ成長し、ごくゆっくりとしたペースで分裂増殖していたと思われます。 この時代に長くなったDNAを効率良く収納するために、たんぱく質(ヒストン)にまきつける工夫や、さらに長くなると途中で切れて2本になる、つまり全く違う塩基配列を持つDNAが、複数できる等の変化があったと考えられます。 さてこのように新しいDNAを補充して、回文構造を保つやりかたですが、それほど驚いて複雑な工程ではありません。 一つ一つの塩基の回文構造にはこだわっていません。 この時代にはもうその必要もなくなり、現在と同じようなアミノ酸と延期配列の対応になっていたと考えられるからです。 図⑭ 意外と簡単にできました。 ここで一つ大事なことは、このようなことがおこる細胞は二つに一つであるということです。 元のDNAはそのままで、新たにできたDNAが告ぎの分裂をするために変化をするのです。 この二つに一つという概念は、生物を考えるうえで、非常に重要なものだと思います。 つまり分裂により誕生する二つの細胞のうち、一つは保守的な、もう一つは革新的な性質をもっているということです。 ですから現在でも、耐熱細菌や古細菌のように、非常に古い時代からの生物がいる一方で、複雑に進化した多細胞生物もいるという、バラエティーにとんだ世界になるのです。 二つに一つとは、まさに遺伝と進化という二つの相反する性質を、生物に与えているのです。 さてもう一方の分裂増殖をメインにした系は、DNAの複製ミスに対し、別の対応を容易しました。 それは同じ塩基配列を持つDNAを何組も作ったことです。 **(2006年3月23日) これは細胞分裂をせずに、DNAの複製だけを繰り返せばいいので、わりと簡単な方法だといえます。 こうしてたくさんできたDNAを、分裂の際、母細胞と娘細胞に、ランダムに分配するのです。 DNAがたくさんあるということは、それだけ代謝速度も速くなり、結果分裂に要する時間も短くなることが予想されます。 またたくさんあるDNAをランダムに分配することにより、母細胞と娘細胞で若干の差ができます。 DNAの本数自体にも差ができることも、当然あるでしょう。 このようにしてこちらの系の生物も、進化をしていくわけですが、DNAの長さ、つまり情報の種類としては、あまり増えることにはならないので、質的な大きな変化はみられないと思います。 身体もあまり大きくなることはなく、それが現在に至り、原核単細胞生物界をつくっているのだと思います。 こうして生物化意は大きく二つにわかれていくのですが、細胞という微視的な世界では、我々多細胞生物の巨視的な感覚からは、想像できないようなことも、ままおこるようです。 その一つに細胞同士が融合するという現象があります。 二匹の違う性質を持った細胞が合体し一匹になり、それがまた分裂して二匹になる、その時にはまた性質の違う新しい生物が、誕生していることになります。 このようにして新しい性質を持った生物が多細胞生物も含めた、真核細胞系の生物になっていったと考えられます。 そして進化のビックバンがおこります。 多細胞生物時代の幕開けです。 この時期(古生代の初め)から一気に豊富な化石が出土するようになるのですが、私はこの原因を、真核生物系のDNAの複製方法の変化だと考えています。 **(2006年3月26日) 回文方式から現在の生物がとっている、リーディング鎖とラギング鎖を同時に読む方法に変化したのです。 二本同時に読むのですから、単純に考えて分裂速度は2倍になります。 ところがそれだけではありません。 今までは一本のDNAを一つのポリメラーゼが、端から端まで読んでいました。 そして新たにできたラギング鎖全体が反転して、また一つのポリメラーゼが端から端まで読んだと思います。 ところが元々のラギング鎖に部分的に反転できる能力ができたので、一本のDNAの何箇所からも同時に情報を読むことも可能になってのです。 仮に10箇所その複製開始点があるとすると、DNAの複製の速さは20倍にもなることになります。 当然真核細胞系生物が大繁殖することは予想されます。 しかしそれだけでは、進化のビックバンという現象にはならないと思います。 それ以前はほとんどが単細胞生物だけの世界だったと思われますが、これを境に多細胞生物時代が始まったといってもよいでしょう。 その理由として三つ考えられます。 一つはあまりにも増殖力が強くなりすぎ、単細胞生物だけの系では、栄養不足をおこすことになったのでしょう。 そのためやむをえず細胞同士が共同生活をはじめ、それが多細胞生物化していったと考えられます。 実際粘菌類は、栄養状態がいいときは単細胞、栄養状態が悪くなるとそれが集合して、多細胞化することが知られています。 そして二番目の理由は、DNAの意味のある部分を、増やすことができるようになったということです。 それまでの生物はDNAの回文構造にこだわるあまり、意味のない塩基配列を長々と作ってきました。 それがラギング鎖が読めるようになり、回文構造にこだわる必要がなくなったおかげで、意味のない部分の塩基配列を少し変え、意味をもたせることが容易になりました。 それにより作られるたんぱく質の種類が増えるのですから、身体は大型、複雑化していくでしょう。 また新しい酵素も作られることになるので、誘導される化学反応もより高度なものになり、いろいろな機能を身につけていったと想像されます。 その中には細胞同士の連絡をとるようなものもあり、それが直接的な多細胞化の原因になったと思われます。 こう考えると、エクソンとイントロンの環形も、新しい観点からとらえることができそうです。 すなわちエクソンがあり、その間にイントロンがはさまってきたのではなく、元々がほとんどイントロン部分で、その中に少しずつエクソン部分が増えてきて、より高度な生物に進化しているという見方です。 そうすると生物はまだまだ進化の余地が多く残されていることになります。 ヒトのDNAのエクソン部分はわずか3~5%くらいだそうですので。 そして三つ目の理由は、細胞に寿命ができるようになったということです。 これについてはDNA複製の際の、ラギング鎖のふるまいについて説明しなければなりません。 図12 おわかりいただけるでしょうか? ごらんのようにラギング鎖の最後の部分を、ポリメラーゼは読むことができないのです。 その結果どうなるでしょう? 元々のDNAは当然長さはそのままです。 リーディング鎖はポリメラーゼに全部読まれるので、それからできるラギング鎖の長さもそのままです。 しかしラギング鎖からできるリーディング鎖は、その長さが短くなってしまうのです。 つまりこういうことです。 図13 このように何回かの分裂の後には、DNAがなくなってしまう細胞がでてきます。 それではいずれ生物は滅びる運命にあるのでしょうか? そうではありません。 何回分裂しても、全くDNAの長さが変わらない細胞もあります。 図13で一番上に書かれている差志望は、いつまでたっても元のままです。 このようなサイクルでできる一つの集合体を、新しい生命としてとらえたものが、多細胞生物ということができるでしょう。 集合としては寿命があることになりますが、全くDNAの長さが変わらないものが、また新たな分裂を開始する、そのようなシステムが出来上がってきたのだと思います。 そしてこのDNAの減っていく部分に、あらかじめ特別な塩基配列を用意するようになりました。 テロメアです。 そのテロメアがなくなった時、細胞は分裂能力を失い、寿命を迎えることになるのです。 **(2006年3月31日) このようにラギング鎖が読めるようになった生物は、多細胞化への道がひらかれてきました。 しかしそれはあくまでも、多細胞化の下地ができたということにすぎません。 具体的にどのような機能が備わったら、またどのような条件が整ったら、実際に多細胞生物として、新しいタイプの生命をもつことができるかを考えていかなければなりません。 多細胞生物と単細胞生物の間に、細胞群体という生物があります。 これはある程度多数の細胞が共同生活しているものですが、バラバラにし一つ一つの細胞にすると、そのそれぞれが単細胞生物として、生きていける性質をもっています。 つまり単細胞生物の集合体ということができます。 このような細胞群体も、ある程度大きなかたまりになると、細胞間の働きに分業化がおこってくることがあるそうです。 これは集合体の各所で、環境が違うためにおこる現象でしょう。 同一のDNAをもっていても、各々の細胞をとりまく環境が違えば、当然代謝系に変化がみられるはずです。 だいたい生殖担当の細胞と、栄養担当の細胞にわかれるそうです。 ところで単細胞生物にとっての生殖能力、つまり分裂能力は、生きるための必須条件であるような気がします。 テロメアがなくなり分裂能力を失った単細胞生物に、生きる目的はみあたりません。 ところが集合体としてとらえるとどうでしょう。 分裂能力を失った細胞は、もう分裂をするための代謝をする必要がなくなったということですから、他の能力、つまり成長に関する能力を、最大限に発揮できる細胞ということができそうです。 そして分裂能力のある細胞には、いつでも無限の細胞を作り出せる能力があるのです。 これが多細胞生物のからくりです。 **(2006年4月2日) つまり多細胞生物に必要なのは、一つの分裂能力を持った細胞と、多数の成長するための機能を最大限に活かせる細胞ー機能細胞とよびましょうーであるということができます。 元々単細胞生物だけの系では、栄養が足りなくなるので、やむをえず細胞同士が共同生活を始めたという背景があります。 その不足気味の栄養を最大限に活かすには、それを全ての細胞に平等に分配するのではなく、機能細胞をより早く作るべく、つまりテロメアの数をどんどん減らす方向で分裂する細胞に、優先的に栄養を与えるのが、自然の考え方だと思います。 この生物の個々の細胞には、分裂能力がないので、バラバラにして一匹ずつにしたら生きてはいけないと思います。 この点で明らかに細胞群体とは違う、多細胞生物ということができるでしょう。 そして分裂能力を持った細胞が新たな分裂を始めると、DNAの塩基配列は同じはずですので、また同じような多細胞生物が生まれるはずです。 ここでいう分裂能力を持った細胞というのは、テロメアの数が減っていない細胞と考えるのが、最も自然だとは思いますが、まだいろいろな点で謎が残ります。 まず中途半端にテロメアの減った細胞は、どうなるかということです。 新しい世代の個体を作るには、テロメアが全然減っていない細胞が一つあればできます。 その細胞は次世代のために温存するとして、その他の細胞はテロメアの数が減っています。 その中でもテロメアの減る方向の分裂を優先させると考えましたが、取り残されたテロメアのあまり減らない細胞は、どの段階からでも無限個の細胞を、作る能力があるのです。 そうすると多細胞生物の大きさは無限大になり、寿命もないということになってしまいます。 もちろん他の要因もありますが、人間を例にとると、10cmの人間も10mの人間もいませんし、200年生きた人もいません。 何か根本的な理由で、多細胞生物の大きさと寿命は決まっていると思います。 ここからはまた完全に私の想像です。 **(2006年4月4日) 図14 まずスタートはテロメアが完全にある細胞(仮に10個としましょう)が分裂します。 この時点でテロメアが10ある細胞と9の細胞の二つができます。 このうち10の方は次世代のために温存するとして、9の細胞がこの生物の身体を作るために、使われるとしましょう。 するとこの二つの細胞は性質の違う細胞、つまり機能分化をしたことになります。 今度はテロメア9の細胞が分裂して、9と8の二つの細胞になります。 白血病編で考えたように、このテロメア8の細胞が、分化の方向が決定した細胞になるとしましょう。 この8の細胞が分裂すると、テロメア8と7の二つの細胞になるはずですが、この二つの細胞の将来の運命が同じであれば、(分化の方向が決定しているので)このときの分裂でテロメアの数は短いほうにあわせると仮定します。 するとテロメア7の沿い某が二つできることになります。 この行為自体は、DNAの複製後、整列して、酵素というハサミで長い部分をきればいいのですから、それほど難しいこととも思えません。 それ以降は同じようにテロメアを減らし、テロメアが1になった時に機能細胞になるとします。 仮に体細胞の種類が3種類だとすると、この時点でこの生物の細胞の数は決定します。 すなわち10の細胞が1個と、9の細胞が1個と、192個の体細胞です。 この生物は体細胞に寿命がきたら真でしまうでしょうが、その前に10の細胞か9の細胞が分裂を始めれば、また体細胞の数が192個の生物が生まれることになります。 しかもDNAの塩基配列は同じなのですから、ほとんど同じ姿かたちになるわけです。 192個の体細胞は、次世代に命を伝えることができる細胞のために、一生懸命働いて、寿命がきたら真でしまうのです。 だいぶ多細胞生物らしくなってきました。 ここでちょっと考えておきたいことは、この生物のテロメアの数を一つ増やしたら、体細胞の数は384個になります。 一方体細胞の種類を一つ増やしたら、体細胞の数は256個です。 同じように二つ増やしたら、テロメアの場合は768個、体細胞の種類の方は320個とだんだん差が大きくなってきます。 これから生物の身体の大きさ(体細胞の数)は、テロメアの数に大きく影響されると考えられます。 ガン細胞が検査でみつかる大きさは小豆大くらいで、10億個ほどの細胞のかたまりだそうです。 10億は約2の30乗です。 それに対し、人間の身体は60兆個の細胞からできているといわれています。 60兆は約2の40乗なので、小豆大の生物、例えばアリのテロメアの数が人間のそれより、10個程度少なかったら、私の屁理屈もマンザラではないことになるのですがどうでしょう? とはいっても、実際には白血病編で考えたような、器官系から組織系への階層的な分化や、体細胞の種類が多くなったときのこと、また補充細胞である幹細胞のことも考えなければなりません。 高等な生物のことを説明するには、あまりにも不十分な屁理屈です。 しかしそれらはまた次にゆっくり考えることにして、これから少し進化のことについて考えていきたいと思います。 進化といえばダーウィンの進化論があまりにも有名です。 その頃は獲得形質(その生物が一生の間に経験したこと)が遺伝するかで、大きな論争がありました。 結果は獲得形質は遺伝しないという説が勝利をおさめました。 私の屁理屈もそれを支持することができます。 すなわちまず生殖細胞と体細胞が分化すると考えているので、次世代にその生物が獲得した形質はつたわらないのです。 **(2006年4月6日) 進化とは、生殖細胞が偶然にDNAの塩基配列を変えたことによりのみおこり(突然変異 )その時発現する新しい形質が、環境に適している場合にのみ繁殖するのです(自然淘汰)。 私は白血病編で、細胞の分化は二つに一つの消去法のような形でおこると推測しました。 