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荻原浩 新潮文庫


mixiミステリ関係コミュのトピック『ドンデン返しモノ、衝撃度でイチオシは?』で話題になっていた作品。
この作者の作品は初めて読んだわけだけれど、文章が非常に読みやすく、飽きさせない展開になっており、久々に新規開拓で"当たり"な気分。

「レインマンっていう女の子の足を切り落としちゃう殺人鬼がいるんだって。でもミリエルっていう香水を着けていれば大丈夫」…ティーンの間で流布している噂。この噂は元々、口コミを狙った広告会社のマーケティングの一環だった。しかし、噂そっくりの事件が発生して…。

この作品はミステリではなく、あくまでもサイコ・サスペンスである。
サスペンスものは大別すると"異常心理モノ"と"社会派モノ"になると思うのだけれど、この作品は多分後者に分類されるんではないと思う。
大半がうらぶれた中年刑事の視点から事件から若者文化を追うという形態になっており、『身近な割りに理解できない、得体が知れない』という非常にもやもやした雰囲気が全体に漂っている。これが上手い。

とにかくポリティカルサスペンスっぽい描写とルビがいい感じ。被害者(ガイシャ)や家宅捜査(ガサイレ)といった代表的な言葉から、敷き鑑捜査(カン)、通り魔的犯行(ナガシ)、遺留品捜査班(ナシワリ)…といったいかにもな用語と、昇進試験や本庁など今風の刑事ドラマを見ているかのようにぐいぐいと読ませてくれる。

「きもさぶ。気持ち悪くて、しかも寒い」
「それも流行の言葉か?」
「ううん、いま考えたんだ。私のオリジナル言葉だよ」

でもって、噂どおりに『最後の一文で愕然とさせられる』作品だった。いやまさかこんな結末が待っているとは。いい意味で作者の悪意が感じた。
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