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「このそらの下で-第二話前編-」(2005/11/22 (火) 17:22:55) の最新版変更点
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<p>911 名前: <font color=
"#009900">◆Qvzaeu.IrQ</font>[]投稿日:2005/11/08(火)00:13:01ID:tIiXtHTA0<br>
ツンと僕の変わらぬ日常に、ちょっとした事件が起こったのは、一本の電話からだった。<br>
「hello! I'm merry! I'm hare in England!」<br>
「あ、あわわ、は、はろー! あいあむ~~」<br>
その電話は、冬の朗らかな日のことだった。<br>
相手は僕でも良く解る、英語で挨拶をしてきた。<br>
焦って電話に出る僕に、<br>
「あ、ニホンゴダイジョブなの~。私、メリーさん。今イギリスにいるの」<br>
「ちょっ、ちょ! メリーさんって!」<br>
「……」<br>
相手は自分の名前と居場所を言って、電話を切った。<br>
「メリーさんってあのメリーさん?」<br>
じりじりと近づいてきて、最後に振り向いた瞬間に殺される。誰でも知っている都市伝説だ。<br>
「うわー、微妙っ。イギリスからじりじりやってくるの? めちゃくちゃ微妙だよ~。本場から出勤なのかな? イタ電にしてもびみょ~~」<br>
そうこう思っていたら、また非通知の電話がなる。<br>
「私、メリーさん。今からイングランド国際空港に行こうと思うの」<br>
「ふーん、で、誰? 僕もう寝るから、イタ電は辞めてね。切るよ」<br>
「あ、待って! 私はメリーさん。あなたの知っているメリーさん!」<br>
僕が電話を切ろうとしたら、相手が必死に呼び止める。さっきは、自分から切ったくせに。<br>
「あのメリーさん? うわっ! 微妙っ。誰だか知らないけど、次電話したら怒るからね。良い?」<br>
「えー、だってメリーさんが電話しなかったらメリーさんじゃないと思うの。だから、日本に着いたら電話するの」<br>
「そ、それは、そうだけど、って! えー! えー! また切った!」<br>
相手はまた電話を切る。<br>
僕は急いで、携帯電話を非通知設定にした。</p>
<br>
<p>932 名前: <font color=
"#009900">◆Qvzaeu.IrQ</font>[]投稿日:2005/11/08(火)19:53:40ID:tIiXtHTA0<br>
翌日、僕はツンに昨日あったことをなんとなく話した。<br>
屋上では、相変わらず風が気持ちよかった。<br>
「あんたさあ、もっと面白い話できないの? 作り話なら、作り話らしくオリジナリティーを出しなさいよ」<br>
(どんな話かと思ったら、メリーさんのパロディーって)<br>
「パロディーじゃないし、作り話でもないって! 本当なんだよ~。昨日、メリーさんって名乗る変な子が、シツヨウにイタ電かけてきたんだもん」<br>
「はいはい。もう飽きたからその話」<br>
「まあいっか、ところでさ~」<br>
僕もあまり興味のない話だったので、別の話題を出そうと思ったら、<br>
「あ、電話」<br>
「ん? あたしに気にせずに出れば?」<br>
(どうせ、家族じゃない? それにしても、コイツに電話がかかってくるなんて珍しい……)<br>
「珍しいは、余計だってばあ! 確かにそうだけど」<br>
見慣れない番号から、電話がかかってきた。<br>
「はいは――」<br>
「私メリーさん、今やっと成田空港。非通知拒否しないで欲しいの。電話できな……」<br>
僕は携帯を遠ざけると、<br>
「ちょ! ツンツン! 今メリーさんから来た!」<br>
「は! え? 本当だったの? それなら面白そうだし、どうせなら電話切れるまで話してみなさいよw」<br>