まずテロメアも完全にあり、分化全能性もある生殖細胞が分裂をします。 この時できる二つの細胞のうち片方は、元々の細胞のDNAがそのまま受け継がれるはずです。 ですからテロメアも完全にあり、分化全能性も残っているはずです。 しかしもう一つの細胞は、ラギング鎖からできるリーディング鎖のDNAが短くなることになるので、テロメアも減り、それに連れ分化全能性も消えると考えました。 その全能性の消え方は、もうこの細胞にはなれない8個の場合ですと生殖細胞)という消去法的な感じです。 進化の原因ともいえるDNAの塩基配列の変化は、DNAの複製の時におこると考えられます。 その変化がおこる確率はテロメアが減る細胞(娘細胞)の方が高くなるはずです。 テロメアの減らない細胞(母細胞)には元のDNAがそのまま受け継がれるはずなのですから。 つまり母細胞は保守的な細胞、娘細胞は革新的な細胞ということができます。 そう考えると、生殖細胞は保守的な細胞ということになり、進化しにくい細胞といえます。 **(2006年4月6日) 多細胞生物は一つの生殖細胞があれば、無限に作れるというのは、先ほど考えました。 これは生殖の方法でいうと、無性生殖になると思います。 しかしその生物が進化するのは、非常に難しいことに思えます。 実際無性生殖をする原始的な生物が、現在でも多く生息しているのは、無限に作れるが進化しにくいという特徴の一つの証拠ではないでしょうか? ですから進化のビックバンということを語るには、有性生殖をする生物のことを考えなければなりません。 つまり進化のビックバンとは、生物がDNAの複製時に、ラギング鎖を読めるようになったことにより、圧倒的な増殖力と、豊富な遺伝情報を持つことが可能になりました。 その結果単細胞生物だけの系では、栄養が不足することになり、それがきっかけで多細胞生物が誕生します。 その多細胞生物が、有性生殖の能力を持ち繁栄するまでの期間をいうと思います。 それが地球の全歴史からみると、ごく短い間に実現したのです。 それを可能にしたのは、それまでの何十億年という長きにわたり、試行錯誤を繰り返しながら、ゆっくりゆっくり繁栄してきた古い生物達です。 彼等を土台にして進化のビックバンという、生物史上最大の出来事がおこったのです。 そして現在では、高等な多細胞生物を中心とした、比較的安定の時期にはいっていると思います。 その時代のつい最近に我々人類が誕生し、文明という全く新たな大変革をおこしています。 この大変革が地球上の全ての生物にとって、いい方向に向かうようにするのが、我々人間の当然の責務だと思うのですが、どうでしょう? 次章では、この有性生殖をする高等な生物の、生から死までを考えていきたいと思っています。
**(2006年2月27日) 地球の生物史上、とんでもないことが3回おきています。 一つ目はなんといっても生命が発生したことでしょう。 本によると今から35~40億年も前に、生物は発生したと書いてあります。 それまで単なる物質にすぎなかったものが生命をもち、それが現代まで綿々と続いているのです。 前にも書きましたが、物質の集合の確率からすると、それはとんでもない奇跡なのです。 しかもそれが何十億年間もとぎれることなく続いているのです。 なんという生物の偉大さ、不思議さ、そして尊さ、私達は皆等しくこの奇跡の子供なのです。 なによりも命が尊い、こう考えて生きていかなければ、この軌跡の最初の一匹に対して、申し訳がたたないように思えます。 そして二つ目は現代でしょう。 その奇跡の最初の一匹からはるかな時を経て、人間という生物が誕生し、地球の歴史からみるとほんのわずかな間に、素晴らしい文明を築き上げました。 宇宙のはてから素粒子まで、幅広い知識をもち、物質を利用することで他のどんな生物ともまったく異質の生活様式をもつにいたっています。 単なる物質の集合体がここまで進化した奇跡に対し敬意をはらい、人間としての自覚をもち、精一杯生きることが、人間を支えてきている他の生物達への恩返しであり、当然の責務ではないかと考えています。 そして三つ目、つまり発生から現代までの途中でおきた最大の出来事、私は古生代の初めにおきたであろう、進化のビックバンという現象をあげたいと思っています。 **(2006年2月28日) 古生代の初め、今から5~6億年前に生物は驚異的な発展をとげたようです。 それまでの時代にも生物はいたようなのですが、ほとんどめだった化石も発見されていないようです。 それがこの時代を境に一気に豊富な化石が出土するようになり、文字通り生物の時代をむかえることになるのです。 DNA進化という面からも、この時代に一気にいろいろな生物の種が誕生したと考えられているようです。 いったいこの時代になにがおきたのでしょうか? 私はまた素人の勝手な想像で、この時代について書いてみようと思います。 そしてこの時代におきたことは、当然現在の生物の基本にもなっていると思われるので、うまくすればガンの治療法などにも、大きなヒントになるかもしれないという期待をもっています。 生物の基本単位は細胞です。 細胞には代謝し成長をする性質と、分裂し増殖する性質があります。 私は生物の進化のビックバンは、このうちの分裂・増殖に関するシステムが変化したことが原因であると考えています。 システムが変化したことにより、分裂・増殖の能力が大幅にあがり、その結果単細胞生物だけの系では、地球全体の栄養が不足する事態になったのです。 そして分裂・増殖の能力が単細胞生物より劣る多細胞生物が地球の主役になる、その時代が古生代の初めであると思っています。 それを考えるにはやはり遺伝子のことが中心となります。 今までにも何回も書いてきて、その繰り返しになる部分や、今までと変化したり、またこれを書きながらでも変わる部分もあるかもしれません。 今までよりもさらに退屈でわかりにくい文章になるでしょうが、今うっすらと頭の中に浮かんでいることが、これを書くことによって少しでもハッキリしたイメージになればと思い始めることにします。 **(2006年3月6日) まず現在の生物がどのようなシステムで分裂増殖あるいは成長しているかを考えてみましょう。 現在地球には多種多様な生物が住んでいますが、これを分類すると大きく五つにわけることができます。 これを五界説といい、最も一般的な分類方法とされています。 原核単細胞生物界、原生動物界、菌界、植物界、動物界です。 このうちで最も単純なつくりで、それ故最も早くから地球に存在していると考えられるのが、原核単細胞生物です。 彼等はどのようなシステムで分裂増殖、そして代謝成長しているのでしょうか? 私の知識の範囲内で書きますので、間違っていることやたりないことがあったら、ご指摘いただけたら幸いに存じます。 原核単細胞生物には核がありません。 DNAは細胞質中に存在しています。 細胞内小器官もほとんど無く(リボソームだけはあるはずです)大きさも真核細胞の十分の一から百分の一の大きさしかありません。 ちょうどその大きさは真核細胞の細胞内小器官の、ミトコンドリアや葉緑体と同じくらいなので、真核細胞は細胞同士の共生関係によって生まれたと考えられています。 また細胞膜につつまれていて、その膜を通して物質交換をおこなっています。 ちなみに陸上にいる細菌類は、植物細胞のような細胞壁をもっていて、一般に抗生物質とは、この細胞壁を破壊する能力をもっている物質です。 動物細胞には細胞壁がないので、人間が抗生物質を飲んでも直接的な影響がでないため、薬として使うことができるのです。 