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電気ショック療法
最終更新:
mentalhealth777
電気けいれん療法 電気ショック療法(治療法・心理療法)
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電気けいれん療法(電気痙攣療法、でんきけいれんりょうほう)は、頭部(両前頭葉上の皮膚に電極をあてる)に通電することで人為的にけいれん発作を誘発する治療法で、うつ病、躁うつ病、統合失調症などの精神疾患(まれにパーキンソン病などにも)の治療に用いられる。ECT(electroconvulsive therapy)、電撃療法(electroshock theraphy: EST)とも言う。俗に「電気ショック」「電気ショック療法」「電パチ」という呼称で知られている。
主な適応
うつ病:重症で自殺の危険が高く緊急を要する場合や、薬物療法を充分行っても症状が改善しない場合、薬物療法の副作用が強い場合など。 躁うつ病:うつ状態で上記したような問題がある場合や、躁状態で興奮が強く緊急を要する場合など。 統合失調症:難治性の場合や、抑うつを伴い自殺の危険が強い場合、緊張型の昏迷状態など。
改良された修正型電気けいれん療法
電気けいれん療法には大きく分けて、四肢や体幹の筋にけいれんを実際に起こすもの(有けいれんECT)と、筋弛緩剤を用いて筋のけいれんを起こさせないもの(修正型ECT,無けいれんECT)に分類され、用いる電流も「サイン波」型と「パルス波」型に分類できる。
無けいれん電気けいれん療法(修正型電気けいれん療法)
電気けいれん療法は、脳内でてんかん発作の電気活動を起こすことによって効果を得るのが本質である。それに伴って起こる全身の筋のけいれんは、治療のために必要でないばかりか、血圧を上昇させるなどの循環状態への影響、骨折の危険があったりして、有害である。そのため、筋弛緩剤で筋を弛緩させて、麻酔科医が人工呼吸等を含めた呼吸管理、循環動態の観察を行いながら頭部に通電する「無けいれん電気けいれん療法」が開発され、これが日本でも主流になりつつある。 無けいれん電気けいれん療法は、修正型電気けいれん療法、またm-ECT(modified electroconvulsive therapyの略)とも呼ばれる。 ただし、精神科だけの単科の病院では、麻酔科医の確保が不可能に近いので、現在のところ実施が困難である。大学病院など、各診療科医がいてすぐに緊急時の対処が可能な場合、手術に準じて手術室もしくは専用の処置室で行われる事がある。
「サイン波」と「パルス波」電流
以前より、日本においては「サイン波」(送電線を流れている電流を変圧しただけのもの)による通電が行われていたが、これは海外で用いられていた「パルス波」の電流に比べて認知障害などの副作用が大きいことが知られている。そのため、2002年にパルス波型の通電装置「サイマトロン」が日本でも認可された。
なぜ効くのか
動物実験で脳神経細胞の成長を促すBDNFを増加させたという結果が報告されているが、まだよく分かっていない。
副作用
術前の全身状態の評価を適切に行い、無けいれん電気けいれん療法を行った場合、安全で有効な治療法である。薬物療法による副作用での死亡率よりも少ないという報告もある。米国精神医学会タスクフォースレポートによれば、絶対的な医学的禁忌といったものも存在しない。しかし、以下のような副作用が起こることがある。
心血管系の障害:筋はけいれんしなくても、通電直後数秒間に迷走神経を介した副交感神経系の興奮が生じ、徐脈や血圧の低下を生じることがある。また、カテコラミン放出を伴う交感神経系の興奮が惹起され、頻脈や血圧上昇、不整脈などが起こることもある。 一過性の健忘:処置直前・直後の記憶が飛ぶことがあるが、一過性である。但し、その状況を応用して強い自殺企図を緊急回避させ、その後の治療につなげるケースも多い。 認知障害:通電直後に生じ、見当識障害、前向性健忘(以前の記憶はあるが、ECT後の出来事などが覚えられなくなる)や逆行性健忘(新しいことは覚えられるが、以前の記憶、特にECT施行直前の記憶がなくなっている)が見られることがある[2]。老人に頻度が高い。多くは時間とともに回復する。失見当識・前向性健忘は比較的短時間に回復し、逆行性健忘は回復が緩徐である。また、そのまま認知機能の低下が遷延するという例も少数だが報告されている[3]。 躁転:時に多幸的・脱抑制・易刺激性を伴う。双極性障害患者において特に躁転する頻度が高い。 頭痛:45%程度の患者が自覚するとされている。拍動を伴う前頭部痛を示す事が多い。電極配置や刺激強度などとは関連しない。
歴史
1937年、L.メドゥナが薬物を用いて人工的にけいれん発作を作ることで統合失調症患者の治療に成功した。当時、てんかん患者は統合失調症を合併しないと信じられており、これは「てんかん発作には精神病を予防・治療する効果があるのではないか」という着想のもとに行われたという。この結果を受けて1938年、イタリアのU.ツェルレッティとL.ビニは、電気を用いてけいれんを起こすことに成功した。
その後、この療法は世界各地で行われ、1950年代にフェノチアジン(クロルプロマジン)が開発されるまで、精神疾患治療法の花形であった。しかし、その後様々な抗精神病薬や抗うつ薬、気分安定薬などの開発により使用される頻度は減少していくこととなった。また、一部の精神病院では、患者に対して懲罰的に電気けいれん療法を行っていたことが明らかになり、社会問題として大きく取り上げられ、その傾向に拍車をかけることとなった。
しかし、薬物療法に対して電気けいれん療法の利点(比較的即効性であることなど)が徐々に明らかになり、また無けいれん電気けいれん療法の開発、パルス波通電装置の開発などの電気けいれん療法自体の改良が行われたことにより、現在では再び治療において重要な地位を占めるようになっている。
その他
1975年のアメリカ映画「カッコーの巣の上で」には、ジャック・ニコルソン演じる主人公が“病院内の規則に従わないため”に、電気けいれん療法を強制的に行われるシーンがある。しかし、彼のような患者(諸説あるが人格障害であろうか)は、現在では電気けいれん療法の適応にならない。また、革紐で手足を縛って施行しているが、現在はたとえ有けいれん法を行う場合でも手足を縛ることはかえって危険であり行わない。また、同意が得られていない患者に対して電気けいれん療法を行うことは、倫理的に許容されない(もちろん本人に同意能力がない場合もあるが、その場合は保護者の同意が必要である)。「カッコーの巣の上で」の主人公は同意能力を欠いた状態にあるとは明らかに思えず、その意味でも問題である。
この映画はあくまでも「古き悪しき時代」の精神医療を描写した映画なのである。
※「カッコーの巣の上で」の主人公は刑務所行きを避けるため、精神病患者を装っていた。
電気けいれん療法(電気ショック療法)(WIKIPEDIA)より
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