(少なくとも、どれだけ奇人なのか暇つぶしにはなりそうだし)<br>
「そんなあ、僕もうこの電話飽きたんだけど……」<br>
「良いから!」<br>
(暇なのよ、あたしは! 暇つぶしくらい頑張りなさい)<br>
「はいはい、解りましたよ」<br>
と、小声で話し合い。僕はまた携帯を耳に近づけた。<br>
「で、そりゃあもう大変な思いだったの」<br>
なんだか、電話口で愚痴られたよ。<br>
「あのさあ! ほんっとお、誰なの!」<br>
「だから、私メリーさん。だけど、羊は飼ってないの。お金もないの」<br>
「いや、そんなこと僕に言われても困るし!」</p>
<br>
<p>933 名前: <font color=
"#009900">◆Qvzaeu.IrQ</font>[]投稿日:2005/11/08(火)19:55:59ID:tIiXtHTA0<br>
「成田空港も大きすぎて、出口がわからないの。しかも、あなたの家も解らないの。困っているの」<br>
「そりゃ、僕の家知っていたら驚きだよ」<br>
「メリーさん、困ったことが多すぎて泣きそうなの。ぐすん」<br>
「僕のほうが困っているよ」<br>
「あなた、切り替えしがシャープなの。目の付け所が……」<br>
「しらんがな!」<br>
「シャープでしょ? ってCM知らないの? ちょっとショックだったの」<br>
「ちょっおま! 日本人だよね? それ最近の奴だから!」<br>
「違うよ、私メリーさん。お化けだよ。がおー」<br>
「……」<br>
「ごめんなさい、怖がらせて」<br>
「もう、疲れたから電話切るね」<br>
「あ! ちょっとまって! せめて、家電だけでも教えて欲しいの。電話代がバカにならなくって、メリーさんちょっとお財布寂しくなりそうなの。今月国際電話もしちゃったの」<br>
「むりっ! だいたいどうして僕の電話番号知っているの!」<br>
「適当にかけたら、ヒットしただけなの。本当、家電教えて欲しいの」<br>
「えーー、適当なのっ。そ、れ、に! なんで知らない人に電話教えなきゃ駄目なのっ!」<br>
「それじゃあ、メリーさんちょっと頑張っておっぱいうpするの。それで解決して欲しいの」<br>
「えっ…………う……………、だめっ……。高見盛似だろうから」<br>
「メリーさん、凄くかわいいの。羊並なの」<br>
「駄目じゃんっ! それ、可愛くないし!」</p>
<br>
<p>934 名前: <font color=
"#009900">◆Qvzaeu.IrQ</font>[]投稿日:2005/11/08(火)19:57:30ID:tIiXtHTA0<br>
「じゃあ、今から写メール送るの。私メリーさん、今空港の待合所にいるの。」<br>
「いらないってば……、また切れた」<br>
その後、メリーさんから送られてきた写メールは、明らかにそこら辺の少女を写したものだった。<br>
どう考えても、メリーさん。イギリスから来る貴女が、コアラの縫い包みを抱えているのはオカシイでしょう。しかも、よだれで汚れているますよ。<br>
「……、ツン。どう思う?」<br>
「メリーって子。本格的にアホね」<br>
(日本人写してどうするのよ……。しかも、子供じゃない。)<br>
冷ややかな嘲笑と共に、的確なコメントをくれる。僕もそう思う。<br>
その後かかって来たメリーさんの電話には、アホでしょ。と一言だけ答えておいた。</p>
<br>
<p>21 名前: <font color=
"#009900">◆Qvzaeu.IrQ</font>[]投稿日:2005/11/10(木)20:53:39ID:UmXMBSMm0<br>
それからも、メリーさんからの電話は続いた。<br>
メリーさんは、あれから4日ほど成田空港に滞在した。最後の一日はトイレに立てこもって、女性警備員にドアを外されるまで粘った。<br>
僕もツンも、その最後の瞬間を電話越しに聞いたけど、僕はかなりワクワクした。なんていうか、犯罪者が捕まる瞬間みたいなもんを感じた。<br>