しかし実際には、腸内細菌など人間にとって必要な細菌も身体の中にいっぱいいるので、これらにも影響を与えることになり、それが副作用としてでてくることになります。 DNAに含まれている情報の量も真核細胞に比べるとかなり少なく、最も小さい生物と考えられている肺炎球菌のマイコプラズマでは、その数は480個といわれています。 つまり最低480個のたんぱく質があれば、生物は成長し・分裂増殖できることになります。 そのマイコプラズマのDNAは環形になっていて、二本鎖になっているのは、真核細胞と同じです。 また同じ情報をもつDNAを2000~3000対も持っているそうです。 真核細胞は2対ですよね。 何故そのように多くのDNAを持っているかというと、純系を回避する意味があるのだそうです。 原核単細胞生物は、分裂でのみ増殖します。 ですから全てがクローン生物であるといえます。 仮に真核細胞のようにDNAが2対くらいしかないとすると、ほとんどの個体のDNAの塩基配列が同じになる確率が非常に高くなります。 少し補足します。 DNAの塩基配列はほとんど正確に写されますが、ごくわずかの確率で必ずミスも生じます。 そのミスをたくさんあるDNAが増幅する効果をもっています。 つまり2対ではミスの数もほんのわずかでしょうが、2000対にもなると、かなりのミスが生じる可能性があるのです。 それをランダムに二つに配分することにより、新しくできる二匹の細胞に差をつける、そういう意味合いを持っています。 **(2006年3月7日) 生物の基本的な性質の一つに進化をするものというのがありますが、原核単細胞生物はこのような方法をとっているのです。 我々の眼からみれば全く同じにしかみえない原核単細胞生物も、彼等の視線にあわせると、一匹一匹個性があるのです。 まさに生物とは、似て非なるものを作り続ける装置なのです。 しかしだからといって、最初に地球上に誕生した原核単細胞生物にも、このようにたくさんのDNAがあったという保障はありません。 真核細胞の遺伝子の情報量は原核細胞に比べると、格段に多くなっています。 これは細胞の大きさや構造からも、当然のことと思われます。 **(2006年3月9日) 多細胞生物ともなるとさらに情報量は増えます。 DNAの長さもそれにつれて長くしていかなければなりません。 そのため真核細胞のDNAは、ヒストンというたんぱく質を軸にまきつくことで、長さをかせぐ工夫をしています。 原核細胞のDNAにはヒストンはありません。 そして真核細胞のDNAには両端があります。 原核細胞と真核細胞のもう一つの大きな違いは、情報部分の遺伝子に、イントロンがあるかないかということです。 原核細胞にはこれがありません。 そして真核細胞のDNAの端っこにはテロメアという部分があります。 以上DNAからみたおおまかな原核細胞と真核細胞の相違点ですが、質的にかなりの違いがあるように思われます。 ですから単純に原核細胞が進化して、真核細胞になったとは考えにくいようです。 原核単細胞生物の中に、古細菌というグループがありますが(化学合成細菌などです) 通説では、はるか昔に古細菌と単細胞生物系に枝分かれし、その古細菌から、真核細胞の祖先がうまれたと考えられているようです。 その真核細胞の祖先と(現在では絶滅していると考えられています)原核単細胞生物の好気性細菌(ミトコンドリア)や藍藻類(葉緑体)などが、共同生活をするようになったものが、現在の真核細胞系の生物の祖先と考えられているようです。 ここで一番大事なことは、生物とは似て非なるものを作り続ける装置だということです。 見た目まったく同じようにみえる原核単細胞生物でも、現在のものと数億年前のものとでは、性質が違っていることも、充分ありえることなのです。 このように質的に違う原核細胞と真核細胞ですが、共通している部分もあります。 それはたんぱく質合成のシステムです。 現在では人間に必要な酵素(インスリンなど)は大腸菌を使って作る技術が、確立されています。 インスリンの遺伝子を大腸菌のDNAの中に組み込んでやると、大腸菌は人間が作るインスリンと全く同じものをね大量生産してくれます。 大腸菌は原核単細胞生物です。 このことから原核細胞と真核細胞のたんぱく質合成のシステムは基本的に同じであると考えることができます。 **(2006年3月10日) ここまでのことから、生物の進化のあらすじを想像することができます。 はるか昔に現在の生物と同じようなたんぱく質合成のシステムをもつ生物ができ、そこから現在の原核細胞の祖先と、真核細胞の祖先に枝分かれしたという考え方です。 たんぱく質合成をする生物――原核細胞の祖先 (始原生物) ――――――――――――真核細胞の祖先(通説では古細菌もふくまれます) ちなみにこの始原生物に分裂増殖の能力があったとはいいきれません。 それはたんぱく質合成をするにはDNA(もしくはRNA)が1本あればできますが、分裂増殖には、それが2本必要だからです。 **(2006年3月11日) 成長するけど繁殖しない生物の系(準生物)を考え、その中で分裂増殖の能力をもったものが始原生物となり、それから現在の生物系が誕生したと考える方が、生物は繁殖するものだと決め付けるよりも考えやすいと思います。 さらにいえば、たんぱく質合成のシステムをもたなくとも、膜に包まれその中で成長(代謝’)をする系も考えることができます。(古準生物)その源となるのが自然現象でできた有機化合物で、それがその当時の海水に多量にふくまれていたミネラルの力を借り(触媒の作用をします)太陽や地球内部からのエネルギーを使い、だんだんと複雑な化学反応をおこなうようになっていったのでしょう。 このような系は当然地球のあちらこちらで、できていたと思います。 その中でより優れたシステムをもったものが、勝ち残っていくのです。 それは現在の生物系と同じシステムであるとは限りません。 現在の生物系と全く違うシステムで、ある程度繁栄しているグループがあっても不思議ではありません。 それらがあるときは戦い、あるときは混ざり合いながら、だんだんと優れたシステムに進化していったのでしょう。 ですからパージェス動物や、エディアカラ動物が現在の生物と同じシステムであったと、完全に決め付けてかかる必要もないと思います。 しかし現在の生物は、細菌からヒトにいたるまで(たぶんウイルスも含めて)みな同じようなたんぱく質合成のシステムをもっています。 そして細胞単位で考えると、みな分裂して増殖する性質をもっています。 **(2006年3月13日) これから現在の生物系の進化の流れを、次のように推測することができます。 化学進化―膜を持つ―たんぱく質合成能力―分裂増殖能力―原核細胞 ………………(古準生物)(準生物)………………(始原生物)………………真核細胞 それではたんぱく質合成能力をもったものが、どのようにして分裂増殖能力をえたかを考えていきましょう。 たんぱく質はアミノ酸が多数結合してできる分子です。 そのアミノ酸の並び順を指定するのが遺伝子です。 たんぱく質は生物体の成分の中で、水に次いで多い分子です。 生物体の構造物質になるとともに、酵素として特定の化学反応をおこさせる機能も持っています。 ですからたんぱく質が決まれば、生物のだいたいの特徴が決まるといっても過言ではないのです。 たんぱく質を合成するには、一本の遺伝子と、その遺伝子とアミノ酸の橋渡しをする物質(tRNA)が最低限必要です。 一本の遺伝子に一つのたんぱく質の情報があるとすると(mRNA)その遺伝子から一種類のたんぱく質を多数作ることが可能です。 