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支【ささえ】



「なんなの、これ…」


深い森の中で、高校の制服に身を包み、黄色の髪に
赤い歯のようなぎざぎざの入った髪留めをした(自称)平凡な女子高生
桂木弥子はあまりの事態にそう呟いた


桂木弥子は探偵である。ただし、表向き、のつく。
彼女が出会った存在、それは脳噛ネウロと名乗る、魔界の住人だった。
 彼が弥子のいる人間の世界に来た理由、それは『謎』
詳しくは省略するが、そのためには探偵という職業は1番いいらしい。
 しかし、ネウロ自身は魔界の住人ゆえ、目立つことはできないらしい。
そこで、彼が表向きの探偵として選んだのが、桂木弥子で、彼は助手として共にいて、
解決した事件は弥子の手柄となる
そんな感じのことを、脅迫九割、興味一割でやってきた彼女だったが……


「冗談じゃないよ……こんなの、謎とか、事件とかってレベルじゃない」

そうつぶやくと、彼女はあの部屋の事を思い出す


黒い球。ベランダで美味しそうな美味しそうな肉を……ナイフごと食べた男
確かに恐怖はしたが、今まで奇妙奇天烈な人間(薬で上半身だけ筋肉モリモリになったシェフ、
自分の肉体を自在に変化できる『怪盗』など)を見てきた彼女にとっては
 ああ、またああいう人たちかぁ、と思っていた
だが、そんな少し呑気な気持ちもあのダイアーという男の死により吹っ飛んだ
彼の命を奪った首輪、それは弥子の首にもしっかり付いているのだから

彼の死の前にはべたべた触っていたそれに、もう触れることも恐ろしい。
 ちょっとしたことで爆発するんじゃないか、という不安が弥子を支配する


『殺し合いをしてもらう』


 漫画とかの探偵などなら、こういうときは正義感に燃え、義憤に駆られていきり立つところなのだろう
 だが、先の通り、桂木弥子は表向きの探偵、傀儡の探偵である
 正義感がないわけではない。彼女もあの男への怒りはある

 だが、それ以上に、恐怖がある。恐れがある
 彼女は所詮は普通の女子高生。どうしても、恐怖が怒りに勝る
 体が震える。どうしようもない

 なまじ彼女は知っている。
 自分のエゴ、欲望に駆られる人間がどれほど恐ろしいか
 人が一線を越えたとき、どれほど容赦がなくなるか
 人が一線を越えたとき、どれほど恐ろしいことができるか
 彼女はそれを知っているから……怖い
 それが、自分に直に襲い掛かるのが、この状況なのだから


 なぜ自分は怖がっているのだろう

 そう、今までもそうだった。
 やめよう、と思ったこともあった
 じゃあ、なぜ自分は続けていたのだろう


『人間は進化する』

 あ、そうか
 ネウロが、ネウロが言ったからだ


 そう、いつもあいつがいた
 犯人を指差す時、いつもネウロが後ろにいた
 犯人が襲い掛かったとき、守ったのはネウロだった
 ドSだったけど、彼がずっと傍にいた
 1日10DVされたけど、彼がいた


 でも、ここにはいない


 あの説明の時、弥子は注意深く辺りを見回していなかった
 あまりのことに呆然としていたから
 (少しの間、ベランダの男の肉に眼がいって夢中だったことは
 とりあえず今は無視しておく)
 ネウロが、いるかどうかわからない。いや


 いない可能性のほうが、高い
 いたとしても……ここにはいない
 笑顔で自分を苛めてくる、でも頼りにはなるネウロは……ここに、いない



「ネウロ……笹塚さん……吾代さん…」

 頼りになりそうな知り合いの名前を呟く
 呼んだら、誰か来てくれないか、なんていう淡く儚く無駄な希望と共に
 ガサッ


 果たして、願いは叶った
 ただし、それは半分

「!!」
 弥子は茂みの揺れた音に顔を上げた
 そして、落ち葉や枝を踏む音がする



 誰かが近づいてくる


 彼女の願い、『誰か知り合いが助けに来てくれないか』
 そんな希望
 それは半分叶う


 だが、ここでは知り合いが来ない方の確率の方が大きいということは
さすがの弥子にも理解ができた

 どうしよう

 どうしよう

 どうしよう!



 デイパックを抱え握り締める

 危害のない人?
 危害のある人?
 殺そうと、している人?