メリーさんの、<br>
「私、ここを離れたくないの~~~っ。私メリーさんなの! 呪う~、呪う~! 出来ないけど、呪う~! 明日のいいとも、楽しみにしていたの~~!」<br>
という叫び声なんかは、哀愁さえ感じた。<br>
そして、今日はメリーさんが野外に放り出されて丁度一日目なので、多分色々な話が聞けるだろう。<br>
「ねっ、ツン。あれから、メリーさんどうなったと思う?」<br>
もそもそと昼食を食べていたツンに、話題を振ってみる。<br>
「さあ、知らないわ。そんなこと言われても」<br>
(つまんないなあ)<br>
「んー、それもそっか。まあ、ツンが知っているわけないよね」<br>
「ん」<br>
(そんなことよりもぉ……)<br>
今日のツンはなんだか、ちょっと不機嫌ぽかった。何かあったのかな?<br>
あまりそのことにはふれずに、僕も真横でご飯を食べることにした。<br>
「あ、やっぱり今日もきた。わくわくするね、ツン」<br>
「そう?」</p>
<br>
<p>22 名前: <font color=
"#009900">◆Qvzaeu.IrQ</font>[]投稿日:2005/11/10(木)20:54:06ID:UmXMBSMm0<br>
(はぁ……)<br>
「えっ?」<br>
「好きになさいよ」<br>
(まーた、電話なのね)<br>
「やめる?」<br>
「好きになさいってばっ!」<br>
(イチイチ人の気持ち読まないで、好きになさいよ)<br>
「う、うん」<br>
相当ツンは不機嫌だった。どうしたんだろうなあ……。<br>
「はいはい、今日はどうしたの?」<br>
「私メリーさん、今第二空港ビルにいるの。ところで、今日のテレフォンショッキング。ゲストのトークはどうだったの?」<br>
「ちょっ、メリーさん。そんなに、いいとも見たかったの? 残念だけど、僕も今学校だから知らないよ」<br>
「はっ? 何それ? あなた本当に使えないの」<br>
つかえなくって悪かったね。あほのメリーさんっ。<br>
「むっ」<br>
「まあ、そんなことより、今日もあなたの家電を聞きたいの。さあ、今夜のご注文は家電と住所どっちなのっ?」<br>
「どっちも駄目だってば! いい加減、諦めないの?」<br>
「メリーさんも必死なのっ。諦めるわけにはいかないの」<br>
「ふーん。で、結局会ったとしたら、メリーさんは僕をどうするの?」<br>
「殺すッ!!!」<br>
「……」</p>
<br>
<p>23 名前: <font color=
"#009900">◆Qvzaeu.IrQ</font>[]投稿日:2005/11/10(木)20:55:03ID:UmXMBSMm0<br>
「……」<br>
「………」<br>
「…………」<br>
「……………」<br>
「住所教えてあげようか? その代わり、殺すマジで。お化けだし、心置きなく殴れるからね。お前、原型とどめられると思うなよ?」<br>
「すみません、冗談です。お茶目なジョークのつもりでした。ほんっと、嘘なの。いや、あ、あ、めり、あ、違うっ、ワタクシにそんなたいそうな事できないです、ほんと、うそっ、ごめんなさい。裸晒すので、許してくださいなの」<br>
「うん、そうだよね~♪ それと、裸はいらないから」<br>
「ははは、そうなの。ちょっとメリーさん、テレビの無い生活でストレスたまっていただけなの」<br>
「で、本当はどうするの?」<br>
「内緒なの」<br>
「それじゃあ、教えられないじゃん」<br>
「あ、教えてくれる気になったの?」<br>
「違うよ、ただメリーさん悪い人じゃ無さそうだしなって思っただけ」<br>
「メリーさん、お化けなの」<br>
「そだね、ところで昨日はあれからどうなったの? ずっと気になっていたんだけど」<br>
「警備員さんに追い出されてから、第二空港ビルってところでずーっと待機しているの。テレビみたいの。激しく見たいの。空港快適だったの。ここでは、車上荒らししかすることないの」<br>
