62.「違和感の二人」

    

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「私ヲ疑ッタカイ?けんじろー」
「いや、自分の目で確かめたかっただけだ。まさか本当に球団事務所に入れなくなっているなんて…」
 市民球場に程近いホテルの喫茶店で、野村謙二郎はマーティー・ブラウンと向かい合っていた。

 ブラウンはやはり、彼の“カン”て何か違和感を感じたのだという。
「びでおヲ撮ッタンダヨ」
「ビデオ?」
「選手タチノ“さばいばるげーむ”ニ向ケテめっせーじヲト言ワレタ」
「サバイバルゲーム…」
「初メハ自主とれーにんぐカ何カノ話ダト思ッテGoodLuck!ト言ッタノダガ、ソレガ後ニナッテ気ニナッタ」
 ブラウンはその違和感を確かめるために球団事務所に行き、次いで大野練習場を訪れたところで野村に出会ったというわけだ。二人はもう一度市民球場へ向かったが、扉はやはり固く閉ざされていた。中に人がいるのかどうかまではわからない。

 一軍・二軍の振り分けやレギュラー獲りの競争をサバイバルと称することは多い。来年の新体制に向けて、オフの間から意識を高めさせるのはいいことだ。
 それでも、何か。

 今はただ二人、何の根拠もない違和感を抱えている。

 糸口はひとつ。
 選手の力を見極める競争なら、その場に次期監督であるブラウンがいないのはなぜか?
(極秘のサバイバルゲーム。考えろ…あいつらはどこにいる?
 その居場所を知っているのは誰だ?どうしてそれが俺に知らされていないんだ?
 第一、キャンプにしろ何にしろ、報道がまったくないなんて…)
 そこまで考えを巡らせて、野村ははっと息を飲んだ。

 そうだ、報道。慌てて、ポケットから携帯電話を取り出した。
「ドウシタ、けんじろー?」
「マスコミだマーティー。いくらオフとはいえ、スポーツ紙や地元紙の番記者は、必ず取材に来ているものなんだ。」
「バンキシャ…」
「だが、大野にも球団事務所にもその姿はなかった。カープ選手の不在が何のニュースにもなっていないとすれば、どこかからカープの取材をするなという圧力がかかった可能性がある。」
 日本の野球界には、マスコミに圧倒的な影響力を持つ人間がいる。
 そしてその男とカープのオーナー一族との関係は悪くはない。
 アドレス帳を開いて、よく知った男の名前を選択する。
 3コール、4コール。

 カチャ。

『もしもし?野村さん?』
「久しぶりだな!オフの練習は順調か?」
『まあ…なんとか。それにしても珍しいですね。どうしたんですか?』
「ちょっと無理を言ってすまないが、調べて欲しいことがあるんだ……」

 ほんとうに細い糸だった。
 それでも、繋がるだろうか。

【生存者残り 34名】



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