たくさんの種類のたんぱく質を作ろうと思ったら、たくさんの種類の遺伝子が必要です。 そのたくさんの種類の遺伝子を一続きにして、しかも構造を丈夫にしたものがDNAです。 つまりたくさんの情報を持つ丈夫なDNAから、一つのたんぱく質の情報を持つmRNAを作り、その情報の順番にアミノ酸との対応を持つtRNAを指定します。 そしてその情報の順番にアミノ酸が結合して、DNAの情報どおりのたんぱく質が作られるわけです。 ところで生物が分裂増殖するためには、成長しなければなりません。 そのために栄養を吸収し、エネルギーを使い、今あるものと同じものを作り出す必要があります。 その要となるのがたんぱく質です。 構造体となるとともに、酵素としての働きで他の物質をあやつるための、化学反応をおこす能力もあるのです。 そして当然のことながら、遺伝子も複製しなければなりません。 元になるDNAを二つにして、新しくできる各々の細胞にわければ、今までと同じたんぱく質が作られるので、だいたい今までと同じ細胞になるという原理です。 **(2006年3月14日) DNAはリン酸と糖と4種類の塩基で構成されています。 4種類の塩基とは、アデニン(A)グアニン(G)シトシン(C)チミン(T)で、この並び順によりどのアミノ酸と対応するかということが決まります。 4種類の塩基にはAはTと、CはGとだけ結合できるという性質があり、それを利用してDNAの複製や、RNAへの合成がおこなわれることになります。 すなわち元になるDNAの塩基の並び順がTGCであれば、それから作られるmRNAはACGになります。 そしてそれはUGC(Uはウラシル、RNAではチミンがウラシルにかわります)の並び順をもつtRNAと結合し、それと対応するアミノ酸がメチオニンという原理です。 ですから元になるTGCの並び順をもつDNAを複製するには、もう一本ACGの並び順をもつDNAが必要になることになります。 この二本のDNAをそれぞれ複製すれば、元と全く同じDNAができることになります。 すなわちこういうことです。(図1) これで元と同じDNAが二組できることになります。 この二組のDNAをそれぞれ新しくできる細胞にわければ、それらはまた同じような反応をするので、だいたい同じようなものになるはずです。 これが生物の分裂増殖の基本原理です。 **(2006年3月17日) 普段はこの二本のDNAは、塩基同士が水素結合により、くっついています。 DNAの複製の時や、mRNAを作る時はこの結合をとかなければなりません。 この水素結合の力はあまり強くなく、だいたい70℃~80℃の温度でその結合はほどけるそうです。 ここから地球上最初の生命は、そのくらいの温度の場所、例えば海底の熱水噴出孔のようなところで、誕生したとも考えられているようです。 現在でもそのくらいの温度のところに生息する、耐熱細菌というものが実際にいます。 もちろん他の生物はその結合をとくのに、酵素を使っていることはいうまでもありません。 これで問題なく、分裂増殖する生物が誕生することになります。 ところがまだ大きな問題が残っているのです。 それはDNAの情報を読む方向です。 例えばT.G.Cと読めばトレオニンになるわけですが、これを逆にC.G.Tと呼んでしまったら、全く別のアミノ酸になってしまいます。(アラニン) 似たようなことで、二本あるどちらのDNAの情報を読むかということも、大切なことです。 T.G.Cからできるアミノ酸とA.C.Gからできるアミノ酸(システィン)も違うことは明らかです。 しかしこの問題はリン酸と糖の結合方法によって、解決されるようになっています。 DNAには方向性があるのです。 DNAは図2のようなかたちでねリン酸と糖と塩基が、多数結合してできる分子です。 DNAの糖はデオキシリボースといい、炭素(C)を5個含んでいます。 そのうち塩基と結合する炭素を①として、時計回りに順番をつけると、リン酸と結合しているのは③と⑤の部分の炭素になります。 DNAの方向は③~⑤で、この方向でのみ情報が読まれるようになっています。 DNAが一本の時はこれで解決です。 ところがDNAが二本になると、もう一方のDNAの向きは反対になることになります。 つまり本当に必要な情報がT.G.Cだとすると、T.G.Cと読む他に、G.C.Aと読むおそれがあることになります。(図3) C.G.TとA.C.GはDNAの向きから、読まれる心配はありません。 なんらかの工夫が必要なようです。 DNAの情報を読むのは、ポリメラーゼをはじめとする酵素群です。 このポリメラーゼがある一定の方向にしか流れない性質があるとすれば、問題は解決するのですが。 逆にいえばDNAに頭と尾の区別があり、尾の方にポリメラーゼをこばむようなものがあるとしても、よいと思います。 それがテロメアであれば尚面白そうなのですが、とりあえずそういうことにして、話を進めていきます。 なんせ大昔の話なのですから、証明することは不可能です。 いろいろなものがいたが、そのような方法をとったものが、現在の生物系になったと考えればいいでしょう。 それでは次に分裂増殖のことを考えていきましょう。 分裂増殖するには、DNAを複製しなければなりません。 歴史的にみて、たんぱく質合成のシステムの方が先にできたと思えるので、今まで考えてきた条件をみたす複製の方法を、考えてみます。 まずT.G.Cの並び順のDNAを複製してみましょう。 T.G.Cと相補的に結合するもう一方のDNAはA.C.Gなので図4のようになります。 この水素結合がほどけ、T.G.C側の複製がおこります。(図5) 新しくできたA,C,Gは回転しながらよそにいき、T.G.CとA.C.Gは再び結合します。 回転したA.C.GはG.C.Aとなり、それが複製されます。 新しくできるC.G.Tの方向は右向きです。(図6) G.C.Aが一周してC.G.Tと結合しようとしますが失敗です。(図7) DNAがこんなに器用に動くものかと思われるかもしれませんが、現在の生物はこれよりさらに複雑な方法で、DNAを複製しています。 それは後述します。 **(2006年3月18日) これは失敗に終わりましたが、この方法で複製できる場合があります。 それはDNAの並び順がC.G.Cなどのように、上から読んでも下から読んでも同じ時(回文)です。 もう一度同じ手順でC.G.Cの場合を試してみましょう。 図8 みごとに成功しました。 DNAの塩基配列が、回文の構造をとっていれば、なんとかこの方法で複製できそうです。 21個の塩基配列でもう一度試してみましょう。 図9 うまくいきました。 私はこれから大胆にも、最初にDNAの複製に成功し、分裂増殖をした生物の塩基配列は、回文の構造をとっていたと推測しました。 もちろん証明することはできません。 しかし状況証拠をいくつかあげることができます。 一つ目は現在の生物のDNAの中にも、回文構造が残っているということです。 もう一つの理由は、現在の生物のやり方よりは、少し簡単そうな気がするのです。 現在の生物のDNAの複製の仕方はとても複雑です。 図10 なんとも複雑怪奇なやり方で、とても私の説明では理解できないでしょうが、とにかくこのような方法で現在の生物はDNAの複製をおこなっています。 ちなみにこのことを発見したのは日本人の科学者だそうです。 私はこれを本で読んだとき、地球上に最初に誕生した生物は、とてもこのような複雑な方法はとれなかったであろうと感じました。 