52.記録より記憶

    

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「なんでこんなことに…」
福井敬治(38)は一人で考え込んでいた。

巨人から戦力外通告を受け、この広島のテストに通り入団。
そんな境遇ながらも持ち前の明るさを武器に周りと馴染み、
ベンチでは誰よりも声をあげてチームを盛り上げた。
その雰囲気はまるで生え抜きの選手のようだった。
「今年は大変だったけど楽しかったなあ」
実際に巨人での最後の年の一軍の出場試合数はたったの13。
それが今年は出場試合数だけでも73になった。
野球を続けられるだけでも嬉しかったのに。
さらには交流戦でのホークス戦でスタメン出場。
あの杉内からホームランを打った。
「活躍したのはあの日だけかな?」
それでも広島が拾ってくれなければあの喜びは味わえなかった。
本当に自分を支えてくれた人たちに感謝した一年だった。
それがまさかこんなことになるなんて…
なんどもなんども考えても結局今のことを考えてしまい
気持ちが落ち込んでくる。

みんなは無事だろうか。
既に死んでいる仲間がいることはわかっていても願わずにはいられなかった。
出発地点を出て行くときにあんなことを言っていた新井や横山は大丈夫だろうか。
新井、横山、嶋、小山田、森笠は全員同級生ということもあり、
新しく入ってきた自分をよくしてくれた。
あいつらなら絶対にこんな下らないゲームには参加していないはずだ。
なんの根拠もないことだったが福井はそう信じていた。
「あいつらに会いたい。でも…」
動くことが怖かった。
何度も聞こえる銃声が気持ちを萎えさせる。
「新井なら気持ちを強く持てって言われそうだな」
思い出して思わず笑いそうになる。
「会いたいなあ」

自分の鞄から水を取り出して一口飲む。自分の気持ちを奮い立たせるために。
彼らと会ってこのゲームをぶっ壊すために。
自分が何の役に立てるかはわからない
でもみんなを盛り上げることくらいならきっと出来る。
暗くなった奴を励ますくらいなら出来る。

そして自分の“武器”を確認する。
「でもこれって絶対武器じゃねぇよな」
入っているのは竹笊(ざる)、竹魚篭(びく)、てぬぐい。
そしてひょっとこのお面というどじょうすくいセットだった。

【生存者 残り34名】



リレー版 Written by ◆AoT8KYCnWo
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