「ちょっ! 最後の駄目だから! 何やってんの! あんた! 本当にぃ!」<br>
「ふっ、メリーさんは100円以上のものは取らない主義だから大丈夫なの。それに、お化けだから、するするーって窓ガラスを岩でカチ割って、中に進入しているから平気なの。ばれないの。電話代せっせと稼いでいるだけなの」<br>
「……、マジで通報するから」</p>
<br>
<p>24 名前: <font color=
"#009900">◆Qvzaeu.IrQ</font>[]投稿日:2005/11/10(木)20:56:12ID:UmXMBSMm0<br>
「うそだって! 嘘なの嘘なの。メリーさんジョークなの! さっきは、ちょっとつかみ損ねちゃったから、ここで一気にあなたのハートをがっちり捉える予定だったの。<br>
そうして、家電をゲットする計画だったの。今頃、あなたの笑い声が聞こえるハズだったの。なのになのに、あなたは笑いのニーズが高すぎて、メリーさん本当泣きそうなの。オンデマンドビジネスをやりそこねたの」<br>
「本当に? なんか、さっきの前言撤回したいんだけど……」<br>
「ほんと、ほんと! 信じて! この必死なメリーさんを信じて! 売れない芸人が滑って、必死に空気を守り立てようとしているくらい頑張っているの」<br>
「はいはい、はぁ。それならとりあえず、電車に乗って成田を目指して、そこから路線図を見て秋葉原にでも行ってみたら? 電気街ってところの方面で降りたら、電気屋さんでテレビ見放題だよ。」<br>
「そして、あなたの家にも近づいて一石二鳥なの」<br>
「げっ、何で解るの?」<br>
「ねえ、ツン! ヤバイ、メリーさんに秋葉原に行ったら、僕んちに近づくってばれた!」<br>
僕は電話を遠ざけて、一人遠くを見ていたツンにそういった。<br>
「うるさいな~! そんなの、あんたが馬鹿だからでしょ! この同類項!」<br>
(あーーーーもおおおおお)<br>
「……、どうせ、馬鹿だよ」<br>
なんで今日は、こんなにツンは不機嫌なんだろう。<br>
「何よ?」<br>
(ばーか! ばーか! クソばーか!)<br>
「む……」<br>
とりあえず、もう今日はほっておくことにした。<br>
「ふぅ、そうだよ。僕んちは、そっち方面。だから、そこら辺の地理はなんとなくわかるんだよ」<br>
「うん、メリーさん。とりあえず、秋葉原を目指してみるの」<br>
「はいはい、もう電話切るよ?」<br>
「私メリーさん、今電車乗り場を目指してさまよっているの」<br>
がちゃっ、とまたいつものように電話が切れた。<br>
ツンはもう屋上にはいなかった。どこいったんだろう。<br>
「はぁ、なーんであんなに不機嫌なんだろうなあ。また、明日になれば機嫌を取り戻してくれるかな?」</p>
<br>
<p>66 名前: <font color=
"#009900">◆Qvzaeu.IrQ</font>[]投稿日:2005/11/12(土)00:02:27ID:kDr8R5r10<br>
結局、次の日の朝。ツンが迎えに来てくれることは無かった。<br>
学校で顔をあわせても、ついっとそっぽを向いてしまう。<br>
「ねー、ツン。もしかして元気ないの?」<br>
僕は勇気を出して、声をかけた。本当に元気がなかったら、なんとかして元気になって欲しいし、そのためには多少酷いことを言われても我慢できる。<br>
昨日は、突然だったから結構カチンときたけど、今日はもう大丈夫。<br>
「別に……」<br>
(はぁ……)<br>
「でも……」<br>
「なんでもないわ。ありがとう」<br>
(わざわざ心配してくれたのね、でも、大丈夫よ)<br>
ツンは一回表情を曇らすと、もう笑って見せた。<br>
駄目だ……、もうこうなったらお手上げだった。全てをがらっと変えていた。<br>
「う、うん」<br>
はぁ、なんでこんなに機嫌悪いんだろ。初めてかもしれない。<br>
昼休み、僕はいつものように屋上にいた。1人だけだった。<br>