そして何か簡単な方法はないかと思って、回文のことを思いついたのです。 **(2006年3月19日) そしてこれは状況証拠といえるかどうかわかりませんが、少しおもしろいことをみつけました。 現在の生物が3連の塩基で1つのアミノ酸を指定しているのは、もうすでに何度も書いています。 4種類の塩基の3連ですから64通りになります。 それで20種類のアミノ酸に対応させているわけです。 その中で回文の構造をとるのは16通りです。 それを書き出してみましょう。(図11) ちなみに塩基の配列はmRNAの配列です。 ですからTがUになっています。 なんと20種類のアミノ酸のうち、15種類までを特定できるのです。 ダブっているのはC.G.CとA.G.Aのアルギニンだけです。 これは単なる偶然でしょうか? 残っているのはトリプトファン、グルタミン、アスパラギン、アスパラギン酸と、開始記号でもあるメチオニンです。 メチオニンは実際のたんぱく質として使われることはないそうなので除外すると、残り4種類の第一字目はそれぞれU.C.A.Gになります。 仮にトリプトファン、グルタミン、アスパラギン、アスパラギン酸だけで厚生されているたんぱく質があるとすると、それが地球に誕生した、最初のたんぱく質かもしれません。 最初は1文字の塩基とアミノ酸が対応した可能性があるわけです。 そうだとすると1文字の塩基も上から読んでも下から読んでも同じなので、開始記号メチオニンを除く19種類のアミノ酸が、回文の塩基と対応していることになります。 ちなみに終止記号は回文ではありません。メチオニンと組んで、回文構造にはなりませんが・・・ 全てのアミノ酸が回文の塩基で指定できるとなると、DNA全体が回文構造をとるのがだいぶ楽になると思います。 以上のような状況証拠から、私は最初に分裂増殖した生物、つまり始原生物は、回文構造のDNAを持っていたと推測します。 システムが違っていても、できるたんぱく質が同じであれば、現在の生物系と見た目はそれほど変わらないはずです。 しかし分裂速度が遅いことと(DNAを二度読みするので)あまり多くの情報量を持てず(回文構造を維持するのがたいへんだから)身体の構造は単純であったと思われます。 この生物から現在の原核細胞系と真核細胞系にわかれていくのですが、その分岐点になるのは、分裂増殖をメインにするか、成長代謝をメインにするか、ということであったと思います。 分裂増殖をメインに考えれば、自分の身体は小さければ小さいほど、分裂に使うエネルギーも少なくてすみ有利です。 こちらの系の生物は、早くからかなり繁栄することができたと思います。 それに対し代謝成長をメインにした系は、成長するためには、それだけ多くのたんぱく質が必要となり、DNAの情報量も増やす必要があります。 そして分裂に要するエネルギーも大きくなるので、そのための代謝のシステムも複雑化していき、自然身体も大型化していく傾向にあると思います。 こちらの系の生物の発展には、非常に長い時間がかかったと思います。 **(2006年3月21日) ところでDNAの複製は、ある程度の確率でミスが生じるようです。 回文方式の方が、現在の生物のやりかたより簡単なので、ミスする確率は低いと思いますが、それでも全くミスがないとは考えられません。 DNAの複製にミスが生じると、回文構造は崩れてしまいます。例えば ACA.GTG.CCC.GTG.ACAが ACA.GTG.CCC.GTG.TCAになったような場合、どのように直せばよいでしょうか? 単純に考えるとミスしたTをAにもどすか、左から3番目のAをTにかえればよいのですが、生物にとってこれは意外と難しいことなのかもしれません。 もう1つ直す方法があります。それは ACA.GTG.CCC.GTG.TCACT.GTG.CCC.GTG.ACAのように 新たな塩基を加える方法です。 私は成長代謝をメインにした生物は、このような方法をとったのではないかと考えています。 この場合チョット気をつけてほしいのですが、塩基の3連にこだわるとすると、TCAから後は、塩基の回文構造が崩れています。 現在では3連の塩基全てに意味がありますが、この当時はTCAに対するアミノ酸がなかった可能性もあります。 すると全く意味のない塩基配列が出来上がり、しかも意味のない部分の方が多くなっていく傾向があります。 これがイントロンができた理由ではないでしょうか? 分裂をするため回文にこだわるので、無駄な塩基配列が長々とできていってしまったのです。 自然DNAの長さは長くなります。 その中には全くの偶然で、新しい意味を持つ部分が生じる可能性もあります。 このような感じで真核細胞系の生物は、少しずつ成長し、ごくゆっくりとしたペースで分裂増殖していたと思われます。 この時代に長くなったDNAを効率良く収納するために、たんぱく質(ヒストン)にまきつける工夫や、さらに長くなると途中で切れて2本になる、つまり全く違う塩基配列を持つDNAが、複数できる等の変化があったと考えられます。 さてこのように新しいDNAを補充して、回文構造を保つやりかたですが、それほど驚いて複雑な工程ではありません。 一つ一つの塩基の回文構造にはこだわっていません。 この時代にはもうその必要もなくなり、現在と同じようなアミノ酸と延期配列の対応になっていたと考えられるからです。 図⑭ 意外と簡単にできました。 ここで一つ大事なことは、このようなことがおこる細胞は二つに一つであるということです。 元のDNAはそのままで、新たにできたDNAが告ぎの分裂をするために変化をするのです。 この二つに一つという概念は、生物を考えるうえで、非常に重要なものだと思います。 つまり分裂により誕生する二つの細胞のうち、一つは保守的な、もう一つは革新的な性質をもっているということです。 ですから現在でも、耐熱細菌や古細菌のように、非常に古い時代からの生物がいる一方で、複雑に進化した多細胞生物もいるという、バラエティーにとんだ世界になるのです。 二つに一つとは、まさに遺伝と進化という二つの相反する性質を、生物に与えているのです。 さてもう一方の分裂増殖をメインにした系は、DNAの複製ミスに対し、別の対応を容易しました。 それは同じ塩基配列を持つDNAを何組も作ったことです。 **(2006年3月23日) これは細胞分裂をせずに、DNAの複製だけを繰り返せばいいので、わりと簡単な方法だといえます。 こうしてたくさんできたDNAを、分裂の際、母細胞と娘細胞に、ランダムに分配するのです。 DNAがたくさんあるということは、それだけ代謝速度も速くなり、結果分裂に要する時間も短くなることが予想されます。 またたくさんあるDNAをランダムに分配することにより、母細胞と娘細胞で若干の差ができます。 DNAの本数自体にも差ができることも、当然あるでしょう。 このようにしてこちらの系の生物も、進化をしていくわけですが、DNAの長さ、つまり情報の種類としては、あまり増えることにはならないので、質的な大きな変化はみられないと思います。 身体もあまり大きくなることはなく、それが現在に至り、原核単細胞生物界をつくっているのだと思います。 こうして生物化意は大きく二つにわかれていくのですが、細胞という微視的な世界では、我々多細胞生物の巨視的な感覚からは、想像できないようなことも、ままおこるようです。 その一つに細胞同士が融合するという現象があります。 二匹の違う性質を持った細胞が合体し一匹になり、それがまた分裂して二匹になる、その時にはまた性質の違う新しい生物が、誕生していることになります。 