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「私ヲ疑ッタカイ?けんじろー」 「いや、自分の目で確かめたかっただけだ。まさか本当に球団事務所に入れなくなっているなんて…」  市民球場に程近いホテルの喫茶店で、野村謙二郎はマーティー・ブラウンと向かい合っていた。  ブラウンはやはり、彼の“カン”て何か違和感を感じたのだという。 「びでおヲ撮ッタンダヨ」 「ビデオ?」 「選手タチノ“さばいばるげーむ”ニ向ケテめっせーじヲト言ワレタ」 「サバイバルゲーム…」 「初メハ自主とれーにんぐカ何カノ話ダト思ッテGoodLuck!ト言ッタノダガ、ソレガ後ニナッテ気ニナッタ」  ブラウンはその違和感を確かめるために球団事務所に行き、次いで大野練習場を訪れたところで野村に出会ったというわけだ。二人はもう一度市民球場へ向かったが、扉はやはり固く閉ざされていた。中に人がいるのかどうかまではわからない。  一軍・二軍の振り分けやレギュラー獲りの競争をサバイバルと称することは多い。来年の新体制に向けて、オフの間から意識を高めさせるのはいいことだ。  それでも、何か。  今はただ二人、何の根拠もない違和感を抱えている。  糸口はひとつ。  選手の力を見極める競争なら、その場に次期監督であるブラウンがいないのはなぜか? (極秘のサバイバルゲーム。考えろ…あいつらはどこにいる?  その居場所を知っているのは誰だ?どうしてそれが俺に知らされていないんだ?  第一、キャンプにしろ何にしろ、報道がまったくないなんて…)  そこまで考えを巡らせて、野村ははっと息を飲んだ。  そうだ、報道。慌てて、ポケットから携帯電話を取り出した。 「ドウシタ、けんじろー?」 「マスコミだマーティー。いくらオフとはいえ、スポーツ紙や地元紙の番記者は、必ず取材に来ているものなんだ。」 「バンキシャ…」 「だが、大野にも球団事務所にもその姿はなかった。カープ選手の不在が何のニュースにもなっていないとすれば、どこかからカープの取材をするなという圧力がかかった可能性がある。」  日本の野球界には、マスコミに圧倒的な影響力を持つ人間がいる。  そしてその男とカープのオーナー一族との関係は悪くはない。  アドレス帳を開いて、よく知った男の名前を選択する。  3コール、4コール。  カチャ。 『もしもし?野村さん?』 「久しぶりだな!オフの練習は順調か?」 『まあ…なんとか。それにしても珍しいですね。どうしたんですか?』 「ちょっと無理を言ってすまないが、調べて欲しいことがあるんだ……」  ほんとうに細い糸だった。  それでも、繋がるだろうか。 【生存者残り 34名】 ---- prev [[61.「胸騒ぎ」]] next [[]] ---- リレー版 Written by ◆yUPNqG..6A
「私ヲ疑ッタカイ?けんじろー」 「いや、自分の目で確かめたかっただけだ。まさか本当に球団事務所に入れなくなっているなんて…」  市民球場に程近いホテルの喫茶店で、野村謙二郎はマーティー・ブラウンと向かい合っていた。  ブラウンはやはり、彼の“カン”て何か違和感を感じたのだという。 「びでおヲ撮ッタンダヨ」 「ビデオ?」 「選手タチノ“さばいばるげーむ”ニ向ケテめっせーじヲト言ワレタ」 「サバイバルゲーム…」 「初メハ自主とれーにんぐカ何カノ話ダト思ッテGoodLuck!ト言ッタノダガ、ソレガ後ニナッテ気ニナッタ」  ブラウンはその違和感を確かめるために球団事務所に行き、次いで大野練習場を訪れたところで野村に出会ったというわけだ。二人はもう一度市民球場へ向かったが、扉はやはり固く閉ざされていた。中に人がいるのかどうかまではわからない。  一軍・二軍の振り分けやレギュラー獲りの競争をサバイバルと称することは多い。来年の新体制に向けて、オフの間から意識を高めさせるのはいいことだ。  それでも、何か。  今はただ二人、何の根拠もない違和感を抱えている。  糸口はひとつ。  選手の力を見極める競争なら、その場に次期監督であるブラウンがいないのはなぜか? (極秘のサバイバルゲーム。考えろ…あいつらはどこにいる?  その居場所を知っているのは誰だ?どうしてそれが俺に知らされていないんだ?  第一、キャンプにしろ何にしろ、報道がまったくないなんて…)  そこまで考えを巡らせて、野村ははっと息を飲んだ。  そうだ、報道。慌てて、ポケットから携帯電話を取り出した。 「ドウシタ、けんじろー?」 「マスコミだマーティー。いくらオフとはいえ、スポーツ紙や地元紙の番記者は、必ず取材に来ているものなんだ。」 「バンキシャ…」 「だが、大野にも球団事務所にもその姿はなかった。カープ選手の不在が何のニュースにもなっていないとすれば、どこかからカープの取材をするなという圧力がかかった可能性がある。」  日本の野球界には、マスコミに圧倒的な影響力を持つ人間がいる。  そしてその男とカープのオーナー一族との関係は悪くはない。  アドレス帳を開いて、よく知った男の名前を選択する。  3コール、4コール。  カチャ。 『もしもし?野村さん?』 「久しぶりだな!オフの練習は順調か?」 『まあ…なんとか。それにしても珍しいですね。どうしたんですか?』 「ちょっと無理を言ってすまないが、調べて欲しいことがあるんだ……」  ほんとうに細い糸だった。  それでも、繋がるだろうか。 【生存者残り 34名】 ---- prev [[61.「胸騒ぎ」]] next [[63.「アウトロー」]] ---- リレー版 Written by ◆yUPNqG..6A

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