もしも3馬鹿常夏トリオが種死に出てたら 格納庫

友情1

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匿名ユーザー

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あの時の記憶…。『黒海攻防戦』の戦闘が、今もまだ鮮明に頭を過ぎる。
自分達の不注意のせいでなってしまった事態に、琥珀、夕焼、葡萄の色をした髪の三人組は誰が言うでもなく待機室に集まっていた。
それぞれ自分達の好きな物、小説とゲーム機、音楽プレイヤーを持って。
しかし普段からお世辞でも仲が良い、とは言えない三人が集まっているせいか、無言が続いてしまっている。
重苦しい雰囲気の中、壁から離れてガラン…と音を立て琥珀の青年は自販機で缶コーヒーを買い、再び壁にもたれ掛かり、
どう話を切り出せば分からないのか、長椅子に寝転がり目を隠して音楽を聴いている葡萄と、
椅子に行儀悪く座って大きな音でゲームをしている夕焼を交互に見つめた。
 そんな時、葡萄色の髪をした少し大人びている青年、シャニ・アンドラスはまるで独り言のようにこう言った。

「…でも、このままじゃダメなんじゃない?」

その台詞に余計に辺りはシン…と静まりかえる。
琥珀の青年は眉を潜ませて缶を待つ手に力を込め、夕焼の少年はギリっと力強く唇を噛みしめ腕に爪を立てて、二人とも俯いてしまう。
珍しくシャニまでもが苛付いているのか、音楽プレイヤーのリモコンで音量を最大にしてしまった。
まるで三人とも、それを思い出したくないというように。
しかし、彼らは無意識にも自分達が『オッサン』と呼んでいる人物から先程放たれた言葉を思い出していた。


『貴方達が行っても無駄です。ロアノーク大佐の体調が回復すれば、あの方が行ってくれるでしょう』


彼は自分達の、寧ろ自分の力の無さに腹が立ってしまった。
琥珀色の髪の冷静さが窺える顔立ちの青年、オルガ・サブナックは思わず右手に持っていた缶コーヒーを力強く握り潰してしまったのだ。
一口も満足に飲んでいないせいか、コーヒーが飲み口から溢れ出、 手に付いてはポタポタと床に滴り落ちる。
オルガはコーヒーが付いた手を無意識の内に、まるで血を舐めるような眼付きで舌を滑らせて沈黙を守る。
そんな二人の様子を、夕焼色の髪のまだ子供さが見える少年、クロト・ブエルは目を細めて酷く楽しそうに薄く笑みを浮かべてみせた。
そして、ワザと抑揚の無い声色で呟く。

「…捕虜になった三人が悪いんだよ。僕らは関係ない」
「…ンだと?良くそんな事が言えるな、餓鬼」
「何怒ってるんですかぁ?オルガ君?」

オルガはクロトの言葉に怒りを露わにしてしまった。
自分の出来の悪さ、それをあの男だけではなく、同僚のクロトにまでも見透かされているような気がし、
自分の言葉にクスクスと可笑しそうに笑みを零すクロトをオルガはキッと鋭く睨み付ける。
一触即発。どちらからともなく腰に掛けられた拳銃に指を掛ける二人によって、今にも戦闘が起こりそうな雰囲気になってしまう。
それを上手く壊したのは、初めに口を開いたシャニだった。

「…冷静になりなよ、二人とも。クロト、お前はからかいすぎ。オルガは心配しすぎ」

シャニが発したことは図星であり、オルガもクロトも言葉に詰まり仕方なく拳銃から指を外し、
それぞれの趣味の物をポケットに直すとシャニを見つめた。
何事にも無関心なシャニとは違い、いつも何かと喧嘩するのは妙に正義感があるオルガと神経質で変に我が儘なクロトであり、
戦闘外であれば一番冷静かつ鋭く正しいことを言うシャニに意見を聞こうと二人は思ったのであろう。
そんな二人の視線に呆れたように息を吐き、まずは目の自由を奪っているアイマスクを外す。
そして煩く音漏れをしている音楽プレイヤーを止めてイヤホンを耳から外し、首に掛ける。
その一連の動作は、彼が喋ろうとする合図だった。

「…整理すると、現在、スティング・アウル・ステラの三人はザフトのミネルバの捕虜……」
「カオスとアビスとガイア、三つの機体もだよね。盗っちゃったヤツだからヤバイなぁ…」
「…そ。でも、ミネルバにはステラを助けた…シン・アスカがいる……」

記憶力は良い方ではないのか、一つ一つの単語を思い出しいつものようにクロトに助けてもらいながら声に出してそこまで言うと、
やっとシャニは起き上がって首を回す。
そして表情の変化が少ないシャニが珍しく、笑みを顔に張り付けた。

「…シンのおかげでアイツらはまだ死なない。…と思いたいけど、ミネルバには赤いのがいるからね~……」

シャニが言った『赤いの』を思い出していた二人は軽く伸びをして立ち上がり、軍服を脱ぎ始めたシャニのすることが分かったのか、
オルガは内線に電話をし、クロトは軍服のチャックを降ろしながら二人を置いてさっさと歩き出す。

「…善は急げってね」
「ですね」
「お前ら。オッサン達からの許可が下りた。…行くぜ?」

正義のヒーローだなんて柄じゃないけど、と含み笑いを見せてクロトは後から付いてくる二人を振り返って見つめた。
すると何があったのか、珍しくシャニとオルガが喧嘩しており、思わずキョトンと首を傾げるも直ぐに楽しそうに笑った。

「シャニがオルガに反論するなんて珍しいよねー。あんなにシャニが長く喋ったのも珍しいし、何か起きるんじゃない?」

クロトがそう言った瞬間、二人は分かっていたのか次はクロトに悪態を吐いて、クロトまでも巻き込んで口喧嘩を再開させた。
言葉はいつも通りだが、表情は珍しく三人とも同じで。

「スティングもアウルもステラも、いつもは喧嘩ばかりしているあの子達に、これほどに愛されてるとは知らないんでしょうねぇ…」

『オッサン』と呼ばれているブルーコスモスの理事である、ムルタ・アズラエルは、
オルガ達の滅多に見せない楽しそうな表情がスティング達によって出されていることに、口元を手で隠して小さく呟く。


頑張ってください、という言葉とは裏腹に、掌で隠された唇は何かを企んでいるかのように微かに釣り上がっていた―――。

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