 逃げろ
 頭が、本能が告げる。
 ああ、だけど!
 彼女は後悔した
 地面にヘタレこんで落ち込んでいたことに後悔した
 立っていれば、まだ間に合ったのに
 すぐに走ることができたのに


 けれど、心の隅で誰かが囁く
 もしかしたら、無害な人かも
 だったら逃げたら駄目だ。むしろ頼りたい
 けれど、足は歩み寄ろうとしない

 良心が、恐怖が、せめぎあった
 彼女は結局中途半端だったのだ
 全てに恐怖して希望を捨てたわけでも、何もかもを信用しているわけでもなかった
 そんな中途半端が、彼女の足を完全に止めて






 茂みから出てきた、黒服の男との、接触を可能とした

 **********


「なるほど、カツラギ・ヤコ、ね。ヤコちゃん、でいいかい?」
「え。あ、はい…」
「それとも……さっきのお嬢さん(マドモワゼル)の方がいい?」
「い、いいです!」

 弥子はそう言ってぶんぶん首を振り、目の前の男――サンジ、と名乗った男に拒否の意志を示した

 黒いスーツに、金髪。華奢な体に……


(変な眉毛…)
 さすがに、他人のその辺りのセンスに突っ込むほど
彼女は野暮ではないので、その言葉は心に封印しておいた

 彼が茂みから出て、弥子を視界に入れた瞬間の行動は、弥子の恐怖を一気に吹き飛ばすものだった

『おお、可憐なお嬢さん(マドモワゼル)
 こんな月の綺麗な夜、それでいて俺達にとって悪夢のようなこの状況
 けれど、俺は今このときだけこの場所、この状況に感謝する!
 なぜなら!あなたに会えたからだ!
 この事実だけは!俺にとっての幸福だ!
 ああ、麗しい!!』

 ちなみに、このセリフの間に彼は一気に弥子に肉薄、抱きしめ、顔を近づける、までの動作を行っている
 ついでに、目がハートになって、回りに『メロメロリーン』という擬音が浮かんでいたのは……弥子の幻覚ということにしておこう




 その後、弥子が落ち着いたのを認めたサンジが自己紹介をし、弥子がそれに返したところだ
 既に抱いた体は離している

「あ、あの、サンジ、さん?」
「おーっと、ヤコちゃん。気軽に『サンジ』もしくは『サンジくん』で構わないさ」
「え……い、いいです、サンジさんで」
「そうかい?……で、何かな?」
「サンジさんは……やる気じゃない、んですよね?」


 弥子は、どうしても聞いておきたかった
 確かに、彼が生き残る気なら、自分などすぐに殺されている
 けれど、確かめずにはいられなかった。本当か、と。はっきりと
 自分のそんな懐疑心に、内心嫌になる


「ああ。あんなクソ王の言われたとおり、こんなクソゲームできるかってんだ
 それに……俺は、女はなぐらねえ」
「え?」

 その時、サンジの雰囲気が変わったことに弥子は気付いた


「あそこに、何人かの女性がいたことはしっかり確認した
 生き残るってことは、あの人たちを見捨てる、いや、あの人たちを殺して生き残るってことだろ?


 クソ冗談じゃねえ!」


 サンジの突然の大声に、弥子がびくっと震えた
 怖かったから?いや、今度はそうじゃない


 彼が、本当に憤っていたから、その想いが、弥子の体を震わせた

「冗談じゃねえ。
 俺は……守るぜ。女性を。
 見捨てねえ。見殺しになんかしねえ
 絶対だ」


 彼は本気だった。
 それがなんとなく、わかった。
 けれど、逆に不安が芽生えた
 だから、聞いた
 聞いてしまった



「じゃあ、私に声をかけたのは……私が、女だったから?」


 私が、男だったら…


 そんな思いがもたげる
 まさか彼は、他の男を全員殺すなんて、言い出すんじゃ…
 よく犯人のものすごいこじつけ論、曲解論を聞いている彼女にそれは容易に想像ができた
 声が、自然と震えていた

 そして、彼は笑った
 それは、頼りになる笑いだった

「……君が、震えてたからさ」
「え?」


「君が、誰か傍にいる人が必要に見えたからさ
 何か支えがないと、君が倒れてしまいそうに見えたから
 倒れて、壊れてしまいそうで……俺は、それが我慢できなかった
 確かに君が女だったから、っていうのは否定しない
 けれど、君が男でも、俺は声をかけた
 本当だ……信じてくれ」


 ああ、見抜かれてた
 この人は、見抜いてたんだ
 私の、心を。
 しっかりと
 支えが必要、だって
 支えを求めてる、って
 誰かに傍にいて欲しい、って


「……傍に、いてくれるん、ですか?」
「愚問だな
 俺は、その為にここにいる」


 彼の言葉が、とても温かく感じた
 恐怖が、今度こそ和らぐのを感じた






 ぐぎゅるるるるるるるる






(だからって、これはないでしょ……)