空は、冬のちょっと重い雲が張り詰めていた。放射なんとかのおかげで寒くは無いけど、気分的に寒かった。<br>
「はいはい」<br>
僕はもうワンコールで、携帯を取った。いい加減、この時間帯にかけてくるのはメリーさんしか居ない。</p>
<br>
<p>67 名前: <font color=
"#009900">◆Qvzaeu.IrQ</font>[]投稿日:2005/11/12(土)00:04:44ID:kDr8R5r10<br>
「私メリーさん、今秋葉原。イヤッッホォォォオオォオウ! テンションマックスでお送りなのっ、うぇっうぇwwww!」<br>
「はいはい」<br>
「あ、あれ? メリーさんちょっと掴みを失敗しちゃった?」<br>
「んー、なんでもない。それと、テレビのある生活には戻れた?」<br>
「うん、メリーさん今日はご機嫌なの。でも、家電は聞かずにおくの」<br>
「あ、もう諦めちゃったの?」<br>
「んー、なんとなくなの。ま、メリーさん事情って奴」<br>
「ふーん」<br>
「今日は、あまり報告ごとないの。上野で、おっさんたちに媚売って青いテントに止めてもらっているの。カイシュウって作業を手伝ったりと、今ではメリーさんも職持ちなの」<br>
「やったじゃん」<br>
「あ、あれ? メリーさん今突っ込み待ちしていたの、もっかい繰り返す?」<br>
「いや、良い」<br>
「ふむぅ……、オトコはオンナを支配欲で手放さない、オンナはオトコを環境支配欲で縛るのよ」<br>
「は? え?」<br>
「ふふふ、なんでもないの♪」<br>
今一瞬、メリーさんの声が凄く大人びて聞こえた。<br>
「あ、う、うん? メリーさんだよね?」<br>
「そなの、私メリーさん。あ、やばっ、携帯の充電タダでしているの見つかりそうなのっ。私メリーさん、今ビックカメラにいるの」<br>
がちゃん。と、電話を切られた。<br>
訳わかんない。みんな。</p>
<p><br></p>
<p>137 名前: <font color=
"#009900">◆Qvzaeu.IrQ</font>[]投稿日:2005/11/13(日)22:50:46ID:C5UZ91iz0<br>
帰りも結局ツンとは、顔を合わせないまま1人で帰った。<br>
1人になるって何年ぶりだろう。ふと、そんなことを思ってしまう。<br>
僕はいつだって、ツンのそばにいてツンを守ってきた。<br>
でもそれって……? <br>
「あーーーーー、んん! 1人でいると、余計なことばっか考える~!」<br>
ツンが何かわからないけど、凄く機嫌が悪くって。もお……!<br>
「しょうがない、メリーさんにこっちから電話をかけてびっくりさせちゃおう」<br>
さっきのメリーさんは、少し訳解らなかったけど、それでも1人で何かするよりもマシだと思った。<br>
なんか、さっきは少し変って言うか違和感があったって言うか……。<br>
僕は着信履歴から、メリーさんの電話にかけてみた。何回かのコールの後、がちゃっととる音が聞こえる。<br>
「私メリーさん、あなたから電話かけてくるなんて珍しいの」<br>
「うん、って言うかさあ。なんか、お化けっぽくないよね。メリーさん」<br>
「えーーー、まだ信じてくれてないの? ちょっとショックで、横モレガードが利かなくなりそうなの」<br>
「相変わらず、そこでシモネタかい!」<br>
「まあまあ、メリーさんには思春期の少年の心はがっちり解っているから大丈夫なの。照れない照れないの」<br>
「はいはい、普通さあ、お化けって結構一方的だったり生活観なかったりするけど、メリーさんにはメチャクチャあるよね。生活観」<br>
「そりゃあ、お化けだって生活するの! 開店からずっとテレビを見ていて何が悪いの! メリーさんさっき、店員に怒られたの。逆切れしたら、つまみ出されたの」</p>
<br>
<p>138 名前: <font color=
"#009900">◆Qvzaeu.IrQ</font>[]投稿日:2005/11/13(日)22:52:26ID:C5UZ91iz0<br>
