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『筑後川』冒頭のみなかみでの「いま生まれたばかりの川」というテキストにつけられた旋律。以前も指摘したけど、冒頭での掛け合い無伴奏の合唱、中間部で低声と高声が掛け合うピアノが動かないところ、「みなかみ」の終わりでのピアノパート、そして「河口」冒頭のピアノパートにこの旋律があって、もうひとつ「有明の海へ」と歌ったの直後のピアノパート(「河口」冒頭と1音以外まったく同じ)にある。
冒頭はパートソロで旋律を補強する和音はなく、持続音で少し厚くするだけ。中間部は5度重ね。「みなかみ」の終わりはオクターブ重ね。つまり、総じて和音は厚くない。一方で「河口」冒頭の和音は厚い。「みなかみ」の終わりも「河口」冒頭と同じくGrandioso ffが指定されているが、この和音の厚さの違いで描ける情景が変わる。

この和音、じつは、「みなかみ」オーラスの「未知のくにぐにへの」を無伴奏の合唱がGrandioso fffで歌い上げた和音と最初は一緒。よく見るとこの音がこっちにはあるけどこっちにない、という些細な差はあるのだけど、最初の数音はそれほど差はない和声。音節数が違うように見えるかもしれないけど(「いまうまれたばかりの」は10音節/「みちのくにぐにへの」は9音節)、その後に続く「旅行が」の「りょ」までの10音節で旋律はあっている。違いは「未知のくにぐにへ」の「ぐにへ」の音。ベースの音が、ト長調の移動ド読みでソ、ソ#、ラなのに、このピアノパートは最初から変ホ長調のソ#、ソ#、ラ。同じところでアルトはソ、ファ、ミなのに、その音はない。和音の種類が違う。

「未知の~」はかなり複雑な和音。ここのピアノは素直な厚い和音です。なぜでしょう。どういう効果があるのでしょう。そこまで細かい話だとわかりません。
ですが、ともあれ全体として、上流の勢いを描いたGrandiosoと、下流のたっぷりと水をたたえたGrandiosoとでは意味が違う。その意味の違いが和音の重厚さにある、という程度のところまでは、異論のない話だと思う。

組曲を通すとき、この旋律が、「あっ、あの最初の曲で使ってた旋律」、と想いだしていただけるとベター。一部のお客さんは明確に意識できないかもしれないにせよ、潜在意識でなんか聴いたようなメロディーがだんだん厚くなっているようすを感じてもらえば、だんだん盛り上がるという川を描いた音楽の基本パターンを伝えることはできるはず。