 今のシーンの途中でこの音である
 自分の安心した胃袋の遠慮ない悲鳴
 空気を読まない自分の胃があまりにも恨めしい
 自分の胃に絶望した弥子は現在OTZの状態である

 そんな彼女に、サンジが遠慮しがちに話す

「あ、あー……まあ、せっかくだ。
 もう少し落ち着いた所に移動しよう、できれば建物の中だ
 そこで、美味しい飯でも食べて、これからのことを決めよう」
「美味しい飯……あればいいけどなぁ」

 落ち込みながらもそこには反応する弥子、なぜなら彼女は

「安心してくれ
 俺は、レストランでコックをしていたこともあってね。
 船でも料理担当だ。材料さえあれば、上手い料理を保障……

 のわああっ!や、ヤコちゃん!?突然起き上がってなぜしがみついてくる!?
 いや、それは俺にとって嬉しいが……おおおおおおお!?
 よ、よだれ!ヤコちゃんよだれ!!
 目が、目が遠いところを見てるぞ!おい!お、おわああああああああ!!」


 華奢な体つきでいながら、食欲旺盛なのだ



 ******************


「ごめんなさい……空腹と、コックっていう言葉への条件反射で意識がどこかへ…」
「いやいいさ。……女性のよだれだったら、大歓迎だ」
「それはそれで、嬉しくないです…」

 弥子を後ろに、サンジが歩く
 どこか建物を求めて
 同時に彼は思考する

(できればレストラン、民家でもいいが……
 とにかく、このクソゲームをなんとかしねえとな
 女性は守る。これは第一だ
 そして、女性には人殺しなんてさせたくねえ。
 やる気だったら、なんとか説得したいところだ。
 考えたくはねえが、無理だったら……ヤコちゃんを危険な目に合わせるわけにはいかねえ
 逃げて、別の手を考えるしかねえな


 やる気な野朗は蹴り飛ばす、これは絶対事項だ


 やる気がない奴は……まあ、そいつ次第だな。気に入らない奴だったら、自分で何とかしてもらう

 ルフィとマリモがあの部屋にいたのは見えた、間違いねえ
 となると……まさか、ナミさんやロビンちゃんまでいやしねえだろうな…
 クソ!それこそ冗談じゃねえぞ!いたとしたらぜってえ見つける!


 ルフィとマリモは別にいいだろ。その辺の奴相手なら楽勝だろうしな)

 そう考え、彼は自分のことに専念することにする
 背後の、期待に満ちた目をした彼女を見る

(いい目をしてくれる。どんな美味しいものが食べられるんだろう、って目だ
 あの子はいいお客様だ
 あんな目をされると……俺達は、すごい物を作ってやる、って気になっちまう。
 腕の振るいがいがある客だ
 きっと、心のそこから食事が好きなんだろう。
 ……会えてよかった、本当そう思うぜ)

 そして彼は思考に移る
 辺りへの警戒をしつつも、どんなレシピにしようかと
 料理人は思いをめぐらせる



 大食い女子高生探偵と女好き海賊料理人
 2人が行く先にあるのは
 天国のような祝宴か
 地獄のような晩餐か

 その『味』は、未だ舌の上に乗らず――




【C-5 北西・森 /一日目 深夜】

【桂木弥子@魔人探偵脳噛ネウロ】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 未確認支給品1~3(未確認)
【状態】:健康 空腹 
【思考・行動】
1:お腹すいた…
2:サンジさんと行動
3:死にたくない、でも誰かを殺すのなんて…

※参加時期については後続の書き手に任せます
 ただし、XIを知っているので、3巻以降であることは確かです

【サンジ@ONE PIECE】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式 未確認支給品1~3(確認済み)
【状態】:健康
【思考・行動】
1:カレー、とかが手ごろかな?
2:施設を捜して、そこで休息。弥子に料理を作る
3:ヤコちゃんを守る
4:女性が襲ってきたらできるだけ説得する。男には容赦しない
5:やる気がない男の場合、印象で判断する
6:ナミさんやロビンちゃんはいねえだろうな…
7:ルフィにマリモ? 大丈夫だろ

※参加時期については後続の書き手に任せます
 ただし、ワポルを知っているので、ドラム王国に訪れた以降です




000:オープニング 投下順 002:どうでもいいことに限ってなかなか忘れない
000:オープニング 時間順 002:どうでもいいことに限ってなかなか忘れない
初登場 サンジ 026:恐るべき妖刀
初登場 桂木弥子 026:恐るべき妖刀