「ははは……、一体どれくらいいたの?」<br>
「朝の九時から、ついさっきまでなの」<br>
「今、4時だよ? ずっと?」<br>
「うん、ずっとなの」<br>
「六時間以上テレビの前で好き勝手されたら、営業妨害だよ」<br>
「そんなのメリーさん知らない」<br>
ふぅ、やっぱりさっきの変なメリーさんは勘違いかな。まあ、いつも変だけど。<br>
「うわー」<br>
「ところで、何かあったの?」<br>
「え?」<br>
「まあ、メリーさんほどの淑女になると色々経験しているから、言ってみると良いの」<br>
「んー」<br>
「どうしたの?」<br>
「うーん、あのね」<br>
僕はツンのことを話した、もちろんサトラレのことは隠して。<br>
最近妙に不機嫌なこと、いつも一緒に居たから1人になって余計なことを考え出しちゃったことなんかも、なんとなく話していた。とにかく、僕の気になることを話した。<br>
「ふむぅ」<br>
「あはは、ごめんね。こんなこと話しても意味ないよね」<br>
「大切な人なら、大切な存在なら、ここでこんなことしている場合じゃないんじゃないの? その手を離しちゃ駄目なの」</p>
<br>
<p>139 名前: <font color=
"#009900">◆Qvzaeu.IrQ</font>[]投稿日:2005/11/13(日)22:53:44ID:C5UZ91iz0<br>
「え?」<br>
「人は伝えなければ何も伝わらないの。伝えようとしたの?」<br>
「したよ……、でも」<br>
「メリーさんは、これから上野に戻る電車賃を、ヲタからせしめなきゃならないの。忙しいから、電話を切るの」<br>
「あ……、ちょっとまって」<br>
「ほ?」<br>
「メリーさんって何者?」<br>
「ふふふ、メリーさんはメリーさん。あなたのお家を気長に目指すの。でも、その前にたまには役に立ってあげたりもするの」<br>
「んー、答えになってない……」<br>
「ま、オンナには色々な顔があるのw」<br>
「ツンといい、メリーさんといい、わかんないなあ……」<br>
「わかんないことだらけなの、その中で頑張って一つ一つわかんないことを解決していくの。解った?<br>
わかんないからって、大切なこともわかんないままにするの? めっ!」<br>
「めって言われる歳じゃないよ、ふぅ……、少し考えてみる」<br>
「うん♪ あ、丁度良いのがきたの」<br>
『うぇーーん! お金落としちゃったの~~~、ままぁ~~~、おうち帰れなーーい』って声と共に電話が、ぶって切れた。</p>
<br>
<p>140 名前: <font color=
"#009900">◆Qvzaeu.IrQ</font>[]投稿日:2005/11/13(日)22:54:30ID:C5UZ91iz0<br>
わかんないままにするの?、か。大切な人なら、その手を離しちゃ駄目って。<br>
「そんなこと解ったら、苦労しないよ。僕はツンみたいに、心をそのまま相手に伝えられないんだよ……? ツンは相手にそのまま心を伝えちゃうんだよ? 伝わっちゃうんだよ? それじゃあ、どうしようもないじゃん」<br>
独り言をなんとなく言ってみる。<br>
メリーさんに話してみたら、なんとなく思っていたことが形になって溢れてきそうになっていた。<br>
「ツンに会いに行こう」<br>
このままこうしていたって、多分僕は馬鹿だから何も解らない。会えば、もう一度会えば解るかもしれなかった。<br>
冬の空は日が落ちるのも早く、もう既に空が夜を迎える準備をしていた。<br>
風はやっぱり、少し寒かった。<br>
そうしてツンの家まで歩いていったけど、結局彼女には会えなかった。部屋から出てきたくないらしかった。</p>
<br>
<p>142 名前: <font color=
"#009900">◆Qvzaeu.IrQ</font>[]投稿日:2005/11/14(月)00:42:08ID:G2RM4Dlv0<br>
