3.自己矛盾

    
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松田元は静かになった選手たちの顔を見渡し、満足そうに言った。
「今から君たちには殺し合いをしてもらいます」
松田元がその言葉を発すると同時にスクリーンに映ったものは消え、
ただ白を湛えるだけとなった。

(イマカラキミタチニコロシアイヲシテモライマス)

膝の上に重ねた手を、がたがたと震わせながら
木村拓也(背番号0)はごくりと喉を鳴らした。
自分の理解の範疇をこえた突然の事態に、木村の頭の中はかつてないほどに混乱をきわめていた。
(ああ)
頭が本当にどうにかなってしまいそうだ。

「君たちの命をかけてのバトルロワイアル、とでも言ったほうが理解しやすいかな」

しんと静まり返った教室の中に松田元の声はよく響いた。

「野村君にはこちら側についてもらって
 このゲームを円滑に進める手伝いをしてもらおうと思ったんだが
その為に彼だけ別室に運んで話をしたんだが…思いのほか強情でね、
そんな事は御免だと突っぱねられてしまったよ、だから殺した、僕としても残念だったがね
それじゃ…今から詳しい説明を……」

矢継ぎ早に話を進めていく松田元の声を遮ったのは
福井敬治(背番号38)のあっけらかんとした語調による言葉だった。

「あの、オーナー、これって何かの冗談ですよね」
野村さんの、野村さんの事も全部全部、どっきりか何かですか?」

声のした方向に顔を向けると、福井が青ざめた顔をしてそこに座っていた。

(お前、顔青いぞ…体だって震えてるじゃないか)

その言葉を発した福井自身、その言葉を信じていない様に見えた。
それに、笑顔を顔に浮かべてはいるものの、松田元の眼も言葉も真剣そのものだった。
(でも、野村さんの事は…あくまで『映像』の中の事だし…もしかしたら…)
福井の言ったその僅かな可能性を木村が信じたかったのも事実だが。

肯定も否定もせずに
松田元はそれも想定内だと言わんばかりに福井を無視して
唐突にうちの前監督、山本浩二の現役時代の美談を話し出した。

「うちの前監督の現役時代の事を君たちは知ってるかな?」

「山本さんはとても素晴らしいプレーヤーだった
 野球を勝負と割り切ったその思い切りに溢れるプレーは見るものを皆魅了していた。
 何より彼はチームプレー、クレバーなプレーというものを知っていた。
 勝利の為ならバントだってなんだって、立派にやってのけた。」

遠くを見るように目を細めて、夢見るように松田元は言葉を紡いだ。

「監督としては能力不足だったようだが、そう、彼はプレーヤーとしてなら最高の人物だったよ」
それだけに残念だったなぁ、彼も先程見せた野村君同様バトルロワイアルに最後まで反対していてね」
現役時代同様クレバーな判断を期待したんだが…
彼のお陰で少々厄介な事になった、ゆえに

そこでいったん言葉を止めて、今までの夢見るような顔つきから
何を考えているのかわからない薄ら寒い笑顔を浮かべた表情に戻ると。

「このゲーム遂行にあたって邪魔な存在、と僕は判断したんだ」

松田元が手を一回叩くと、教室の扉からは、松田元同様黒スーツに身を包んだ
プロ野球選手の自分から見ても体つきのいいと思える見知らぬ男たちが
何かを乗せた担架を運んできた

こいつらは誰だ?そう思うまもなく
目の前に広がった惨状に今度こそ木村は両手で目を覆う事となった。

(全部これはすべて現実なんだ、これから先に起こるだろうことも全部全部)

暗にそう言われた気がした、打ちのめされた様な気がした
野村の場合とは違い今度こそ等身大の現実。
その担架の上には、話の渦中の人物が変わり果てた姿でそこにその存在を主張していた。


Written by 301 ◆CChv1OaOeU
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