このようにして新しい性質を持った生物が多細胞生物も含めた、真核細胞系の生物になっていったと考えられます。 そして進化のビックバンがおこります。 多細胞生物時代の幕開けです。 この時期(古生代の初め)から一気に豊富な化石が出土するようになるのですが、私はこの原因を、真核生物系のDNAの複製方法の変化だと考えています。 **(2006年3月26日) 回文方式から現在の生物がとっている、リーディング鎖とラギング鎖を同時に読む方法に変化したのです。 二本同時に読むのですから、単純に考えて分裂速度は2倍になります。 ところがそれだけではありません。 今までは一本のDNAを一つのポリメラーゼが、端から端まで読んでいました。 そして新たにできたラギング鎖全体が反転して、また一つのポリメラーゼが端から端まで読んだと思います。 ところが元々のラギング鎖に部分的に反転できる能力ができたので、一本のDNAの何箇所からも同時に情報を読むことも可能になってのです。 仮に10箇所その複製開始点があるとすると、DNAの複製の速さは20倍にもなることになります。 当然真核細胞系生物が大繁殖することは予想されます。 しかしそれだけでは、進化のビックバンという現象にはならないと思います。 それ以前はほとんどが単細胞生物だけの世界だったと思われますが、これを境に多細胞生物時代が始まったといってもよいでしょう。 その理由として三つ考えられます。 一つはあまりにも増殖力が強くなりすぎ、単細胞生物だけの系では、栄養不足をおこすことになったのでしょう。 そのためやむをえず細胞同士が共同生活をはじめ、それが多細胞生物化していったと考えられます。 実際粘菌類は、栄養状態がいいときは単細胞、栄養状態が悪くなるとそれが集合して、多細胞化することが知られています。 そして二番目の理由は、DNAの意味のある部分を、増やすことができるようになったということです。 それまでの生物はDNAの回文構造にこだわるあまり、意味のない塩基配列を長々と作ってきました。 それがラギング鎖が読めるようになり、回文構造にこだわる必要がなくなったおかげで、意味のない部分の塩基配列を少し変え、意味をもたせることが容易になりました。 それにより作られるたんぱく質の種類が増えるのですから、身体は大型、複雑化していくでしょう。 また新しい酵素も作られることになるので、誘導される化学反応もより高度なものになり、いろいろな機能を身につけていったと想像されます。 その中には細胞同士の連絡をとるようなものもあり、それが直接的な多細胞化の原因になったと思われます。 こう考えると、エクソンとイントロンの環形も、新しい観点からとらえることができそうです。 すなわちエクソンがあり、その間にイントロンがはさまってきたのではなく、元々がほとんどイントロン部分で、その中に少しずつエクソン部分が増えてきて、より高度な生物に進化しているという見方です。 そうすると生物はまだまだ進化の余地が多く残されていることになります。 ヒトのDNAのエクソン部分はわずか3~5%くらいだそうですので。 そして三つ目の理由は、細胞に寿命ができるようになったということです。 これについてはDNA複製の際の、ラギング鎖のふるまいについて説明しなければなりません。 図12 おわかりいただけるでしょうか? ごらんのようにラギング鎖の最後の部分を、ポリメラーゼは読むことができないのです。 その結果どうなるでしょう? 元々のDNAは当然長さはそのままです。 リーディング鎖はポリメラーゼに全部読まれるので、それからできるラギング鎖の長さもそのままです。 しかしラギング鎖からできるリーディング鎖は、その長さが短くなってしまうのです。 つまりこういうことです。 図13 このように何回かの分裂の後には、DNAがなくなってしまう細胞がでてきます。 それではいずれ生物は滅びる運命にあるのでしょうか? そうではありません。 何回分裂しても、全くDNAの長さが変わらない細胞もあります。 図13で一番上に書かれている差志望は、いつまでたっても元のままです。 このようなサイクルでできる一つの集合体を、新しい生命としてとらえたものが、多細胞生物ということができるでしょう。 集合としては寿命があることになりますが、全くDNAの長さが変わらないものが、また新たな分裂を開始する、そのようなシステムが出来上がってきたのだと思います。 そしてこのDNAの減っていく部分に、あらかじめ特別な塩基配列を用意するようになりました。 テロメアです。 そのテロメアがなくなった時、細胞は分裂能力を失い、寿命を迎えることになるのです。 **(2006年3月31日) このようにラギング鎖が読めるようになった生物は、多細胞化への道がひらかれてきました。 しかしそれはあくまでも、多細胞化の下地ができたということにすぎません。 具体的にどのような機能が備わったら、またどのような条件が整ったら、実際に多細胞生物として、新しいタイプの生命をもつことができるかを考えていかなければなりません。 多細胞生物と単細胞生物の間に、細胞群体という生物があります。 これはある程度多数の細胞が共同生活しているものですが、バラバラにし一つ一つの細胞にすると、そのそれぞれが単細胞生物として、生きていける性質をもっています。 つまり単細胞生物の集合体ということができます。 このような細胞群体も、ある程度大きなかたまりになると、細胞間の働きに分業化がおこってくることがあるそうです。 これは集合体の各所で、環境が違うためにおこる現象でしょう。 同一のDNAをもっていても、各々の細胞をとりまく環境が違えば、当然代謝系に変化がみられるはずです。 だいたい生殖担当の細胞と、栄養担当の細胞にわかれるそうです。 ところで単細胞生物にとっての生殖能力、つまり分裂能力は、生きるための必須条件であるような気がします。 テロメアがなくなり分裂能力を失った単細胞生物に、生きる目的はみあたりません。 ところが集合体としてとらえるとどうでしょう。 分裂能力を失った細胞は、もう分裂をするための代謝をする必要がなくなったということですから、他の能力、つまり成長に関する能力を、最大限に発揮できる細胞ということができそうです。 そして分裂能力のある細胞には、いつでも無限の細胞を作り出せる能力があるのです。 これが多細胞生物のからくりです。 **(2006年4月2日) つまり多細胞生物に必要なのは、一つの分裂能力を持った細胞と、多数の成長するための機能を最大限に活かせる細胞ー機能細胞とよびましょうーであるということができます。 元々単細胞生物だけの系では、栄養が足りなくなるので、やむをえず細胞同士が共同生活を始めたという背景があります。 その不足気味の栄養を最大限に活かすには、それを全ての細胞に平等に分配するのではなく、機能細胞をより早く作るべく、つまりテロメアの数をどんどん減らす方向で分裂する細胞に、優先的に栄養を与えるのが、自然の考え方だと思います。 この生物の個々の細胞には、分裂能力がないので、バラバラにして一匹ずつにしたら生きてはいけないと思います。 この点で明らかに細胞群体とは違う、多細胞生物ということができるでしょう。 そして分裂能力を持った細胞が新たな分裂を始めると、DNAの塩基配列は同じはずですので、また同じような多細胞生物が生まれるはずです。 ここでいう分裂能力を持った細胞というのは、テロメアの数が減っていない細胞と考えるのが、最も自然だとは思いますが、まだいろいろな点で謎が残ります。 まず中途半端にテロメアの減った細胞は、どうなるかということです。 