帰り道、僕はツンにメールをした。返事は返ってくるか解らなかったけど、それでもした。<br>
『最近機嫌悪いけどどうしたの?』<br>
返事は思ったよりも早く返ってきた。<br>
『なんでもない、今忙しいからメールしないで』<br>
『じゃあ、今日の夜くらいにお話しよ?』<br>
暫くして、<br>
『いいから、とりあえずあたしには構わないで!』<br>
とだけきた。<br>
メールの文字は酷く無機質だった。ツンの素っ気なさや、突っぱねる感じも、こんなに悲しいとは思わなかった。<br>
ツンが解らない、それだけでも酷く取り残された感じがした。<br>
それでも、僕にとってツンが大切な人であるのは変わりはなかった。<br>
あの日から、ずっとずっと。<br>
『嫌だ。だってツンが最近元気ないのに、ほっておけるわけ無いじゃん』<br>
返事はこなかった。<br>
メリーさんに電話して気を紛らわそうかと思ったけど、辞めておく。<br>
今夜電話しよう。</p>
<br>
<p>188 名前: <font color=
"#009900">◆Qvzaeu.IrQ</font>[]投稿日:2005/11/14(月)23:11:42ID:G2RM4Dlv0<br>
夜になり、いざツンに電話しようとすると手が震えた。<br>
電話をかけるなんて、凄く久しぶりな気がした。<br>
何コールかしたあと、電話をとる音が聞こえる。僕は一度息を呑んだ。<br>
「電話はしないでって言ったでしょ」<br>
「う、うん」<br>
「用がないなら、切るわよ」<br>
ぶすっとした、ツンの突き放す声が聞こえた。<br>
「あ、待って! 最近元気ないよね? 僕のせい?」<br>
「あんたのせいじゃない」<br>
「でも! 全然顔も合わせてくれないし、今日会いに行ったの知ってる?」<br>
「知っている」<br>
「じゃあ、どうして……?」<br>
「会いたくないからに決まっているでしょ」<br>
「やっぱり、この前の電話? あの後から、凄く機嫌悪かったもん」<br>
「それは、関係ない! これ以上あたしに構わないで!」<br>
いつもみたいに、ツンの心の声は聞こえてこない。<br>
「構わないでなんかいられないよ! だってだって……」<br>
「……」</p>
<br>
<p>189 名前: <font color=
"#009900">◆Qvzaeu.IrQ</font>[]投稿日:2005/11/14(月)23:12:19ID:G2RM4Dlv0<br>
「ツンは、僕のすっごくすっごおおおく大切な人なんだもん! 僕のせいで傷付いたなら、このままは嫌だもん」<br>
僕のありったけの思いを言葉にしてみた。<br>
「なら……」<br>
「うん」<br>
「なら……! どうして、あたしを独りぼっちにするのよ! どのツラさげて、あんたに会えって言うのよ!」<br>
「……っ」<br>
「あんたに、あたしの汚い部分全部晒せって言うの! そんなこと出来るわけ無いじゃない、そんなこと出来るわけ無いでしょ!」<br>
「……、ごめん」<br>
「なんで謝るの? なんであんたは、そうやってあたしに構うの?」<br>
「だって……」<br>
「ねえ? なんで。悪いのは全部あたしなんだよ? 最初、面白そうだなあって思って適当に話聞いていて、だんだん、あんた、あの子と楽しそうに話しだして。<br>
それ見ていたら、なんだか悲しくなって独りぼっちになったような気になって……。あたしは」<br>
「ツンは悪くないよ、ツンは悪くないから」<br>
「どうして?」<br>
「だって、折角ツンと一緒にお話していたのに、真横で電話されたら悲しくなるよね……。自分だけほったらかされたら、なんかやな気分になるよね」</p>
<br>
<p>190 名前: <font color=
"#009900">◆Qvzaeu.IrQ</font>[]投稿日:2005/11/14(月)23:15:54ID:G2RM4Dlv0<br>
