番外.裏切り者の見る風景1

    

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誰かやる気になった奴が待ち伏せしてるんじゃないかと
終始身構えながら校舎を出たものの、誰も待ち伏せなんてしていなかった。
―――――とはいっても自分の出発はかなり早かったから、後の奴等はどうなのか
そこは自分の知った所ではないが。

男は草の生い茂った獣道を一歩一歩踏みしめながら歩いていた。
10月半ばにしては少々肌寒い時分、風が足元を吹きぬけた。

やはり甘すぎると思う、まあ松田元もそんなことだろうと考えて
自分や後2人の人間を用意したんだろうが。
それにしても甘すぎる、未だ銃声の1つも聞こえてきやしない。

『甘いんだよ君達は、野球は一種の勝負だ、決して甘ちゃん同士の友情ごっこじゃない』

男は星の瞬いている夜空を見上げた、月と星の瞬きだけがこの場を照らす明かりだった。
開始の放送が流れてから数十分がたったが、そろそろだろうか。

草むらの中にどっかりと座り込み、男はザックの中の物をあらため始めた。
ペットボトル3本と缶詰が3つ、地図にコンパス、ランダムの武器それと――――――
手の平に納まるくらいの大きさの機械。
その液晶画面上ではたくさんの光の点滅が移動を繰り返していた。
レーダー、これを使えば行動を優位に進めることが出来るのは請け合いだ。
「………………」
そして自分は出来るだけ点滅の多い方向へと進んできた。
人と出くわすか出くわさないかのギリギリのライン。
これを持っていて尚、自分がこの点滅の中心に陣取ったのには理由がある。

男は今出したものを全てまたザックの中へと戻すと
ユニフォームのポケットからあるものを取り出した。
携帯電話、持ってきていた奴は他にもいると思うが
この島で電話を使うと電波の関係から全てB-9……あの校舎内にしかつながらない。
だが逆にそれを利用すれば誰にも疑われずに松田元と連絡が可能だ。
元々は参加者が勝手に他所と連絡をとらないようにと
用意された妨害電波らしいが、その点では便利だ。
もっとも普通に電話が使えたところでこの島内ではせいぜい圏外表示が関の山だろうが。

男はそれもザックの中へとしまうと、
右腕につけられた何の変哲もない時計を見た。
全員に支給されたデジタル時計、それは丁度PM:6:30を示していた。

『1日目 PM:6:00 バトルロワイアル開始』

疑心暗鬼にさせたはいいがそれで全員が島のどこかに隠れました
3日間誰一人死ぬこともなく過ぎ、全員の首輪が爆発、バトルロワイアル終了、勝者0。
自分も死亡、それじゃ洒落にもならない。

男はまたザックを開けると中から新たにもう一つの『物』を取り出した。

最初から彼のザックには、ランダム武器とは別にもう一つの物が入っていた。
今彼の手の中で月の光を反射して黒光りしているそれは名前をKimberCustomⅡといった。
これには弾が一発しか込められていない、それはこれを使うのが一回きりだから。
銃なんて使った事はなかったが最初から込められた弾を撃つだけなら誰にだって出来る。

『きっかけが必要なんだ、それは何でもいい、ほんの些細なことでも』
「必要なのはきっかけ、か」

そう、きっかけ、疑心暗鬼。
一度でも疑ってしまったらその瞬間にすべてのものが敵となる。
でもそれはまだ完全じゃない。
松田元、オーナー、向こう側の人間の言葉だけじゃ駄目なんだ。
あくまで仲間『選手達』の中に修羅の幻を見せない事には完全じゃない。

まず自分がやるべきこと、それはきっかけ作り。

男は空に銃口を向けると、その引き金を引いた。
きっかけ作りの為だけに用意された拡声器付の銃は空気を切り裂くような音を空に木霊させた。
余韻の残る静寂は、男にとって心地よいものだった。

「………もうこれは必要ない」
男は銃を木々の茂みに放り投げると、その場を足早に立ち去った。

明確な理由付けなんて必要ない。
後の2人が誰かわかった所で協力はしない、自分とは関係無い。
今回の話は断ろうと思えば断れた、それでも自分が断らなかったのは
もしもこの試合に自分が勝てたら本当の自分になれる気がしたからだ。
だから話にのった、後悔はしてない、自分の為に自分は動く。
その為に何を犠牲にしても――――――――――――――――

男の鳴らした一発の銃声が、幾多の人間の運命を狂わせていく。


Written by 301 ◆CChv1OaOeU
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