新しい世代の個体を作るには、テロメアが全然減っていない細胞が一つあればできます。 その細胞は次世代のために温存するとして、その他の細胞はテロメアの数が減っています。 その中でもテロメアの減る方向の分裂を優先させると考えましたが、取り残されたテロメアのあまり減らない細胞は、どの段階からでも無限個の細胞を、作る能力があるのです。 そうすると多細胞生物の大きさは無限大になり、寿命もないということになってしまいます。 もちろん他の要因もありますが、人間を例にとると、10cmの人間も10mの人間もいませんし、200年生きた人もいません。 何か根本的な理由で、多細胞生物の大きさと寿命は決まっていると思います。 ここからはまた完全に私の想像です。 **(2006年4月4日) 図14 まずスタートはテロメアが完全にある細胞(仮に10個としましょう)が分裂します。 この時点でテロメアが10ある細胞と9の細胞の二つができます。 このうち10の方は次世代のために温存するとして、9の細胞がこの生物の身体を作るために、使われるとしましょう。 するとこの二つの細胞は性質の違う細胞、つまり機能分化をしたことになります。 今度はテロメア9の細胞が分裂して、9と8の二つの細胞になります。 白血病編で考えたように、このテロメア8の細胞が、分化の方向が決定した細胞になるとしましょう。 この8の細胞が分裂すると、テロメア8と7の二つの細胞になるはずですが、この二つの細胞の将来の運命が同じであれば、(分化の方向が決定しているので)このときの分裂でテロメアの数は短いほうにあわせると仮定します。 するとテロメア7の沿い某が二つできることになります。 この行為自体は、DNAの複製後、整列して、酵素というハサミで長い部分をきればいいのですから、それほど難しいこととも思えません。 それ以降は同じようにテロメアを減らし、テロメアが1になった時に機能細胞になるとします。 仮に体細胞の種類が3種類だとすると、この時点でこの生物の細胞の数は決定します。 すなわち10の細胞が1個と、9の細胞が1個と、192個の体細胞です。 この生物は体細胞に寿命がきたら真でしまうでしょうが、その前に10の細胞か9の細胞が分裂を始めれば、また体細胞の数が192個の生物が生まれることになります。 しかもDNAの塩基配列は同じなのですから、ほとんど同じ姿かたちになるわけです。 192個の体細胞は、次世代に命を伝えることができる細胞のために、一生懸命働いて、寿命がきたら真でしまうのです。 だいぶ多細胞生物らしくなってきました。 ここでちょっと考えておきたいことは、この生物のテロメアの数を一つ増やしたら、体細胞の数は384個になります。 一方体細胞の種類を一つ増やしたら、体細胞の数は256個です。 同じように二つ増やしたら、テロメアの場合は768個、体細胞の種類の方は320個とだんだん差が大きくなってきます。 これから生物の身体の大きさ(体細胞の数)は、テロメアの数に大きく影響されると考えられます。 ガン細胞が検査でみつかる大きさは小豆大くらいで、10億個ほどの細胞のかたまりだそうです。 10億は約2の30乗です。 それに対し、人間の身体は60兆個の細胞からできているといわれています。 60兆は約2の40乗なので、小豆大の生物、例えばアリのテロメアの数が人間のそれより、10個程度少なかったら、私の屁理屈もマンザラではないことになるのですがどうでしょう? とはいっても、実際には白血病編で考えたような、器官系から組織系への階層的な分化や、体細胞の種類が多くなったときのこと、また補充細胞である幹細胞のことも考えなければなりません。 高等な生物のことを説明するには、あまりにも不十分な屁理屈です。 しかしそれらはまた次にゆっくり考えることにして、これから少し進化のことについて考えていきたいと思います。 進化といえばダーウィンの進化論があまりにも有名です。 その頃は獲得形質(その生物が一生の間に経験したこと)が遺伝するかで、大きな論争がありました。 結果は獲得形質は遺伝しないという説が勝利をおさめました。 私の屁理屈もそれを支持することができます。 すなわちまず生殖細胞と体細胞が分化すると考えているので、次世代にその生物が獲得した形質はつたわらないのです。 **(2006年4月6日) 進化とは、生殖細胞が偶然にDNAの塩基配列を変えたことによりのみおこり(突然変異 )その時発現する新しい形質が、環境に適している場合にのみ繁殖するのです(自然淘汰)。 私は白血病編で、細胞の分化は二つに一つの消去法のような形でおこると推測しました。 まずテロメアも完全にあり、分化全能性もある生殖細胞が分裂をします。 この時できる二つの細胞のうち片方は、元々の細胞のDNAがそのまま受け継がれるはずです。 ですからテロメアも完全にあり、分化全能性も残っているはずです。 しかしもう一つの細胞は、ラギング鎖からできるリーディング鎖のDNAが短くなることになるので、テロメアも減り、それに連れ分化全能性も消えると考えました。 その全能性の消え方は、もうこの細胞にはなれない8個の場合ですと生殖細胞)という消去法的な感じです。 進化の原因ともいえるDNAの塩基配列の変化は、DNAの複製の時におこると考えられます。 その変化がおこる確率はテロメアが減る細胞(娘細胞)の方が高くなるはずです。 テロメアの減らない細胞(母細胞)には元のDNAがそのまま受け継がれるはずなのですから。 つまり母細胞は保守的な細胞、娘細胞は革新的な細胞ということができます。 そう考えると、生殖細胞は保守的な細胞ということになり、進化しにくい細胞といえます。 **(2006年4月6日) 多細胞生物は一つの生殖細胞があれば、無限に作れるというのは、先ほど考えました。 これは生殖の方法でいうと、無性生殖になると思います。 しかしその生物が進化するのは、非常に難しいことに思えます。 実際無性生殖をする原始的な生物が、現在でも多く生息しているのは、無限に作れるが進化しにくいという特徴の一つの証拠ではないでしょうか? ですから進化のビックバンということを語るには、有性生殖をする生物のことを考えなければなりません。 つまり進化のビックバンとは、生物がDNAの複製時に、ラギング鎖を読めるようになったことにより、圧倒的な増殖力と、豊富な遺伝情報を持つことが可能になりました。 その結果単細胞生物だけの系では、栄養が不足することになり、それがきっかけで多細胞生物が誕生します。 その多細胞生物が、有性生殖の能力を持ち繁栄するまでの期間をいうと思います。 それが地球の全歴史からみると、ごく短い間に実現したのです。 それを可能にしたのは、それまでの何十億年という長きにわたり、試行錯誤を繰り返しながら、ゆっくりゆっくり繁栄してきた古い生物達です。 彼等を土台にして進化のビックバンという、生物史上最大の出来事がおこったのです。 そして現在では、高等な多細胞生物を中心とした、比較的安定の時期にはいっていると思います。 その時代のつい最近に我々人類が誕生し、文明という全く新たな大変革をおこしています。 この大変革が地球上の全ての生物にとって、いい方向に向かうようにするのが、我々人間の当然の責務だと思うのですが、どうでしょう? 次章では、この有性生殖をする高等な生物の、生から死までを考えていきたいと思っています。 [[「はじめに」へ戻る >>はじめに]]

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