「そうだけど……、でも! でもでもでも! やっぱり、あたし普通の人だったら良かったのに……。そうしたら、きっと上手く乗り越せたりも出来たのに……。<br>
気持ち全部伝わっちゃうんだよ、あんたにはあたしの汚い部分は伝わってほしくないの。伝えたくないの、嫉妬したり、ねたんだり、そう言う部分は伝わってほしくないの!」<br>
「……、うん」<br>
「だって、だって、あなたはあたしがあたしでいられる人なのよ?<br>
その人にまで嫌われたらって思ったら、あたしにはもう逃げるしかないの。だから、お願い、構わないで……。そっとして、1人にして。これ以上は、構わないで」<br>
「大丈夫、ツンのこと嫌いになんかなんないよ? 今までだってそうだし、これからもずとずっと」<br>
「それは、そんなあたしを見たことが無いからでしょ! 今までは、思わなかったわよ。<br>
あんたがいてあたしがいる、ずーっと続くものだと思っていた。けど、けど……、なんか急に怖くなって」<br>
「それでも嫌いにならない。みても嫌いにならない。嫌いになるようなら、とっくの昔になっているよ。ごめんね、僕も最近1人だったからちょっと寂しかった。<br>
ツンはきっと、この何倍も寂しくなったんだよね? でも言えなかったんだよね? ごめんね」<br>
「…………」<br>
暫く、電話の向こうの声が途切れる。<br>
「ありがと……、でも、少しだけ時間を頂戴。あたしに時間を頂戴」<br>
「うん、解った。ずっと待っているから」<br>
「ごめん、今はどの道あんたに顔向けできないから。電話で話すのって久しぶりね」<br>
「そうだけど……、でも! でもでもでも! やっぱり、あたし普通の人だったら良かったのに……。そうしたら、きっと上手く乗り越せたりも出来たのに……。<br>
気持ち全部伝わっちゃうんだよ、あんたにはあたしの汚い部分は伝わってほしくないの。伝えたくないの、嫉妬したり、ねたんだり、そう言う部分は伝わってほしくないの!」<br>
「……、うん」<br>
「だって、だって、あなたはあたしがあたしでいられる人なのよ? その人にまで嫌われたらって思ったら、あたしにはもう逃げるしかないの。<br>
だから、お願い、構わないで……。そっとして、1人にして。これ以上は、構わないで」</p>
<p><br>
191 名前: <font color=
"#009900">◆Qvzaeu.IrQ</font>[]投稿日:2005/11/14(月)23:16:55ID:G2RM4Dlv0<br>
「大丈夫、ツンのこと嫌いになんかなんないよ? 今までだってそうだし、これからもずとずっと」<br>
「それは、そんなあたしを見たことが無いからでしょ! 今までは、思わなかったわよ。あんたがいてあたしがいる、ずーっと続くものだと思っていた。けど、けど……、なんか急に怖くなって」<br>
「それでも嫌いにならない。みても嫌いにならない。嫌いになるようなら、とっくの昔になっているよ。ごめんね、僕も最近1人だったからちょっと寂しかった。ツンはきっと、この何倍も寂しくなったんだよね? でも言えなかったんだよね? ごめんね」<br>
「…………」<br>
暫く、電話の向こうの声が途切れる。<br>
「ありがと……、でも、少しだけ時間を頂戴。あたしに時間を頂戴」<br>
「うん、解った。ずっと待っているから」<br>
「ごめん、今はどの道あんたに顔向けできないから。電話で話すのって久しぶりね」<br>
「うん」<br>
「電話だと、あたしの気持ちは全部届くの?」<br>
「全部じゃないけど、届いた。いつもみたいに、心の声は聞こえないけど、ツンの声は聞こえるよ」<br>
「そっか。電話では、あたしも普通の人だわ」<br>
「うん」<br>
「そっか、それじゃあ、あたしはもう寝るわ。最近沢山のことがありすぎて、疲れちゃったわ」<br>
「はい、おやすみ。いい夢見てね」<br>
「うん」<br>
ツンは静かに電話を切った。</p>
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